市場動向調査会社Informa/OMDIA主催の「第39回 ディスプレイ産業フォーラム」の基調講演は、OMDIAシニアディレクタ(台湾駐在)でディスプレイ調査部門を統括するDavid Hsieh氏による「ポストコロナ時代の世界ディスプレイ業界の10大トピックス」と題したものであった。
1. ディスプレイの面積需要はV字回復

1つ目のトピックスは「ディスプレイの面積需要はV字回復」というもの。新型コロナウイルスの問題が収まった後、ディスプレイの面積需要はV字カーブで回復するとOMDIAでは予測している。

実際の数値としての2020年の面積需要は年後半から回復し始め、通年では前年比1%増、2021年には同9.5%増となる見込みである。また、2017年から2026年までの年平均成長率(CAGR)も4%と予測しており、今後も面積ベースの牽引役は液晶テレビだとしている。

2. 中国勢の躍進

2つ目のトピックスは「中国勢の躍進」というもの。TFT LCD市場における中国勢のシェアは2020年代に7割を超える見込みで、今後、韓国勢は2%までシェアを落とし続けるとする。

また有機EL(AMOLED)市場でも2020年は韓国67%、中国31%というシェアであるが、これが2020年代のうちにそれぞれのシェアが5割前後で拮抗する状況になるという。

3. 韓国勢の液晶パネル製造からの撤退

3つ目のトピックスは「韓国勢の液晶パネル製造からの撤退」というもの。韓国のTFT LCD業界は2020年第4四半期までにリストラを進め、ほとんどの液晶ファブを閉鎖する計画である。一部のファブ閉鎖は2021年にずれ込むほか、利益率の高いIT機器向け液晶パネルの生産は続行される見込みだが、こうした取り組みの結果、韓国勢の液晶パネル生産能力はシェア2%まで下がる見通しである。

4. パネル価格が四半期ごとに目まぐるしい変動

4つ目のトピックスは「新型コロナウイルスの影響で四半期ごとに目まぐるしい変動する価格」となっている。新型コロナによる需給の変動もあり、2020年は四半期ごとにデイスプレイ業界の状況が目まぐるしく変わっている。そのためパネル価格も各四半期ごとに上昇、下落を繰り返しており、併せて需給バランスもライン稼働率も目まぐるしく変化する事態となっている。

5. 液晶パネルはIT機器の新たな商機を見出せるのか?

5つ目のトピックスは「液晶パネルのIT機器に向けた新たな商機創出への期待」である。IT機器向け液晶パネルの利益率は液晶テレビよりも高いことから、テレビ用液晶パネルから撤退を表明した韓国勢も、こちらについては最後まで残すようである。新型コロナに伴う需要の増加を受けて、中国、そして世界最大の液晶パネルメーカーであるBOEもIT機器向けパネルの生産比率を高めているという。同社の2020年に生産する第8.5世代ガラス基板の61%がテレビ向け、残りがIT機器向けとなる見込みだが、今後はIT向け比率が高まっていくとみられるという。

6. 液晶に代わる新たなディスプレイ技術が続々登場

6つ目のトピックスは「液晶に代わる新たなディスプレイ技術が続々と登場している」というもの。ポストコロナの時代には、液晶ディスプレイは衰退し、代わりにQD OLEDやGNED、マイクロLEDディスプレイ、マイクロOLEDなどをはじめとする新技術が実用化の段階に入り、新たなビジネスチャンスが生まれることが期待されるという。

7. スマホの有機EL搭載率が増加

7つ目のトピックスは「スマホの有機EL搭載率が増加」というもの。2019年のスマホへの有機EL(OLED)パネルの搭載率は30%(うちフレキシブルOLEDは10%)であったものが、2025年には43%(うちフレキシブルOLEDは27%)に増加するという。ちなみに2022年までにフレキシブルOLEDの採用率が従来のリジットOLEDの採用率を超える見通しだという。
8. スマホ向け有機ELでも中国勢が躍進

8つ目のトピックスは「スマホ向け有機ELでも中国勢が躍進し、韓国勢の脅威になる」というもの。これまでスマホ向け小型有機ELといえば、Samsung Displayが圧倒的なシェアを誇ってきたが、近年、中国勢、特にBOEが猛追してきており、2020年の生産枚数は韓国勢の3億9000万枚に対し、中国勢が7600万枚とOmdiaでは予測している。

9. 有機EL関連技術が急速に進歩

9つ目のトピックスは「有機EL関連技術が急速に進歩している」というもの。その背景には、ディスプレイのデザインに斬新なものが採用されるようになり、オンセルタッチの採用やさまざまなセンサの付与などが求められるようになってきたためだという。

10. パネルメーカー各社が模索する生き残り戦略

10番目のトピックスは「パネルメーカー各社ともに、生き残りをかけて戦略の練り直しを進めている」というもの。各社ともにカバーしているディスプレイ応用技術範囲などが異なり、それを踏まえ、新たな戦略に基づきカバー範囲の拡大・縮小などを進めていく模様である。

アフターコロナのFPD業界を中国勢が席捲する可能性

講演の最後で、David Hsieh氏は、「新型コロナウイルスの蔓延後、米中はじめ各国は、政治的にも経済的にも技術的にも我が道を行くことを鮮明にしている。中国は、短期的には何かあるにせよ、勢力を拡大し、主導権を握ることをやめることはない。中国は、新型コロナの影響によりパネルの需要低下、新規製造ラインの立ち上げ遅延、ファブの建設遅れなどを経験したが、現在は徐々に遅れを取り戻しつつある。コロナ後、デイスプレイ業界がV字回復するにつれて新しい技術が登場してくるだろう」と話を結んだ。