○最新のデータ統合のアプローチのメリットとは?

現在、多くの企業でデジタルトランスフォーメーション(DX)が本格的に進められています。しかし、収益性を維持するため、企業は昔ながらの「コスト削減」をやめるわけにはいきません。結局のところ、企業にとって唯一の存在理由は利益だとビジネスの教科書は教えています。利益を出せないと、資本は別の場所でより効率的に使用されてしまうというのが、機会費用の原理です。

新型コロナウイルスのパンデミックに際し、企業はかつてないほど予算やスタッフの削減に迫られています。このような困難な時期に、コストを削減しながら、DXのプロジェクトの継続を可能にするテクノロジーに投資するのがCIOにとって賢明な判断と言えるでしょう。これらのテクノロジーは、CIOを継続するための重要な切符になる可能性があります。

DXを推進する上でデータの有効活用がカギとなりますが、企業にとって正確で一貫性のあるデータを提供することはいまだ、幻想的な楽園の地です。データ統合のための多くのアプローチやテクノロジーは市場を巻き込み、多くの組織に混乱を生じさせています。そのような中、データ統合のためのモダンで有効なオプションを提示しているテクノロジーの1つに、データ仮想化があります。データ仮想化は、データの一時的な物理的複製を必要とせずに、アジャイルでリアルタイムなアプローチを可能にします。

ETLなどのレガシーなデータ統合テクノロジーでは、ソースシステムからデータを抽出し、それらを中間システムに移動し、ターゲットシステムと互換性のある形式にデータを変換し、変換したデータを目的のシステムに読み込ませていました。こうしたテクノロジーは現在も広く使用されていますが、データウェアハウスアーキテクチャの重要な動力源だったETLの利用は徐々に減っています。

その理由として、ETLではプログラミングやスクリプティングで厳格なアプローチが必要なことが挙げられます。データやソースを変更しなければならない場合、多くのエンジニアがスクリプトの作成と調整に当たる必要があります。また、変換を適用するための中間データの保存に高いコストがかかります。ソースシステムに何らかの変更が行われると、繊細なETLスクリプトは正しく動作しなくなる可能性があり、それを修正するための時間が必要になったり、ビジネスオペレーションが中断されたりすることがあります。

データ仮想化では、データをソースに置いたまま、その上に抽象化レイヤーを作成することによって、ソースとデータ利用者の間の中間システムを不要にします。こうした抽象化によって、アナリストやビジネスユーザーは基盤システムの変更による影響を受けることがなくなります。

また、IT部門は、ビジネスオペレーションを中断させることなく、基盤システムの最新化を独立して進めることができるようになります。分析ツールやレポートツールはデータ仮想化レイヤーにデータをリクエストします。IT部門は古いシステムを廃止して新しいシステムに移行することがありますが、データ仮想化レイヤーはそうしたデータの動きを追跡し、データがどこにあってもその検出を行います。1週間前にオンプレミスに置かれていたデータが現在はクラウドに置かれていることもあるでしょう。

このような場合でも、データはユーザーの元にリアルタイムで安全かつ迅速に届けられ、必要なリソースやコストは4分の1に抑えることができます。データ仮想化のノーコード/ローコードのアプローチによって、必要な開発者の数は少なくて済み、(複製)データを保存することがないためストレージのコストも節約されます。
○どこでデータ仮想化を使用すべきか?

さて、データ仮想化はさまざまなプロジェクトで利用されています。例えば、クラウドの最新化、データサイエンス、データディスカバリー、顧客や製品や資産の360度ビュー、データウェアハウスのオフロードなどで利用されています。また、IoTデータなどの流動性の高いデータと流動性の低いデータの統合もその1つです。データ仮想化は水平型テクノロジーであるため、ほぼすべての業種の企業が最先端の使用事例でデータ仮想化の使用を成功させています。以下、具体的な事例を紹介します。
○アプリケーションのクラウド移行

企業はデータセンターにコストをかけることを嫌って、クラウドに移行しています。オンプレミスのアプリケーションをそのままクラウドに移すのではなく、クラウド固有の機能を活用してアプリケーションのアーキテクチャを再構築しています。オンプレミスのアプリケーションを廃止してクラウドに同等のアプリケーションを構築する際に、企業はデータ仮想化を抽象化レイヤーとして使用しています。

これにより、ビジネス部門はデータが古いアプリケーションまたは新しいアプリケーションのいずれにあるかを意識することなく、オペレーションを継続できます。
○データサイエンス

以前、ある製薬会社のお客様から「ガンの治療法に関する情報がデータの中に埋もれて見つからなかったことがあります」という話を聞きました。

多くの知見を求めてデータマイニングを行う際に、データサイエンティストは企業のすべてのデータにアクセスする必要があります。正しい質問を行って回答を得るには、さまざまなデータモデルを適用できる柔軟性が必要です。データ仮想化には論理データモデルの機能が備わっています。データサイエンティストは、データモデルをデプロイして実際のビジネスの場面で使用する前に、安全なサンドボックス環境で利用可能なすべてのデータを使用してさまざまなデータモデルを適用できます。
○データディスカバリー

組織内外のすべての情報を知る企業データレイヤーとして、データ仮想化は情報をカタログ化します。データ仮想化は、データが存在する場所、データ形式、関連付け、データにアクセスしている人、アクセス頻度、アクセス目的などの詳細な情報を提供します。ビジネスユーザーはさまざまなリポジトリにあるデータを検索するのではなく、単一のデータ仮想化レイヤーにアクセスしてデータのクエリを行い、データが置かれているシステム、他のデータとの関係、データに関連付けられたビジネス定義を参照できます。

産業革命において機械化が重要な役割を果たしたように、DXにおいてはデータ仮想化がその役割を担います。いずれも、労働生産性と生産高を向上させ、コストを削減し、収益と利益を高めることを目指しています。企業がコストを削減させるためにテクノロジーを活用してITインフラストラクチャを刷新する中、データの可用性と整合性を保証し、ビジネスオペレーションを中断なく継続させることは、以前にも増して重要になっています。CIOにとってデータ仮想化は、デジタルトランスフォーメーションを実現しながらコストを削減するという2つの目標を達成するための優れた手段となります。

次回は、エッジコンピューティングとデータ仮想化の活用を紹介します。

著者プロフィール

○Denodo Technologies 最高マーケティング責任者 Ravi Shankar(ラヴィ・シャンカール)

製品マーケティング、需要創出、コミュニケーション、パートナーマーケティングを含むDenodoのグローバルマーケティング活動の責任者。カリフォルニア大学バークレー校のハースビジネススクールでMBAを取得した後、OracleやInformaticaなどのエンタープライズソフトウェアリーダーから、25年を超えるマーケティングリーダーシップの実績を持っている。