米国ミネソタ州の「バウンダリー・ウォーターズ・カヌー・エリア・ウィルダネス」は、五大湖に隣接するスペリオル国有林の一部で、面積は石川県ほど(約4000平方キロメートル)。千の湖を有するこの森は、米国を代表する美しい自然保護区のひとつだ。

 その大自然に引き寄せられて、毎年15万5000人がここを訪れる。文明から完全に切り離されて、自然にどっぷりとひたれる点が魅力で、訪れた人は森の中にテントを張り、カヌーに乗って多様な野生生物を楽しむ。あまりの人気ぶりに、入園パスの予約は数年先まで埋まっているほどだ。

 だが、その自然が今、脅威にさらされている。すぐ近くで、地下資源の開発が始まろうとしているのだ。地下に眠る銅とニッケルの採掘計画は長年論争の的となってきたが、もし採掘が始まれば、周囲の豊かな自然に回復不可能な損害を与える恐れがある。

忍び寄る開発計画

 バウンダリー・ウォーターズの地下には、電子機器から屋根の樋、航空機のエンジンまで、ありとあらゆる製品に必要な貴金属が豊富に眠っている。なかでも、ダルースの町からミネソタ州北東の端まで延びるスペリオル湖沿いのダルース複合岩体には、計40億トンの銅とニッケルが含まれている。チリの採鉱大手アントファガスタの子会社であるツインメタル社は、何年も前からここでの硫化銅採掘権を求めてきた。

 だが、ツインメタル社の予定している採掘法は、金属が大量に流出して湖や川に回復不可能な損害を与えるとして反対する声が多い。バウンダリー・ウォーターズの自然保護運動を率いるグループ、ノースイースタン・ミネソタンズ・フォー・ウィルダネス(NMW)は、開発の中止を求める訴訟をいくつか起こしている。

 この運動に参加している生物多様性センターの上級弁護士マーク・フィンク氏は、カナダオオヤマネコやハイイロオオカミ、ヘラジカなどにとって、バウンダリー・ウォーターズは重要な生息地になっていると主張する。

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