日本IBMは5月7日、米国において同5日〜6日にかけて開催されたバーチャルイベント「Think Digital Event Experience」に関して、プレス向けにフォローアップの会見を開いた。当初は米国サンフランシスコで同4日〜7日の期間に予定していた年次イベント「IBM Think 2020」だが、新型コロナウイルスに伴いバーチャルに切り替えて実施された。

今回、日本における会見で日本IBM 常務執行役員 クラウド&コグニティブ・ソフトウェア事業本部長の伊藤昇氏が、4月にCEOに就任したばかりの米IBMのアービンド・クリシュナ氏などによる基調講演で話された内容を具体的に説明した。

クリシュナ氏は「新しい時代のビジネスに求められるテクノロジー」をテーマに講演。新型コロナウイルスによる危機はビジネスにとっては重要な転換点であると指摘し、これは新しいソリューション、新しい働き方、新しいパートナーシップを創出する機会だという。

同社はハイブリックラウド、AI、5Gが企業のデジタル変革をけん引し、今後は適応スピードがさらに加速するとの認識を示している。クリシュナ氏によると、AIは企業にとって必須であり、すべての企業はAIカンパニーとなるほか、ハイブリッドクラウドが必要な理由としては既存資産の活用(History)、選択肢の提供(Choice)、物理的距離の確保(Physics)、法規制対応(Law)の4点を挙げている。

続いて、伊藤氏は米IBM 社長のジム・ホワイトハースト氏の講演について説明。ホワイトハースト氏は「ハイブリッドクラウドとAIによるスピーディなイノベーションの拡大」と題し、成功している企業はデータを資源にクラウド上でワークロードにAIを組み込み、ビジネスに必要な洞察を得ていると述べている。また、ハイブリッドクラウド環境で求められるものとして、俊敏性、回復力、柔軟性を備えるためにデータセンターからエッジまで一貫したオープンITアーキテクチャが必要だという。

さらに、伊藤氏はIBM Cloud and Data Platform シニア・バイスプレジデントのロブ・トーマス氏のセッションについても説明した。トーマス氏は「AIと自動化は働き方をどのように変えるのか」をテーマとし、今後AIに投資しない企業は競争優位を失うと指摘。企業は業務プロセス全体にAIによる予測・最適化・自動化を組み込むことで価値の創出が短期で可能なことに加え、言語と信頼も重要な要素になるとしている。

このように、クリシュナ氏、ホワイトハースト氏、トーマス氏の講演を踏まえ、発表された新サービス・製品群として、AI関連は「IBM Watson AIOps」「IBM Cloud Pak for Data V3.0」「IBM Cloud Pak for Automation V20.0.2」「IBM Watson Assistant(提供開始済み)」、クラウド/エッジ関連では「Red Hat OpenShift 4.3 on IBM Cloud(提供開始済み)」「IBM Edge Application Manager」「IBM Telco Network Cloud Manager V1.1(提供開始済み)」「IBM Cloud Satellite」などだ。また、量子コンピュータ関連ではIBMの量子コンピュータを用いたハッカソンとして「IBM Quantum Challenge」を開催。

Watson AIOpsは、企業がITの異常に対する自己検知・診断・対応を行う過程をAIを使用して自動化。Red Hat OpenShift上で構築されており、ハイブリッド・クラウド環境全体で動作し、SlackやBoxといった現在の分散作業環境の中心を占めるテクノロジーと連動するほか、MattermostやServiceNowのような従来型のIT監視ソリューションのプロバイダーとも連携している。

さらに、CIOが将来の結果を適切に予測・形成することに加え、価値の高い仕事にリソースを集中させるなど応答性とインテリジェンスを可能とするとともに、長時間の稼働が可能なネットワークの構築準備を整える上でも役立つように設計されており、2020年中の提供開始を予定している。

Cloud Pakでは、すでに提供済みの企業・組織がデータから得た洞察を簡素化・自動化し、オープンで拡張可能なアーキテクチャを提供するCloud Pak for Dataと、自動化アプリを設計・構築・実行するためのソフトウェアであるCloud Pak for Automationのほか、AIベースの対話プラットフォームのWatson Assistantをそれぞれアップデート。

Cloud Pak for Data V3.0は、事業の企画立案・予算策定・予測を自動化できる「IBM Planning Analytics」や、オンプレミス環境でMDM実装にアクセスできる「IBM InfoSphere Master Data Connect」などのDataOps機能が拡張機能としてプラットフォームに追加され、6月19日に提供を開始する。また、Cloud Pak for Automation V20.0.2は、RPA(Robotic Process Automation)の構築を容易にできるとしており、定型業務を自動化することで人間と協業しつつ業務の遂行を可能とし、6月26日に提供開始を予定している。

Watson Assistantは顧客体験に基づき設計されたUIに加え、主要なカスタマーサービスプラットフォームと統合されている。現在は、自動学習機能を開発しており、今夏に組み込む予定とし、過去の顧客行動から学習することで、同じトピックについての新しい質問に対して最も関連性が高く最適な回答を提供するという。事例としては、新型コロナウイルス発生後にアメリカ疾病予防管理センター(CDC)のデータを学習したチャットボットなどを提供する「IBM Watson Assistant for Citizens」が世界で25を超える自治体・組織に導入されている。

4月末に提供を開始しているRed Hat OpenShift 4.3 on IBM Cloudは、更新やスケーリング、セキュリティの確保、プロビジョニングなど、現行のメンテナンス作業に費やされた時間を最小限に抑えるために設計されたセキュリティ機能や生産性機能を追加。予期しない利用の急増に対処する上で必要な回復力のほか、侵害や停止につながる攻撃に対する保護を提供するために開発した。

これにより、重要な作業に集中できるようになった開発チームがクラウドネイティブアプリケーションの開発を加速させ、競争力の高い新機能を生み出すことが可能になるという。そのほか、Red Hat関連の発表として「Red Hat Marketplace」はOpenShift上で認定ソフトウェアの購入・導入・管理を可能としている。

Edge Application Managerは、AI、アナリティクス、IoTなどのエンタープライズのワークロードを展開し、リモートで管理するための自律型管理ソリューションだ。1万台超のエッジデバイスを単一の管理者が管理できるようになり、IBMエンジニアが開発したオープンソースプロジェクトのOpen Horizonを搭載する初のソリューションで、最新版のV4.2は6月12日に提供開始を予定。

Telco Network Cloud Manager V1.1は、Red Hat OpenShift上で稼働する新たなソリューションとなり、仮想化とコンテナ化されたネットワーク機能を数分で編成し、インテリジェントなオートメーション機能を提供することで、サービス提供事業者はOpenShiftとRed Hat OpenStack Platformの両方でワークロードを管理できるようになるという。

Cloud Satelliteは、オンプレミスまたはエッジで含めて稼働するOpenShiftの一元管理が可能。IBM Cloud上のサービスとなり、2020年第3四半期中の提供開始を予定している。IBM Quantum Challengeは現地時間(米国東部)5月4日午前9時に開始、同8日の午前8時59分59秒に終了し、誰でも参加が可能だ。参加者には同社からデジタルバッジの授与とPython Software Foundationへの追加スポンサーシップの提供を予定している。