被爆の実相を語り継ぐ「家族・交流証言者」の定期講話が28日、長崎市平野町の長崎原爆資料館であり、「証言者」新人の山下恵子さん(61)が初の講話に取り組んだ。山下さんは同市の下平作江さん(85)の被爆体験を語り、本人の下平さんも聴き入った。
 定期講話は、市から委託を受けた公益財団法人長崎平和推進協会が月2回実施。高齢化する被爆者の代わりに家族や家族以外の希望者らが「証言者」として体験を語り伝えている。
 山下さんは長崎市在住。伯父が長崎原爆で犠牲になっていて、被爆体験記朗読ボランティアも務めている。2年前に下平さんと出会い、「証言者」になろうと決意。体験を聞き取り、約30分の講話の原稿や資料を作成し、この日初めて来館者ら約40人に披露した。
 下平さんは被爆当時、城山国民学校5年で10歳。爆心地から約800メートルの距離にあった防空壕(ごう)の中にいて助かったが、母、姉、兄は犠牲になった。山下さんは、下平さんの妹遼子さんが被爆から10年後に鉄道に飛び込んで自殺したことを講話の核に据え、戦争の悲惨さや残酷さを伝えた。
 山下さんは「戦後、生活が苦しかったり、原爆による病気やけがが治らなかったりして自殺する人が多かった。そんな時代を想像することで下平さんに寄り添えると思った」という。
 講話後、山下さんと握手を交わした下平さんは「当時を思い出して涙が出た。妹は人間らしく生きることも死ぬこともできなかった。戦争を繰り返さないよう次世代に体験を語り伝えてほしい」と語った。