昨年12月22日午後、長崎市北部の閑静な住宅街。人工呼吸器を装着した3歳の出口大空(おおぞら)君は、リビングのベッドで気持ち良さそうに眠っている。隣のテーブルでは両親と姉2人が、色画用紙や折り紙を切ったり折ったりしながら冠を作っていた。
 「毛糸の色はどれがいいかな?」
 「トナカイってこう折ればいいんだっけ?」
 和やかな時間が流れ、3日後のクリスマスをイメージさせる冠が少しずつ形になっていく。前面にカラフルなツリー、その両脇にサンタクロースとトナカイの折り紙。長女の心実(ここみ)さん(15)がクレヨンで「45」と「R1・12・22 3さい9ケ月」と書き込んで完成。この日は、2016年3月22日に生まれた大空君の45回目の「月誕生日」だった。
 「おーちゃん、これ、サンタさん、トナカイさん。お姉ちゃんたちが作ってくれたよ」。母親の光都子(みつこ)さん(47)が、ちょうど目を覚ました大空君に語り掛けた。冠を頭にかぶせて、両親と姉たちが「ハッピーバースデートゥユー」を歌い祝福。家族全員で記念撮影をして、この1カ月間を無事に過ごせたことを喜ぶ。毎月22日の家族の大切なイベントだ。
 大空君は光都子さんのおなかの中にいる時、染色体異常症「18トリソミー」と診断された。通常2本しかない18番目の染色体が3本あり、3500〜8500人に1人の割合で生まれる。心臓、呼吸器系、泌尿器系などの合併症のほか、重い発達の遅れ、難聴などの症状もみられ、「短命」とされる。米国の大規模調査を基に1年生存率は「5・57〜8・4%」との数字が広く引用されてきたが、最近は積極的治療で生命予後や生活の質が改善すると言われている。
 15年8月、産婦人科の医院を受診した光都子さんは妊娠が分かり、超音波検査(エコー)画像の紙に喜びをメモした。「やったー!!待望の第3子。元気にお母(かあ)のお腹(なか)の中で育ってね❤」。当時、心実さんは小学6年、次女の心晴(こはる)さん(14)は小学4年。光都子さんは就寝前、胎児の成長過程の写真が載った本を娘2人と一緒に眺めた。「最初はこんな形をしてるんだ」「これは手かな、足かな」。命の素晴らしさを伝えたかった。
 出産は自宅近くの助産院で、と決めていた。夫の雄一さん(43)と娘たちにも立ち会ってもらい、家族全員で新しい命を迎えたかった。しかし、9月下旬、医師から胎児の異変を告げられた。

 人工呼吸器の装着や胃ろうのチューブによる栄養剤注入などの「医療的ケア」が在宅で日常的に必要な子どもたちが増えている。厚生労働省によると、18年度は全国の20歳未満の推計で約1万9700人に上り、10年前からほぼ倍増。県内でも16年度は169人とされた。以前は助からなかった命が医療の進歩で救えるようになったことなどが背景にあるとされ、国は関係機関が連携して支援するよう求めている。22日、4歳になった大空君と家族の日々を見つめた。
 
【次回に続く】
※この連載は随時更新します。