感染者の急増からマスク不足まで、最近のツイッターには新型コロナのニュースが絶え間なく流れている。でも、なかには心をほっと和ませてくれる話題もある。人のいなくなったイタリア、ベネチアの運河にハクチョウやイルカが戻ってきたとか、中国雲南省の村にゾウの群れがやってきて茶畑で酔いつぶれたといった話題だ。

 厳戒態勢にある国々の動物たちを取り上げたこれらの話題は、大量のリツイートを獲得しているばかりでなく、インスタグラムやティックトックでも爆発的に拡散し、新聞の見出しにもなった。人間がいなくなった世界に動物たちが戻ってきて自由に駆け回っている――パンデミックのさなかに数少ない明るい話題だ。

 ただし、これらは真実ではない。

 ベネチアのハクチョウは、近くのブラーノ島を流れる運河に以前から来ている鳥たちだ。「ベネチアの運河を泳いでいた」とされるイルカは、地中海のサルデーニャ島の港で撮影されたもので、ベネチアから何百キロも離れている。

 酔っ払ったゾウの写真の出どころはわかっていないものの、中国のニュースによってフェイクであることが報じられている。ゾウたちが最近、雲南省の村を通ったというのは本当だが、これは特段珍しいことではない。また村を通ったゾウたちは、拡散された写真に映っているゾウではないし、酔っ払って茶畑で眠り込んでもいないという。

 こうした現象からわかるのは、意外性があって喜ばしい噂話は、危機的な状況下で広く拡散されるということだ。感情を揺さぶられると、人はその投稿をシェアしたくなる。ストレスを感じているときには、微笑ましい動物の映像が大きななぐさめになることもある。2016年の研究によると、口コミの拡散力は非常に強く、ウイルスの拡散モデルと同じような経路をたどることもあるという。

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