PFUは6月25日から「PFU Digital Fair 2020」と題して、同社初というオンラインイベントを開催している。ここでは各種ソリューションや製品の紹介に加えて、オンラインセミナーを4種類公開した。本記事ではそのうち、「ハンコ? 実は必要ありません 〜紙とハンコ から 電子取引へ〜」と題する、テレワーク(在宅勤務)にも対応する電子取引の在り方を解説したセミナーを紹介する。

同セミナーでは、牧野総合法律事務所弁護士法人 代表弁護士の牧野二郎氏が講師を務め、図解を交えながら解説した。

牧野氏はまず、「紙とハンコから電子取引へどう移行していくか、テレワークが進められているこの状況をどう乗り越えていくのか、あるいは先進的に捉えていくのかというところをお話したいと思います」と切り出した。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の広がりのため、テレワークを余儀なくされた人は多い。一方、「書類を扱わなければならないから」「ハンコを押す必要があるから」といった理由で、感染の不安を感じながらも出社せざるを得なかった人も少なくない。感染症の広がり以前から電子取引の導入は進んでいて、ハンコを使わない電子印鑑サービスなどの利用も増えている。しかし、紙やハンコから電子取引への移行は、自社でも解決可能だと牧野氏は語る。

契約書や注文書、請求書などの書類にはハンコを押すものだと、当たり前のように考えがちだ。だが牧野氏は、「法律あるいは法令の中でハンコが絶対に必要ということは、必ずしもないのです」という意外な事実を明かす。ハンコの使用は、あくまでも自社内あるいは取引先との関係によるということだ。

牧野氏は、「もう少しきちんと現実を見た上で取引の形を考えていく、ということも必要になります」と指摘する。そのための要点は、「取引のエビデンスはどうあるべきなのか。どういう証拠や書類をどのように作って保管しておくか」とのことだ。

電子取引における契約について解説する前に、牧野氏は、契約は取引の中のごく一部であり、また契約手段は電子以外にも口頭や電話、書面など多岐にわたると指摘した上で、「契約の概念というのはたいへん広いというところを、頭の中に入れておいていただきたい」と喚起する。

また、契約に関しては、口頭や書面、電子といった形態にかかわらず、「相手方との合意に基づいて進めているものについては、全て法は認めている」(牧野氏)という。

しかし、どういう方法を採るかを、約款や基本契約書、事前合意書などを取り交わして合意しておくとよりよいとのことだ。

電子取引における契約手段としては、電子メールの文面、電子メールへのPDF文書の添付、Webページにおける合意、電子入札での合意など、多様な形態があると牧野氏は列挙する。

そのうち、電子メールは大変有用だという。

20年以上にわたり電子メールを証拠として利用してきたという牧野氏は、「一度として証拠を認められなかったことはありません。すべて証拠能力があるんです」と語る。

電子メールではとりわけ、自己否認やなりすましなどの脆弱性が懸念されるが、証拠能力をさらに高めるには、CC:やBCC:を適切に使い、必要に応じて電子署名などの利用が有効とのことだ。

電子取引においては、エビデンス(証拠)の授受や管理が重要であり、「会社の中で自分たちのルールを、きちんと作っていかないといけない」と牧野氏は指摘する。

民法上は、双方の合意があれば契約の形態は自由であり、方式やエビデンスの有無は法的には影響しない。だが、税法や会社法には帳簿書類等の保存規程があるため、正しく管理することが望ましい。

社内統制ルールに基づいてエビデンス授受と方式を定めて管理することは、取引関係にとどまらず、税務調査など国税当局との関係上でも有益という。

牧野氏は電子取引導入のポイントとして、1)税法・電子帳簿保存法(電帳法)要件(義務)、2)なりすまし・否認の防止(信頼性の担保)、3)紙証憑の電子化の3点を挙げる。

1番目の税法・電帳法対策について、例えば契約書など社外とのやり取りがあるものについては、電子メールでCC:やBCC:を使用して、関係者に広く共有させて安全にする方法があると牧野氏は語る。また、社内的な決裁や稟議などでは、タイムスタンプの使用を推奨している。

相手先との関係上、郵便やFAXなど紙の書類を使わざるを得ない場合は、スキャナによりデータ化して保存する方法があるとしている。

2番目のなりすましや否認の防止は、電子取引では常に課題となる問題だが、牧野氏は「事前のルールを明確にしておく、ということしかできないわけです」と説く。

具体的には、事前に与信管理する、メールを使う場合には本人確認を事前に行う、取引実績を残しておく、場合によっては事前登録をするといった手法だ。そしてさらに、何か月か後に精査すると、なりすましなどを防げるという。

3番目の紙証憑の電子化に関して、牧野氏は、特に請求書では紙の場合が多く、「紙にはある種の強制力、威力がある」と語る。電子化した請求書には、将来的にはわからないが、残念ながら現時点ではまだそういった力は無い。まだ当面は紙ベースの請求書など証憑を扱わなければならないのだ。

こうした紙の証憑についても、牧野氏は「スキャナでスキャンして、デジタルデータにして、他のデータと一貫で、同じ通し番号、取引番号で整理をしておくことが必要になってきます」と説き、「一元管理ができているかどうかということが、非常に重要な問題になります」と指摘する。

最後に、取引エビデンスの管理について、牧野氏は「これが今回、私としてもいちばん申し上げたいところです」と強調する。

取引には、電子、紙、電話、PDF形式、FAXなど、さまざまな形態があると指摘した上で、「これをすべて一元管理しない限りは、きちんとした形で、ハンコはいらない、合理的なビジネスとはならないのです」(牧野氏)という。

牧野氏はエビデンスの管理に関して、取引形態を全て電子の場合(図中の取引先A)、メールによる場合(同・取引先B)、書面による場合(同・取引先C)の3パターンに分けて解説する。

電子取引において電子契約プロバイダが介在する場合は、最も確実に思えるが、そのプロバイダが取引先と契約していない場合もありうると、牧野氏は指摘する。その上で、取引に関連する文書をどう管理するか、どういった場合にどのように対処するか、どのような場合には何を要求するかといったルールを、明確にしておかなければいけないという。

メールを使用する取引は、例えばメールで申し込みをしたり見積書をExcelやPDF形式のファイルでメールへの添付で送ったりなど、広く使われているのではないだろうか。この場合は、CC:やBCC:で複数の相手に送ったりタイムスタンプを付与したり、あるいは電子署名を利用したりといった方法で、信頼性を高められると牧野氏は提言する。

さらに、そのメールの信用性を担保するルールを社内で定めておき、管理体制の中に組み込むことが必要だと語る。

紙でのやり取りがある場合は、スキャナで読み取り自動的にタイムスタンプを付与する手法を牧野氏は推奨する。それにより、信頼性が高まり偽造が困難となり、安全性が高まるという。

スキャンデータを含む取引関連書類にタイムスタンプを付与して完全性を確保した上で、保存・検証・訂正削除に関する社内規程を定めておくことが肝要とのことだ。

さらに、検索機能も電子帳簿保存法との兼ね合いから重要であり、これにより帳簿の関連性も確認できると牧野氏は語る。

また、「税務当局も、タイムスタンプがきちんと付いていれば、信用してくれます」(牧野氏)という。

セミナーのまとめとして牧野氏は、ハンコが無くても全ての取引ができるが、デジタルデータを使う場合には、その弱点を克服しながら使わなければならないと指摘した上で、「克服するのは、自分たちの努力でできるんです」と語る。

「自分たちがルールを作って、そのルールに基づいて1つずつきちんと確認した上で、きちんと統合しておく。そうすると、国税もそれを信頼してくれる。こういうような形になるわけです」(牧野氏)。

これらの実現により、テレワーク環境におけるスマートな業務が確立でき、自社の競争力も大きくなっていくだろうと牧野氏は推測する。

最後に牧野氏は、「デジタルデータを適切にコントロールして、いい社会、いい会社といったものを作り上げていただきたい、と思います」と結んだ。