新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、コンサート、舞台、美術展など文化系イベントの中止、延期が県内でも続いている。文化振興への影響を懸念する主催者も。ホールや映画館など施設側は、収益と安全性確保の両立に頭を悩ませながら持ちこたえようと努力している。

◆ コンサート
 長崎市で今月予定していたマダム・バタフライ・フェスティバル2020(同市、ながさきUTAOTO委員会主催)は中止になった。同委事務局長の堀内伊吹長崎大教授(66)は「市制施行130周年を記念し、オペラで長崎を盛り上げようとしていたのに残念」と肩を落とし、「いろんなコンサートが開けない状況が続けば、県内の文化振興が下火になる恐れもある」と懸念。それでも「オペラに興味を示してくれる子どもたちがいるのが希望の光。来年のフェス開催へ準備をしたい」と述べた。
 雲仙市瑞穂町を拠点に活動する知的障害者のプロ和太鼓グループ「瑞宝太鼓」が長崎市で今月開く予定だった20周年コンサートは延期。グループが所属する社会福祉法人「南高愛隣会」(諫早市)の職員は「長崎公演は秋以降にできれば。県内外で5月まで予定していた公演は5、6本がキャンセルになり経営にも影響が出そう」と話す。岩本友広団長(43)は「研さんを重ね、公演再開へ技術を上げるだけ」と自らに言い聞かせるように語った。
 若手クラシック音楽家の登竜門、第48回県新人演奏会は今月のオーディション、6月の演奏会とも見送られた。主催する県の担当者は「演奏会の出演者に人数制限はないので、今回出られなかった人が来年エントリーしても実力があれば出演できる」と話す。

◆ 舞 台
 3月14日から長崎市で予定していた第68回長崎市民演劇祭(実行委主催)は、5月2日からの日程に延期。実行委の津田桂子事務局長(74)は「長年続けてきた文化イベントなので中止は避けたかった。来場者の手の消毒や換気などを実施し万全の体制で臨みたい」と話す。
 同市にプロの落語家を招いて定期的に寄席を開いている「長崎もってこい落語の会」は、4月に予定していた第92回寄席の中止を決めた。中止は発足以来20年間で初めて。会長の前田克昭さん(71)は「万一のことがあると会場や全国の落語会、ひいては中央の寄席にも迷惑を掛けてしまう」と残念そうに語る。

◆ 美 術
 同市の絵画愛好者グループ「さくら会」(松崎大輔代表、6人)は鑑賞者の安全を考慮し、同市のコクラヤギャラリーで今月開催予定だった絵画展を中止。松崎代表は「開催すれば迷惑を掛ける可能性もあるので仕方がない」。月1回の活動も今月は休止。「活動は楽しい交流の場でもある。早く終息してほしい」
 一方、同市の絵画教室「風の会」(約20人)は、規模や過去の来場者数を踏まえ、4月3〜7日に同ギャラリーで20回目の作品展を予定通り実施する考え。同会世話人の尾田双志さん(80)は「一度に3、4人が見て回る程度。対策は万全にしたい」。

◆ 施 設
 県美術館(同市)は子どもの健康、安全を考慮し4月7日まで高校生以下の入場を制限。しかし、現在開催しているのは若者らに人気の企画展。担当者は「対策を講じて多くの(大人の)人に鑑賞してもらえるよう努める」と話す。
 同市の長崎ブリックホールもイベントの中止、延期が続く。交流スペースは閉鎖中。市文化振興課によると通常、施設の利用を取り消すと前納した使用料の全部または一部が返還されないことがあるが、市は24日、新型コロナウイルス感染防止が理由の際は全額返還する方針を決めた。
 佐世保市のアルカスSASEBOもイベントの中止・延期が続出する一方、22日のクラシック音楽に関する主催事業は開催、100人以上が参加した。間隔を空けて座れるよう大きなホールに変更。チケットは目視で確認、換気を厳重にするなどの感染防止対策を実施した。運営する佐世保地域文化事業財団は「出演者の賛同もあり、対策を講じる態勢が取れたことから実施を決めた」。
 映画館も感染防止に力を入れる。長崎市内2カ所のシネマコンプレックス(シネコン、複合型映画館)、シネマボックス太陽(佐世保市)では、ホームページで劇場内に設置した消毒液の使用を呼び掛けており、従業員の健康管理徹底や館内衛生などを来場者にアピール。客離れを防ごうと躍起だ。「『ドラえもん』など、春休みのファミリー向け作品の公開延期が相次いでいることも集客に響いている」とシネコンの従業員は漏らす。
 長崎セントラル劇場(長崎市)の前田眞利子社長(67)は「学校が休みで子どもの面倒を家庭で見なければならないためか、お年寄りや主婦の来場が減り、3月は平時の月と比べ客数が半減した」と嘆く。劇場内の換気や除菌などで感染者が出ないよう配慮。「社会の暗いムードを拭い去るような、明るく面白い作品を上映して映画離れを食い止めたい」と話す。