JR東日本が2020年3月14日に実施したダイヤ改正で、特急「踊り子」の一部列車にE257系リニューアル車両(E257系2000番台)が導入された。185系の「踊り子」も残っているが、国鉄時代から活躍するこの車両もいずれ消える予定である。

今回、特急「踊り子」に導入されたE257系2000番台は9両編成。もともと中央本線の特急「あずさ」「かいじ」などで活躍していた。中央本線の特急列車はE353系に統一され、既存のE257系は伊豆方面の特急列車に転用されることになった。改造工事によって車両の装いも改め、これまでの武田菱をモチーフにしたデザインから、伊豆の空と海をイメージしたデザインへと一新された。

先日、取材で熱海市を訪ねた際、東京駅から熱海駅までE257系の「踊り子」に乗車できた。そこで、導入間もないリニューアル車両の様子を探ってみることにした。
○■リニューアルで変わったところ、変わらないところも

筆者が乗車した列車は東京駅10時0分発、伊豆急下田行の下り「踊り子7号」。ホームでは「車内販売はございません」とアナウンスがあり、乗車する人は飲み物・食べ物を用意して並び、列車の到着を待っていた。子連れの観光客の姿が目立つ。花粉症の時期であり、新型コロナウイルス感染症の影響もあって、マスクを着用している人が多い。

9時48分ころ、上野方から東京駅9番線ホームにE257系リニューアル車両が入線してきた。下りの先頭車(1号車)は非貫通タイプ。車体前面は黒を中心に、窓下に「ペニンシュラブルー」の帯をあしらい、その下に「SERIES E257」「EAST JAPAN RAILWAY COMPANY」の文字が入る。車体は白を基調に、先頭車の中央部から中間車にかけて「ペニンシュラブルー」、窓周りは黒で配色している。

9時50分にドアが開き、乗車する。1号車は「クハE256-2004」。車内に入っての第一印象は、「懐かしいな」というものだった。もともと中央本線で活躍した車両であり、昨年春、中央本線での運行を終える前に何度もE257系に乗車した。リニューアル後もドア付近の雰囲気はそのころのままであり、当時からある傷なども残っていた。

もちろん変わったところもある。1号車の車内には、大きな荷物を置くスペースが設けられている。座席のモケットは伊豆らしい色彩をあしらったものに変更された。

窓側の「5A」の席に座り、座席周りの設備を確認。テーブルやドリンクホルダーは以前と変わらないが、「踊り子」への転用にあたり、窓側の座席にコンセントが設置され、スマートフォンの充電などができるようになった。

座席の真上には、常磐線のE657系、中央本線のE353系にもあるような、指定席の予約状況を表示するランプが設置されていた。将来、「踊り子」の全列車がE257系になった際には、常磐線や中央本線と同様の「新たな着席サービス」が導入されるのではないかと予想される。やがて10時となり、列車は定刻に東京駅を発車する。
○■東海道本線で余裕のある高速走行を見せる

E257系の案内チャイムはリニューアル後も中央本線時代と変わらない。新橋駅を通過してしばらくすると、右側に開業間もない高輪ゲートウェイ駅が見えた。品川駅の手前で停止信号を受信した影響もあり、品川駅には少しだけ遅れて到着した。

かつてE257系が活躍した中央本線の特急列車といえば、新宿駅を出た後、立川駅あたりまでゆったりとした走りだった。これは中央線快速と線路を共用しているからで、停車駅の多い中央線快速のダイヤと合わせるためには仕方のないことであった。

一方、東海道本線の特急列車は上野東京ライン(東海道線)と線路を共用しており、東京〜大船間では並行する京浜東北線や横須賀線と比べてホーム設置駅が少ない。駅間の距離が長く、停車駅も上野東京ラインの快速・普通列車と大差ないため、中央本線の特急列車と比べてスピードを出せる。E257系の性能を平坦な区間でも発揮できるようになった。品川駅を発車すると一気に加速し、トップスピードに乗った。

ちなみに走行中、立って歩いているとよく揺れる。これもまた、中央本線時代と変わらないように感じた。

E257系2000番台の車内設備について紹介すると、9両編成の1〜3号車・5〜9号車が普通車(自由席は8・9号車)、4号車がグリーン車となっている。3号車のフリースペースは、中央本線時代からあった設備をほぼそのまま活用しているようだ。

グリーン車は車両の中央付近に乗降用のドアがあり、2室に分かれている。うち1室は中央本線時代からあるグリーン車、もう1室は新しくグリーン車にしたものである。そのせいか、新しいほうの1室は窓と座席の配置が一致していない。客室ドアも、元からグリーン車だったほうの1室は木目調だが、新しいほうの1室はスモークガラスを使用したドアとなっている。

多目的室では、中央本線時代からの武田菱をあしらったモケットをそのまま使用しており、車内の電話スペースなども残る。東京方の先頭車である9号車には、1号車と同様、大きな荷物を置くためのスペースが設置されている。

先頭車は非貫通タイプの1号車に対し、9号車は貫通タイプ。内外装はリニューアルされているものの、各所に中央本線時代の雰囲気を残している印象だった。

「踊り子7号」は東海道本線を快走し、川崎駅に続いて横浜駅に停車。横浜駅で女性客が多く乗ってきた。筆者が乗車した日は平日で、乗客は多くなかったものの、ガラガラというほどでもなく、それなりに観光客のグループなどが乗っている様子だった。

大船駅からは本格的にスピードを上げて走行し、特急列車としての本領を発揮する。駅を通過する際、ミュージックホーンを鳴らし、ホーム上の人へ注意を呼びかける。

とにかく、走りが速いのである。それも、中央本線時代の「がんばっています」という雰囲気ではなく、余裕で高速走行を楽しんでいるかのような印象を受ける。東海道本線の最高運転速度は120km/hだが、E257系の最高速度は130km/h。余裕があるのもうなずける。車内は多少揺れこそするものの、座っていると問題ではなく、過ぎ去る車窓の景色はどんどん変わっていく。国府津駅付近で海が見えると、乗客から歓声が上がった。小田原駅を出た後、根府川駅付近でも相模湾が広く見え、水平線も望めた。

「踊り子7号」は定刻の11時20分より1分程度遅れて熱海駅に到着し、筆者はここで下車した。列車はこのあと、熱海駅から伊東線、さらに伊豆急行線を走行する。終点の伊豆急下田駅の到着時刻は12時41分となっている。

伊豆方面の特急列車といえば、3月14日にデビューした「サフィール踊り子」が話題だが、リニューアルしたE257系も「踊り子」のイメージを一新する車両として、観光輸送などに力を尽くすことになるだろう。中央本線時代の長かった「山暮らし」から一転、装いを改めてE257系2000番台の「第2の人生」に幸あれと願う。

なお、特急「踊り子」は現在、定期列車の下り「踊り子7・15号」、上り「踊り子4・18号」がE257系リニューアル車両による運転。他に臨時「踊り子」でも使用される。今後は9両編成の2000番台に続き、5両編成の2500番台も導入される予定だ。