どこでもサイエンス 第121回 エジソンと自動車

どこでもサイエンス 第121回 エジソンと自動車

発明王トマス・エジソン。誰でも知っている「偉い人」です。彼は、電球を始めとする電気関係の発明で知られていますが、実は1969年に「自動車殿堂」入りもしています。エジソンと自動車の関係をちょっとご紹介したいと思います。

トマス・エジソンは(1847〜1931年)は、19世紀から20世紀にかけて活躍したアメリカの発明家、事業家でございます。エジソンがかかわった発明といえば、電球、電信、レコード、電話、発電、映画などが有名ですし、アメリカの大手電機会社GEの創業者(のちに会社から追放されますが)でございます。1931年に彼が亡くなった時は、それをたたえ、全米の電灯を1分間消灯するというイベントが行われたそうです。エジソンという存在のインパクトがよくわかる逸話でございます。スケールがすごいですね。

エジソンといえば「電球に京都八幡の男山の竹を使った」ということも知られています。日本でも身近でございますが、そのせいか、栃木県下都賀郡壬生町にある、バンダイミュージアムにエジソン関連の相当なコレクションがあり、見ることもできるのでございます。エジソンは電気を大衆化した立役者なので、関連のモノも豊富ということなのでしょうな。昔の蓄音機とか、トースターとか、写真だけでもなんだか、ワクワクしますな。

ところで、この電気なエジソンは、意外なことに「自動車殿堂」入りをしています。ええ、自動車、クルマでございます。どういうことなのでしょうか?

まず、クルマの前に電車です。エジソンは、ドイツのジーメンスが1879年に発明した電気機関車を見て、自らも電気機関車を開発しています。当時主流だった蒸気機関車とちがい、架線などの電気インフラがあれば、燃料の石炭と水を大量につんで機関士が重労働をしなくても動かせる、煙もはかないということに未来を見たのですな。これは事業化に成功し、日本でも、東海道本線が電化されたときに、エジソンが作ったGE社の電気機関車を輸入し使用しています。

そして、エジソンが次に考えたのが自動車だったのでございます。

自動車は、発明当初蒸気機関で動いていましたが、1880年頃にドイツでダイムラーとベンツがそれぞれガソリンエンジンを発明、実用化し、自動車に搭載し注目されます。また、同時期には英国で電気自動車が開発されていました。ポルシェ博士も当初、電気自動車を開発していました。そして、1900年頃には、電気自動車の方がガソリン自動車よりも多く売られていたのです。

へぇー!(このへん、調べながら書いています。)

エジソンはこれにも目を付けたんですな。電気機関車が作れれば、電気自動車に移るのは容易です。問題は架線に頼れないから、電池になります、エジソンは蓄電池の性能を上げることに注力し、かなり実用性をあげることに成功していました。鉛充電池に対し、軽くて高性能なアルカリ充電池の開発に彼は成功しています。こうした初期の電気自動車の開発についての貢献によって、エジソンは自動車殿堂入りをしているんですね。

ところで、この前後、自動車の開発に野望を燃やす若者フォードが、エジソンの会社に入り、照明などの技術者として働くかたわら、1896年にはガソリンエンジンの自動車を自力で開発しました。これをエジソン社長に伝えることに成功したフォードは、エジソンに褒められ、励まされて独立します。そしてフォードはT型フォードというクルマでガソリン自動車の大衆化に成功、現在でも大会社が続いていますな。

一方で、エジソンに恩義を感じていたフォードは、エジソンと協業して電気自動車の大衆化にもとりくみます。そのためにはコストです。しかし、当時はガソリン大衆車の経済性にどーーーしても、かなわなかったのですな。ナショナルジオグラフィックスさんの記事によると、「最後に作られたEVは「オートマティック(Automatic)」という1921年モデル。最高時速約40キロ、1回の充電で約96キロを走行できたが、価格は当時主流だったT型フォードの4倍以上、1200ドルだったという。」なのだそうです。

さて、この電池の問題は長らくどうしようもなかったのですが、近年になってニッケル水素やリチウムイオンなどの高性能充電池が普及し、ご承知のようにふたたび電気自動車が脚光をあびるようになっています。そして、世の中は自動車革命でございます。エンジンがデフォルトだったところに、モーターで動くさまざまな電気自動車が本格参入。アメリカではテスラのような新興メーカーが急伸していますし、ヨーロッパでは「エンジンやめまーす」な方針になったりしています。一方で、エンジンではマツダがまさかのディーゼルのような圧縮着火でさらなる低燃費なガソリンエンジンを開発したりなど、百花繚乱でございますな。まるで100年前を再現しているようです。

いまのところ、電気自動車が伸びているようですが、思わぬ技術や開発がそれをひっくり返す可能性だってあります。必要な細かな最終移動手段だけを自動車を使うようになると、電池を使わない、給電式の電気車が意外な覇権を握るともかぎりませんし、自動車で移動するというのが、ITCによって限定的になってしまうのが勝つかもわかりません。歴史を調べると、そんなこともついつい思っちゃうんですよね。

まあ、変な「未来予測」はこのくらいにしておきます。ただ、いまもそれぞれの場で、エジソンやフォード、ジーメンス、ベンツ(ベンツは夫婦とも殿堂入りです。おもしろいのでまたそのうち紹介します。)、ダイムラー、ポルシェ、日本でもさまざまな技術者・研究者が、いろいろなことを試みているだろうなあと、想像して楽しむことにしたいと思います。

著者プロフィール
東明六郎(しののめろくろう)
科学系キュレーター。
あっちの話題と、こっちの情報をくっつけて、おもしろくする業界の人。天文、宇宙系を主なフィールドとする。天文ニュースがあると、突然忙しくなり、生き生きする。年齢不詳で、アイドルのコンサートにも行くミーハーだが、まさかのあんな科学者とも知り合い。安く買える新書を愛し、一度本や資料を読むと、どこに何が書いてあったか覚えるのが特技。だが、細かい内容はその場で忘れる。

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