20世紀後半以降の時代「人新生」を代表するのは鶏の骨?

<人間が食べる大量の鶏の骨は、やがて化石となって「人新生」を特徴付けるという予測が>

地質時代の年代区分では約1万1700年前から現在までは完新世と呼ばれる。だが21世紀に入り、新しい区分として20世紀後半以降を「人新世(じんしんせい)」と呼ぶ案が提唱されている。人類が地球環境に顕著な影響を及ぼすようになった時代だ。

だとすれば、何の骨が人新世を特徴づける化石になるだろう。

18年末、英王立協会のオンライン学術誌オープン・サイエンスに掲載された論文によると、なんとそれは鶏の骨だ。

人間は大量に鶏を食べる。結果、鶏の骨が大量に埋められることになり、その多くは化石となって残るはずだ。

そんな論文を発表したのは英レスター大学のケリス・ベネット率いるチーム。彼らの調査によると、世界で食用に殺される鶏は少なくとも年間658億羽に上る。「世界で最も広く食べられている肉はチキンで、その骨が家庭ゴミに混じる」と、ベネットは言う。「大規模な養鶏場が世界中にあり、そうした施設でも鶏が埋められる」

しかも鶏の骨には人為的な改変の痕跡がある。鶏肉の消費量が増え始めた1950年代以降、食用鶏の品種改良が急速に進み、骨格、骨の化学組成、遺伝的な特徴が祖先の野生種とは大きく異なる品種が生まれた。

脚と胸の筋肉が急速に発達し、心臓、肝臓などの臓器は相対的に小さくなり、寿命も縮んだ。ブロイラーは「人間の集中的な介入」なしには生存できないと、論文は指摘している。

人為的に改変された鶏の骨は人新世の地層を特徴づける化石になると、ベネットは予測する。ブロイラーは「人新世に初めて登場した特徴的な骨格を持つ種」であり、将来この年代の地層から大量にその骨が出土し、「後世の学者が人新世の指標と見なすようになる」というのだ。

だが鶏の骨の時代は長く続かないかもしれない。最近では植物由来の代用チキンが人気を呼んでいる。「消費者は環境だけでなく、財布にも優しい食品を求めている」と、ベネットは言う。ボブ・ディランが歌ったように、「時代は変わる」のだ。

<本誌2019年01月22日号掲載>



※2019年1月22日号(1月15日発売)は「2大レポート:遺伝子最前線」特集。クリスパーによる遺伝子編集はどこまで進んでいるのか、医学を変えるアフリカのゲノム解析とは何か。ほかにも、中国「デザイナーベビー」問題から、クリスパー開発者独占インタビュー、人間の身体能力や自閉症治療などゲノム研究の最新7事例まで――。病気を治し、超人を生む「神の技術」の最前線をレポートする。


ハナ・オズボーン(サイエンス担当)


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