13世帯もの住民が生活している土地を収用するという異例な状況で進む石木ダム建設事業。手続き上の違法性を訴えて国に事業認定取り消しを求めた行政訴訟に続き、人権面での違法性をただした工事差し止め訴訟でも住民側の主張は認められなかった。
 工事差し止め訴訟の弁論では、住民5人が当事者尋問に立ち、古里への思い、家族の歴史、地域コミュニティーの価値を具体的かつ詳細に陳述。だが、判決はこれらの訴えを「主観的」「抽象的」と切り捨てた。
 提訴から判決までの3年間で土地収用法に基づく手続きが進み、13世帯は同意しないまま宅地の権利を奪われ、立ち退きを迫られている。県道付け替え道路の着工から10年。住民らは座り込みなどで抗議行動を続け、昼夜問わず緊張した生活を強いられている。
 県側は新年度当初予算に本体工事費を組み込むなど事業推進の姿勢を強め、家屋の撤去などの行政代執行も選択肢から排除しない構えだ。住民が感じる実生活への影響や脅威は現実的で、決して判決がいう「抽象的」なものではないはずだ。