中国が宇宙ステーションを国際開放、東京大学ほか9件の宇宙実験を受け入れ

<中国は「中国宇宙ステーション(China Space Station)」を2022年ごろの完成を目指しているが、日本の東京大学を始め17カ国から募集した9件の宇宙実験を受け入れると発表した>

2019年6月12日、中国は独自に構築する「中国宇宙ステーション(CSS:China Space Station)」で日本の東京大学を始め17カ国から募集した9件の宇宙実験を受け入れると発表した。ロシアや日本などすでに宇宙技術を持っている国だけでなく、ケニア、メキシコ、ペルーなど宇宙新興国の参加を受け入れ、宇宙創薬、天文学、生命科学、微小重力実験、地球科学、宇宙技術など宇宙ステーションを使った実験を行う。平和利用目的の宇宙ステーションを利用する機会を提供することで、宇宙大国としての技術力と地位を示す目的があると考えられる。

27カ国から42件の実験計画の応募があった

CSSは、中国が2022年ごろに完成を目指す有人宇宙ステーション。宇宙飛行士が滞在する居住施設、宇宙実験室、有人往還機と貨物輸送機から構成され、長征2号(CZ-2F)、長征7号(CZ-7)、長征5号(CZ-5B)ロケットでCSSモジュールや宇宙飛行士、貨物を打ち上げる。コアモジュール(CM)、実験モジュール1(EM I)、実験モジュール2(EM II)の3施設を組み合わせ、軌道上で10年間活動させる予定だ。3名から最大6名の宇宙飛行士が滞在できる。

2013年に打ち上げられた長征2号ロケット。CSS計画の中では、神舟宇宙船の打ち上げを担う。Credit: China National Space Administration

中国宇宙ステーションに搭載される実験ラックの情報は2018年春に公開されており、国連宇宙部(UNOOSA)と共同でCSSを利用する実験計画を各国から募集していた。6月12日の発表によれば、27カ国から42件の実験計画の応募があったという。最終的に、17カ国23機関による提案が採択された。採択された実験は以下の9件となる。

1.POLAR-2:スイス、ポーランド、ドイツ、中国共同によるガンマ線バースト観測実験
2.SING:インド、ロシア共同による星雲ガス観測実験
3.微小重力下における部分的混合流体の挙動実験:インド、ベルギー共同による流体の挙動実験
4.FIAVAW:中国、日本(東京大学)による、航空機やロケットエンジンにおける燃焼の安定性の研究
5.Tumours in Space:ノルウェー、国際宇宙大学、オランダ、ベルギーによる宇宙放射線の癌への影響の研究
6.病原菌のバイオフィルム形成に対する微小重力影響の実験:ペルー、スペイン共同による、病原菌のバイオフィルム形成に対する微小重力の影響を調べる実験
7.中間赤外カメラによる地球観測:メキシコによる中間赤外カメラでの地球観測と3Uキューブサット(超小型衛星)への応用
8.宇宙用多接合ガリウム砒素太陽電池セルの開発:サウジアラビアによる宇宙用高効率太陽電池セルの開発
9.BARIDI SANA:イタリア、ケニア共同による宇宙用冷却システムの開発



天文学から実用的な宇宙技術まで幅広い実験が採択されており、実現すれば宇宙開発の分野で中国の存在感が高まることは間違いない。宇宙ステーション構築のコストは中国が負担するものであり、目に見える形で宇宙開発に中国が大きく貢献することは確かだろう。

ただし、中国の予定通り2022年までの宇宙ステーション実現にはまだハードルがある。宇宙ステーション計画の中核であるコアモジュール、実験モジュールの打ち上げを担う長征5号ロケットの飛行計画が遅れているためだ。2017年、長征5号は中国最南端の海南省にある海南島から2度目の打ち上げに失敗した。今年7月に打ち上げ再開を目指すとされていたが、さらなる延期を強いられていると米宇宙メディアのSpacenews.comが報じている。ロケット運用の遅れからCSSの完成は2020年代半ばへずれ込むとの見方もある。

国際宇宙ステーションは20年、100カ国以上2500件以上の宇宙実験

2010年、「きぼう」日本実験棟組み立て完了後のISS。Credit: JAXA/NASA

先行するアメリカ、ロシア、欧州、カナダ、日本の国際宇宙ステーションは、最初のモジュールが打ち上げられてから20年を迎えた。これまで100カ国以上の参加者による2500件以上の宇宙実験を実施し、日本はUNOOSAを通じて「KiboCUBE」というプログラムで超小型衛星の開発支援を続けている。第4回となる今年はモルドバ共和国初の人工衛星となる超小型衛星を受け入れ、2020年に「きぼう」実験棟から軌道上へ放出される予定だ。

2018年5月11日「きぼう」から放出されたトルコ共和国イスタンブール工科大学の超小型衛星「UBAKUSAT」。Credit: JAXA/NASA

宇宙実験の機会提供という宇宙を通じた国際協力の枠組みをISSが作り上げたことは間違いない。だが、一国で宇宙ステーション構築の巨大コストを負担してでも門戸を開いたCSSは、宇宙分野の魅力攻勢として強い存在感を放つだろう。2020年代に入って、地球低軌道の利用は「どの宇宙ステーションが宇宙新興国にとってより確実に宇宙開発を支援してくれるのか」という選択の目にさらされることになると考えられる。



Tiangong, China's new space station-Global Times


秋山文野


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