映画『ジュラシック・パーク』に登場して以来、ベロキラプトルは誤解され続けている。同作品では、うろこに覆われ、群れで狩りを行い、鋭いかぎ爪で獲物を切り裂く巨大な恐竜として描かれていたが、この描写はいくつかの点で間違っている。

 まず、ベロキラプトルには羽毛が生えていた。体の大きさはオオカミくらいで、推定体重は最大45キロ。狩りは単独で行い、かぎ爪は獲物をつかむために使っていた可能性が高い。白亜紀後期の約7400万〜7000万年前、現在の中央アジアと東アジアにあたる地域を歩き回っていた。

 実のところ、『ジュラシック・パーク』で描かれたベロキラプトルのモデルは、仲間であるデイノニクス・アンティルロプス(Deinonychus antirrhopus)だった。デイノニクスはベロキラプトルよりはるかに大きく、白亜紀前期の約1億4500万〜1億年前の北米に暮らしていた。

 それでは、ベロキラプトルは本当はどのような恐竜だったのだろう? 今はまだ新たな化石が発見されるとともに知識が増え続けている段階だが、古生物学者たちはすでに、この象徴的な肉食恐竜について多くのことを解明している。

鳥に似た特徴

 現代の鳥類が実は恐竜であり、獣脚類から進化したということは、科学者の間では強く見解が一致している。獣脚類は主に肉食で、ベロキラプトル・モンゴリエンシス(Velociraptor mongoliensis)やティラノサウルス・レックス(Tyrannosaurus rex)を含む。

 実際、ベロキラプトルと現代の鳥類には共通する特徴が多い。例えば、蝶番(ちょうつがい)のような動きをする足首、関節が回転する手首、叉骨(さこつ、鎖骨がつながったV字形の骨)、前向きの指などだ。しかし最も注目すべき特徴は、羽毛が生えていたことだ。

 ベロキラプトルは長い間、爬虫類のようなうろこではなく羽毛に覆われていたのではないかと考えられてきた。2007年には、前腕の骨に瘤(こぶ)が並ぶベロキラプトル・モンゴリエンシスの化石を発見したという論文が学術誌「Science」に掲載された。これらは骨に羽軸を固定する飛羽瘤で、現代の鳥類に広く見られる。

 しかし、多くの鳥類とは異なり、ベロキラプトルは地上のみで生活していた。短い前肢が飛行に適していなかっただけではなく、叉骨も羽ばたく翼を支えられるような形ではなかった。叉骨は首と胸の間にある二股に分かれた骨で、バネのように働いて飛行を助ける。

 2007年の論文では羽毛について、飛行能力のあった小型の祖先から受け継いだものの進化の過程で不要になったか、あるいは交尾の相手へのアピール、巣の防寒、走るときの姿勢の制御などの機能を果たしていたという仮説を立てている。

 ベロキラプトルは飛べなかったが、それでもワシやタカなどの猛禽類に例えられることが多い。後肢の真ん中の指から長いかぎ爪が飛び出していたためだ。以前は獲物を切り裂くのに使っていたと考えられたこともあったが、現在ではタカのように獲物を突き刺し、押さえ付けるのに使ったという説が有力だ。

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