NTT東日本は6月29日、畜産・酪農分野における新会社「ビオストック」設立について、オンラインによる記者会見を開催した。ビオストックの資本金は1億円で、NTT東日本とバイオガスプラント事業を展開するバイオマスリサーチが共同出資(過半がNTT東日本)を行い2020年7月1日に設立する。本社所在地は北海道帯広市で従業員数は10名程度とのこと。

国内の畜産・酪農業に携わる農家数は直近30年で1/3に減少する一方で、1農家あたりの飼育頭数は約3倍に拡大しており、平均休日は1.2回/月、平均労働時間は280時間/月(全農業平均の約2倍)と労働環境が過酷化している(※1)。

そのため、「収入拡大のために飼育頭数を更に増やしたいが、人手は増えないので、飼養管理以外の仕事は省力化したい」「近隣住民から悪臭に関する苦情があるため対策したい」「バイオガスプラントを導入すると糞尿処理の稼働や悪臭がなくなると聞いているが、導入コストが高く、自己資金・借入では対応が難しい」といった畜産・酪農家の声が多く上がっているという。

このような背景を踏まえ、NTT東日本とバイオマスリサーチは、畜産・酪農業のこれらの課題を解決するため、昨年12月から実施している業務提携を深化させ、合弁により新会社を設立したとのこと。

(※1)中央酪農会議「平成29年度酪農全国基礎調査(北海道エリア)」

バイオマスリサーチ 代表取締役社長 菊池貞雄氏は「バイオガスプラントは、家畜の糞尿処理、エネルギー生成、有機肥料の生産、農家のコスト削減、地域産業の創出などといった一石五鳥の取り組みだと考える。この技術とNTT東日本のICT技術をかけ合わせて何ができるのかを昨年の12月から考えてきた。原子力発電が原発といわれるように、糞から生成する糞発(ふんぱつ)として全国にサービス展開していきたい」と述べた。

新会社ビオストックの主に2つ事業を展開する。1つ目は、ICTを活用した次世代畜産・酪農施設(バイオガスプラントなど)の提供・運営だ。

バイオマスリサーチが設計した小規模バイオガスプラントに、NTTグループのICT技術を活用した遠隔監視やオンサイト対応を組み合わせ、これまで導入のハードルが高かったバイオガスプラントを「初期コスト不要、月額利用型モデル(ビジネスモデル特許出願中)」で提供する。詳細な月額料金は検討中とのことだが、従来の人手や業務委託で糞尿処理していた場合と比較すると、約2割〜5割程度のコスト削減につながるという。

ビオストック代表取締役社長就任予定の熊谷智孝氏は「農家のコストを削減するだけでなく、バイオガスプラントの運営を通じて副産物として得られる消化液を有機肥料として活用するほか、NTTアノードエナジーとの連携により、バイオガスプラントから創出されるメタンガスや余剰熱を再生可能エネルギーとして活用することで、自治体・JA・畜産農家・地域企業とともに地域循環型エコシステムの構築を目指す」と話した。

もう1つの主な事業は、データ駆動型畜産・酪農関連ソリューションの提供である。糞尿処理以外の営農業務についても、遠隔で人手を介さない姿を実現すべく、IoT/AIを活用した環境制御や、環境・飼育データの分析による飼養管理システムなどを、さまざまなパートナーとの連携を通じて提供するという。

ビオストックは今後、バイオマスリサーチがすでにバイオガスプラントの調査・導入支援を実施している自治体、JA、畜産・酪農家を中心に、ICTを活用した次世代畜産・酪農施設の提供・運営や、データ駆動型畜産・酪農関連ソリューションの提供を行う方針だ。

また、バイオガスプラントから発生する余剰熱をNTTアグリテクノロジーが提供する大規模施設園芸で活用するといった研究を進めるなど、NTTグループのアセットとバイオマスリサーチのノウハウをベースに、パートナーとの連携を通じて、畜産・酪農分野のDX(デジタルトランスフォーメーション)を目指すとのこと。