コヨーテが勢力を拡大している。

 このイヌ科の動物は、かつて北米大陸の西側3分の2の地域だけに生息していたが、20世紀に入ってそのエリアを劇的に広げた。現在の生息域は1950年代と比べて40%も拡大しており、北はアラスカ州、南は中米パナマにまで達している。北米に生息する肉食動物で一番の勢いだ。

 ここまで増えた要因はいくつもある。オオカミが絶滅寸前まで減っていること、コヨーテの毛皮を販売できなくなったこと、エサが豊富な郊外の住宅地が増えたこと、そして、進化の中で獲得した天性の粘り強さもその一因だろう。

 米オハイオ州立大学とマックス・マグロウ野生生物基金に所属する研究者スタン・ゲールト氏は「獲物を狩る大胆さを持ちながら、用心深さとずる賢さを持ち合わせており、このバランスをうまく取ることのできる動物」と、コヨーテを評する。米国内で1年間に駆除されるコヨーテの数は40万匹以上。そのうち8万匹は連邦政府によって駆除されている。「米国で最も迫害されている動物」という見方もできるだけに、実際にコヨーテが個体数を増やしているという現実は驚くべきことだ。

 ゲールト氏は、2000年からシカゴのコヨーテを調査している。全米第3の大都市であるシカゴでも、2000年以前からコヨーテが目撃されるようになった。「私たちはコヨーテの環境適応能力を過小評価しがちです。でも、彼らは人間の目には無理と思うような場所へまで生息域を広げようとしています」

 研究を始めた頃、ゲールト氏はコヨーテの生息地が公園や緑の多い場所に限られると考えていた。しかし、それは間違いだと気づいた。「住宅地、都市の郊外、都市部など、コヨーテはあらゆる場所にすみついています。姿を見かけないのは空港くらいですが、それは見つかれば殺されてしまうからでしょう」

 ニューヨーク市からフロリダキーズ、ハリウッドにいたるまで、コヨーテが適応できない町や気候はないようだ。最近では中米のパナマにまで進出し、その先の南米大陸へも足を延ばそうとしている。

 コヨーテの拡大は、いつ止まるのだろうか。多くの都市生態学者たちが、その行く末に関心をもっている。

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