創成館の印象は現状、どちらかといえば守備に偏っている。2018年の選抜大会準々決勝こそ智弁和歌山と10−11で打ち合ったが、それを除けば、過去に計5度出場した春夏の甲子園での1試合平均得点は1・86点。監督の稙田龍生(56)は攻撃が課題とした上で「今のチームの最大の強みは自分たちの力を理解しているところ。どう1点をもぎ取るかが大事になる」と力を込める。
 創成館の攻撃について、他校は「動いてくる」と警戒する。その特徴がエンドランだ。稙田も「二遊間が一番嫌なことだから。警戒はされるだろうけれど、いつ、何球目にやるのかは監督の采配次第」と自負している。
 印象的な場面がある。勝てば「センバツ濃厚」になる昨秋の九州大会準々決勝。3−3の九回1死一塁、打席は4番の松永知大(1年)だった。ワンボールから仕掛けたエンドラン。右翼手の頭上を越えた打球に、走者の猿渡颯(2年)が一気にサヨナラのホームを踏んだ。両翼93メートルの狭い球場だっただけに、作戦が見事にはまった。
 もちろん「イチかバチか」になることもある。ゆえにエンドランに限らず、この冬に求めてきたのが確実性。九州大会でチームトップの打率5割8分3厘を記録した猿渡は「狙ったものを一球で仕留めないと上では勝てない」と言い切る。「詰まった打球も飛んでいくことがあるし、パワーアップは感じる」とトレーニングや体重増加の効果を実感し始めている。
 相手守備に挑むのは打者だけではない。「速さに関係なく、全員が“走者”としてプレッシャーをかけられるか」。三塁コーチャーの岩崎聖英(2年)は自らの役目に責任感を口にする。
 打者も打った瞬間から走者になる。打球の方向によって自らボールを確認するのか、コーチャーの指示を見るのかを判断して、次の塁を狙えるかタイミングを計る。点差や場面に応じて積極的に走るか、慎重に止まるかを選択。塁に到達しても、相手の捕球や送球にミスがないか、常に目を離さずに「かもしれない」という感覚を研ぎ澄ます必要がある。
 それらを前提として、稙田が最近気にしているのが、打者のバント失敗と走者のリードの甘さだ。バントに関しては個人やグループの課題練習にしているが「全体メニューに組み込まないといけないレベル」。リードについても、盗塁やエンドランでスタートを切ることを想定しても「けん制に対して余裕で戻ったり、緊張感のない選手がまだいる」と基本の再徹底も課している。
 守備には定評がある。だが、点を取らなければ試合には勝てない。長打力、ミート力、走力、判断力…。チームとして得点力を高めるために、個人に求められることは何かを考え、全国で通用する攻撃を目指す。
 “弾みの春”の甲子園は幻となった。選手たちは悔しがり、泣いた。だが、他校も打倒創成館に燃える“本命の夏”がある。チームは23日に練習を再開。「気持ちは切り替えられたはず。新しいことにもさらにチャレンジして、悔しさのすべてを夏にぶつける」。12日前に涙を流した主将の上原祐士(2年)の目は力強く前を見据えていた。