卸・小売りの外資規制が変わる、ASEAN6億人の消費をつかむ日本企業はどこだ!

卸・小売りの外資規制が変わる、ASEAN6億人の消費をつかむ日本企業はどこだ!

 東南アジア諸国連合(ASEAN)の「工場」から「市場」への動きを先導するのが流通業だ。日本国内の消費が大きな伸びを見せない中、成長著しいASEANに熱い視線を送る企業は多い。

 「ベトナムが重要なパートナーであることに疑いはない」。岡田元也イオン社長は6月7日、ショッピングセンター(SC)「イオンレイクタウン」(埼玉県越谷市)を視察に訪れたベトナムのグエン・スアン・フック首相らを前に、力説した。

 この2日前、イオンはハノイ市人民委員会と、投資と事業推進に関する包括的覚書を締結した。イオンはSCの運営や金融事業などを通じてハノイ市の近代化に貢献し、ハノイ市はイオングループが円滑に事業展開できるよう協力する。

 ベトナムでは2009年に小売業の外資規制が撤廃されたが不透明な面もある。事業拡大には現地の行政機関との連携が不可欠だ。

 イオンは11年度以降「アジアシフト」を掲げ、ASEANへの展開を加速している。16年にはミャンマーに進出した。ベトナム1号店を出店したのは14年1月。

 西峠泰男イオンベトナム社長は「生鮮食品の売り上げが劇的に伸びている。(人々の買い物の場所が)ウェットマーケット(生鮮市場)から、近代的なスーパーマーケットにシフトしている」と語る。イオンベトナムは16年12月期には目標より1年早く、黒字化を達成した。

 ファッションへの関心も高まっている。進出当初は「衣料品は『高くて買えない』という声が圧倒的だった」(西峠社長)。国際通貨基金によると16年のベトナムの1人当たり国内総生産(GDP)は2164ドル(推計値、約24万円)。

 10年前の約2・7倍と急成長しているとはいえ、依然、高い水準とはいえない。このため商品単価を2割程度、割安にしたところ、売上高は約3割伸びた。

 ほかの小売り企業もASEANに商機を見る。セブン&アイ・ホールディングスはセブン―イレブンを6月にベトナムへ初出店した。ドンキホーテホールディングスは17年冬に、東南アジア1号店となる店舗をシンガポールに開く。

 ただ、ASEANで複数の国に進出している小売業の役員は「日本とは商慣行も消費者の感覚も違う。発想を切り替えなければダメ」と語る。“我慢”が実ったのが高島屋のシンガポール事業だ。

 93年にシンガポールに進出したが、約10年間は赤字だった。近隣国の富裕層を意識した品ぞろえなどの工夫で、17年2月期は高島屋の連結営業利益の16%をシンガポールの百貨店とSCが稼いだ。

 16年にはベトナムに進出し、18年春にはタイでの出店も予定している。木本茂社長は「シンガポールで稼いだ利益とノウハウを生かす」とASEAN市場の開拓に意欲を示す。

食品メーカ−、魅力も競争激しく

 少子高齢化の日本を尻目に、人口増加が続く東南アジア諸国連合(ASEAN)。国際連合の予測によると、2017年の6億人から30年には7億人に達し、50年には8億人弱まで増える見通しだ。拡大する“胃袋”を求めて、日本の食品メーカーもビジネスを積極化している。

 「タイを中心に健康(に配慮した)食品事業で売り上げを伸ばす」。サントリー食品インターナショナルの小郷三朗社長は、ASEAN戦略をこう語る。17年1―6月期連結決算は欧州事業の停滞を、ASEANと国内事業の好調でカバーした。

 現地では今までは糖分や着色料が多い飲料が好まれていたが、健康志向の高まりによって日本の低糖・無糖の茶系飲料が人気だ。ASEAN諸国が経済成長すれば、日本と同じようにさらに需要が増えるとみる。

 キリンホールディングス(HD)はミャンマーのビール子会社で業績を伸ばす。不採算のブラジル子会社を売却したこともあり、相対的にASEANの重要性が高まっている。

 17年1―6月期のビール販売数量は前年同期比16%増。「価格競争に多少巻き込まれたが適切な価格設定と増産効果で吸収し、市場首位ポジションをより盤石にしたい」(伊藤彰浩取締役常務執行役員)と意気込む。

 古くからASEANに進出している味の素は、タイ、インドネシア、ベトナム、フィリピンを成長の主力エンジンに位置づける。

 調味料の増産でタイは約24億円、インドネシアは同57億円、ベトナムでは同23億円を年内にそれぞれ、設備投資する予定だ。タイで80%など、各国でシェア首位を保っていることが強気の設備投資計画を支えている。

 味の素はインドネシアで「マサコ」と「サジク」、タイで「ロッディー」など現地料理に合わせた風味調味料を開発・販売。「国ごとに、特徴のある調味料で売り上げを伸ばす。ブランド力と商品開発力の強みをフルに生かす」(西井孝明社長)と、さらなる市場深耕に意欲をみせる。

 一方で、伸び悩む企業もある。サッポロHDはベトナムビール事業の黒字化が課題。販促費がかさんでいることが一因だ。「コスト改革を徹底し、売上高が多少減っても利益が着実に出せる体質改善を進める」(征矢真一取締役)とする。

 食品メーカーにとって、人口増や若年比率の高さなどがASEAN市場の大きな魅力だ。ただ、日本と違う食生活や味の好み、低価格競争、欧米の大手企業や中国をはじめとする新興国企業との競争は日本市場に比べて遙かに厳しい。8億人の“胃袋”をつかむために、日本企業は一段の努力が迫られる。
(文=江上佑美子、大城麻木乃、嶋田歩)

【ファシリテーターのコメント】
 1967年に発足した東南アジア諸国連合(ASEAN)が8日で創設50年を迎えた。日本企業は70年代からASEANに工場進出し、85年のプラザ合意による円高進行でこの流れが一気に加速した。およそ40年の交流から、ASEANの企業の一員との認識を日本とASEAN双方とも抱く。その関係は今後、ますます深くなりそうだ。15年に関税撤廃などで単一市場を目指すASEAN経済共同体(AEC)が発足し、実際に日本企業が「ASEAN企業」として活動の領域を広げる機会が到来した。
 ASEAN各国はこれまで家族経営の小規模店舗などを保護するため、卸・小売り業に外資の参入規制を設けてきた。しかしAECではASEAN企業であれば、これまで外資は過半出資ができない国でも、70%の出資を認める方向で調整中だ。ASEAN企業の定義は、ASEANで活動する日系企業も含むと解釈されている。例えば、日本企業がタイへ投資する場合、日本の親会社からだと過半出資はできないが、シンガポール法人からだと70%まで出資できる見込みだ。実際にはまだ国内法で規制を設けてほとんど運用されていないが、近い将来は「この仕組みを利用する日本企業が出てくる」(財界幹部)と予想される。
(日刊工業新聞経済部・大城麻木乃)
日刊工業新聞 記者

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