WDが関与する東芝メモリ売却。「アップルやグーグルが黙っていない」

WDが関与する東芝メモリ売却。「アップルやグーグルが黙っていない」

 「東芝が米原子力発電事業の巨額損失を発生源とする会計不信の連鎖をようやく断ち切った。10日、2017年3月期連結決算を正式発表し、監査法人の「限定付き適正意見」の付いた有価証券報告書(有報)を提出。お墨付きを得た格好で、上場廃止の危機はひとまず後退した。ただ東芝は17年3月期末に債務超過に陥っており、2期連続となれば上場廃止となる。半導体メモリー事業を売却し債務超過から脱する計画だが、手続きは停滞している。

 東芝は上場廃止を避けるため17年度中に同事業子会社の「東芝メモリ」を売却する計画。6月に政府系ファンド・産業革新機構を軸とする日米韓連合を優先交渉先に選び法的拘束力のある契約締結を目指しているが、停滞している。

 東芝とメモリー事業で提携する米ウエスタンデジタル(WD)が契約違反を主張し、東芝メモリの売却差し止めを国際仲裁裁判所に訴えているのが障害の一つだ。

 独占禁止法の審査期間を考えれば残された時間に余裕はない。綱川社長は「(17年度中の売却完了は)簡単ではないが、最善を尽くす」とし、日米韓連合以外にも台湾・鴻海精密工業、WDそれぞれとも交渉していることを明らかにした。

 実際、WDと和解し係争状態を解消するため、WDを革新機構が主導する陣営に引き入れるべきとの主張が経済産業省や東芝の一部にはある。

 しかし、ある東芝関係者は「(米アップルや米グーグルなど)メモリーの顧客が黙っていない」と、WDが連合に加わることは難しいとの考えを示す。

 WDは東芝メモリの一定水準以上の議決権を取得し経営に関与する考えを崩していない。両社が一緒になるとメモリーの市場シェアが上がってしまう。

 思い出されるのは東京エレクトロンと米アプライドマテリアルズの一件だ。両社は13年9月に経営統合計画を発表したが、15年4月に断念した。

 米国での独禁法審査にパスできる見込みがなくなったことが直接的な理由だが、裏には米インテルの存在があったとされる。業界関係者は「巨大半導体製造装置メーカーが誕生し、インテル主導の力関係が崩れることを恐れ猛反発した」と解説する。

 特にメモリー市場は現在、需要に供給が追いつかない状況にある。WDが関与する連合への東芝メモリ売却には顧客が反対の声を上げる可能性が高い。

 そうなれば独占禁止法の審査が厳しくなり、最悪、承認が下りない恐れがある。WDを連合に引き込むシナリオは難しい情勢だ。

 こうした状況下、売買契約にこぎ着けるためには、日米韓連合に一定の規模の訴訟リスクを飲み込んでもらうことが必要になっている。

 WDは東芝によるメモリー事業売却の差し止めを仲裁裁に申し立てており、最終的な判断が示されるのは1―2年先になる見込みだ。東芝は17年度中に売却手続きを完了させる計画であり、それまでに仲裁裁の結論は出ていない可能性が高い。

 東芝はWDと和解協議を続け、売却完了までには係争状態を解消する考えだが、それを実現できなければ連合にとってはリスクが残る。

 売買完了後に仲裁裁がWDの売却差し止めの主張を認める判断を下した場合、売買取引を白紙に戻す措置や、損害賠償金の支払いを求められる可能性があるからだ。

 この訴訟リスクを東芝と、日米韓連合でどう分担するかで、折り合わない状況が続いている。東芝関係者は「17年3月期の有報が提出できないことも交渉のネックになっている。“10日”を軟着陸させられれば次のステップにいける」と話していた。

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(文=後藤信之、渡辺光太)

【ファシリテーターのコメント】
東芝の17年4―6月期決算はメモリー事業が利益をけん引する構図が鮮明になった。それでもメモリー事業を手放すのかと問われ、綱川社長は「財務改善、上場維持のためには不可欠」と語った。
後藤 信之

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