■活動中断の協力隊員・上

 「こんなに世界が変わると思っていなかった」。国際協力機構(JICA)の青年海外協力隊員・野崎榛香さん(28)=駒ケ根市出身=は、新型コロナウイルス禍に向き合わざるを得ない現状について、そう打ち明ける。

 世界的な感染拡大を受け、JICAは今春、海外派遣中の協力隊員約2千人を一時帰国させる方針を決めた。派遣国によっては医療体制の整備が不十分で、隊員の安全を確保できないなどと判断したからだ。

 ミクロネシア連邦で教師として活動していた野崎さんは3月18日に帰国した。来年3月まで任期を残しているが、新型コロナは今も世界で猛威を振るい、再派遣に向けた見通しは立っていない。

 野崎さんにとって、協力隊とのつながりは20年ほど前にさかのぼる。

 駒ケ根市の中央アルプス山麓に立地する駒ケ根青年海外協力隊訓練所。協力隊員の候補生が全国各地から集まる施設で、海外派遣に向けた訓練が1979年から続いている。訓練の一環として恒例になっているのが、隊員候補生が地元の学校に赴き、子どもたちに派遣国を紹介する交流会だ。

 市内の小学校に通っていた野崎さんも、オセアニアの国へ派遣予定の青年の話を熱心に聞いた。「いろんな国があるんだな」。協力隊や海外に関心を持つようになった出来事として、今も強く記憶に残る。中学生になってからは、隊員候補生が受ける訓練を駒ケ根訓練所に泊まりながら体験する催しにも参加し、「海外に行きたい」との思いを強くした。

 その後、高校卒業とともに地元を離れ、時の流れとともに協力隊への関心は薄れていく。だが、神奈川県内の小学校で教師として働き始め、6年の社会科の教科書に協力隊の記述があることを知った。「こんなに有名なんだ」。自身のやりたかったことを見つめ直すきっかけとなり、2017年、隊員候補生の選考を受ける決意を固める。

 選考の際、現地で教育の活動ができる国の中からミクロネシアを派遣先に希望した。大学時代にフィジーに留学していたため、同じ太平洋の島国に親近感を持ったのだ。入念に準備を重ねたかいあって無事通過したのは18年夏。昨年4月、駒ケ根訓練所で入所式を迎えた。

 訓練期間は70日間。外国語や異文化理解などの研修を経て、7月3日に修了証書を手にした。「すべてが充実した毎日だった。厳しい訓練の中で成長できた」と当時の取材に答えている。

 JICAから正式に協力隊員と認められ、13日後、日本を出国した。この時、不安はなかったといい、脳裏に浮かんだ言葉は「どうにかなるさ」。期待に満ちあふれたミクロネシアでの日々が、始まろうとしていた。