徴用工判決の背後にのぞく、韓国・文政権の「日本軽視」

<北朝鮮との融和に邁進する韓国政府に、日韓関係はお呼びじゃない?>

日韓関係に冷風が吹きすさびそうだ。韓国大法院(最高裁判所)が10月30日、日本企業に賠償を求めていた元徴用工の訴えを認める判決を出した。日本の植民地時代に強制徴用され苦役を強いられたとして、韓国人の原告4人が新日鐵住金に賠償金の支払いを求めていた。

今回の訴訟は、1965年の日韓国交正常化の根幹となる請求権協定を否定し個人の請求権を認めろというものだ。日本政府は、この問題は解決済みという立場で一貫しており、韓国政府に強く抗議した。

今回の判決では原告1人当たり約1000万円の賠償を認めたが、実際に賠償は可能なのか。韓国の裁判所が新日鐵住金の資産を差し押さえることは難しい。同社が保有する韓国の鉄鋼メーカーPOSCOの株式(発行済み株式の3.32%、時価で約800億円)の差し押さえは可能と韓国国内で指摘されているが、実際に差し押さえられるのかは疑問が残る。

韓国大統領府や政府の動きもはっきりしない。「日本企業の肩代わりとして、韓国当局が原告の請求額を支払うという動きもある」(韓国紙記者)一方で、POSCOなど韓国企業が基金をつくり、そこに日本企業の参加を求めるという方法も検討されているとの話もある。

しかし、基金での解決は日本にとっては「うんざり」なのが本音だ。いわゆる従軍慰安婦問題をめぐっては、15年の日韓合意により日本政府が10億円を拠出し「和解・癒やし財団」が設立された。だがその後、文政権がこの合意を「不適切」とする報告書を出したため、財団は解散の方向で動いているからだ。

経済への悪影響も心配されている。日本企業には韓国へ進出した会社のほかにも、韓国企業をパートナーとして第三国でビジネスを展開する社が少なくない。日本の対韓感情が悪化し、韓国企業と提携する社に対してネガティブキャンペーンが起きれば、韓国企業などへの投資や提携関係を取りやめる企業も出てくるだろう。



一方の韓国企業も被害を受け得る。日本の金融機関から融資を受けている企業もあるほか、サムスンなど韓国を代表する企業の大株主は外国人投資家が多い。「国際法から逸脱する判決を出す国」として、韓国企業の国際信用度が落ちることも予想できる。ただでさえ、北朝鮮との関係改善を前のめりで進めている現政権に対し、外国人株主の中には韓国経済の先行きを不安視する見方が広がっている。

気になるのが韓国大統領府や国会議員らの考えだ。日本のある韓国政治研究者は「17年に文政権が発足した後、大統領府や国会議員の中で日本軽視の雰囲気が高まっている」と指摘する。

特に、任鍾晳(イム・ジョンソク)大統領秘書室長をはじめ、大統領府のスタッフの中には民主化を求めた学生運動の出身者が少なくない。彼らは、同族である北朝鮮にシンパシーを寄せて関係改善を強く推進する世代であり、そのためには「米国や日本との関係など気にしなくていい、と考えている」(韓国政府関係者)。

韓国は立法・行政・司法の三権分立を取るが、国内判決が周辺国をはじめ国外でどう受け止められるか、その影響を真剣に考えるスタッフが政権中枢に少ないのも実情だ。日本も外交ルートなどを通じて説明を繰り返す努力は必要だが、韓国には慰安婦問題などほかにも日本に賠償を求める訴訟が存在する。

法より情が勝るという、韓国特有の「国民情緒法」的な風潮も重なり、韓国では今後も同様の事態が繰り返されそうだ。

<本誌2018年11月13日号掲載>



※11月13日号(11月6日売り)は「戦争リスクで読む国際情勢 世界7大火薬庫」特集。サラエボの銃弾、真珠湾のゼロ戦――世界戦争はいつも突然訪れる。「次の震源地」から読む、日本人が知るべき国際情勢の深層とは。


浅川新介(ジャーナリスト)


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