海上自衛隊の護衛艦「きりさめ」が10日、中東へ向け出航した。コロナ対策として派遣隊員は全員マスクを着用。“厳戒態勢”の中での船出となった。派遣隊員の家族は不安を口にし、専門家は中東派遣の法的根拠の曖昧さを指摘した。
 海自横須賀基地配備の護衛艦「たかなみ」に続き、中東派遣第2陣となる「きりさめ」。感染対策として派遣隊員は艦内で食事中の会話は厳禁。出航前も一定期間、外部との接触を絶った。10日の出国行事も簡素に行われ、隊員らはマスク姿で艦艇に乗り込んだ。
 出国行事に参加できなかった隊員の家族らが対岸に大勢集まり、手を振って出航を見届けた。子ども2人と一緒に夫を見送った佐世保市内の主婦(34)は「以前、ソマリア沖に半年間派遣されたが、今回はより危険なのではないかと不安。新型コロナの影響で現地で寄港もできず、精神的に大丈夫なのかも心配。無事に帰ってきてほしい」と打ち明けた。
 新型コロナは東アジアの安全保障環境にも影響を与えている。米軍の主力空母で相次いで感染が拡大。即応能力が衰えているのを尻目に中国や北朝鮮は軍事活動を活発化させている。日本大の吉富望教授(安全保障・危機管理)は「中国は、米軍が弱っている今をチャンスと捉え、勢力を広げようとしている」と指摘する。
 「きりさめ」が活動する中東海域も不安定な情勢が続く。4月、米海軍艦船がペルシャ湾を航行中、イランの艦船が異常接近。同湾は自衛隊の活動区域外ではあるが、「中東地域に原油を約9割依存している日本はそのシーレーンの安全も確保せねばならない。本土周辺と中東。そのどちらともに日本は厳しい環境に置かれている」と吉富教授。
 自衛隊の中東派遣を巡っては、武力衝突に巻き込まれる危険性や法的根拠の曖昧さなど未整理の課題が依然残る。NPO法人国際地政学研究所理事の林吉永氏は「簡単に自衛隊を派遣できる今の状況はあまりになし崩し的だ。派遣中には、日本本土の防衛・安全保障体制が手薄になる」との見方を示した。