総合地球環境学研究所(地球研)は9月24日、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックに伴う緊急事態宣言による外出規制の効果を分析したところ、緊急事態宣言には外出抑制効果があることが明らかになり、その効果は緊急事態宣言が出されていた期間が一番高いことが分かったと発表した。

同成果は、地球研の片渕結矢 研究員、九州大学の栗田健一 特任助教ならびに馬奈木俊介 主幹教授(地球研客員教授)らで構成される研究チームによるもの。詳細は国際誌「Economics of Disasters and Climate Change」に掲載された。

新型コロナの感染拡大が続く中、外出を自粛する理由として、第一に感染リスクの回避が先行研究でも考慮されてきた。一方で、感染拡大状況下、特に緊急事態宣言下において、日本の自粛警察と呼ばれる人々の行動に代表されるように、外出することを反社会的な行動とみなす世論が形成されていたが、これまでの先行研究はこういったスティグマ(社会的烙印)による心理的コスト(心理的負担になる要因)の要素が加味されてこなかったという。また、外出の自粛は天候などのほかの要因の影響も可能性として考えられることから、研究チームは今回、どのようなメカニズムによって法的拘束力のない緊急事態宣言が外出行動を抑制するのか、また、スティグマや天候など外出行動の意思決定に影響する他の要因を考慮した上でも、緊急事態宣言は全国的な外出行動を減少させたといえるのかを知るため、理論モデルによる分析と、全国的な実際のデータを用いた実証分析を行ったという。

その結果、法的拘束力を持たないにもかかわらず、緊急事態宣言は外出抑制の効力を持つことが明らかになったという。ただし、「他者が外出しているのだから自分も外出しても大丈夫だろう」というような動機から外出者数が相対的に多い状態と、「大事を取って外出しない方がよいだろう」というような動機から外出者数が相対的に少ない状態の、複数の状態が実現する可能性があるため、緊急事態宣言による外出抑制効果の大きさを予測するのは困難であることもわかったという。

また、実証分析の結果からは、外出行動に影響を与える他の要因をコントロールした状況でも、緊急事態宣言下の人の流れは抑制されていることが明らかになったほか、緊急事態宣言が解除された後も自粛の効果は継続していたものの、その抑制の度合いは緊急事態宣言下の方が大きかったことが判明したという。

今回の結果について研究チームは、経済とのトレードオフを考慮しながら外出行動を抑制することで感染拡大を防止するためには、より法的拘束力の強い政策を検討する必要がある可能性を示す根拠の1つになるといるとの見方を示しており、今後は、外出行動に伴うスティグマだけでなく感染者に対するスティグマも考慮した上で感染者数と外出者数の相互依存関係を詳細に分析し、給付金やベーシックインカムなどの政策効果や制度設計について考察する予定だとしている。