ブロックチェーン活用で賃貸物件契約が変わる

ブロックチェーン活用で賃貸物件契約が変わる

 積水ハウスとKDDI、日立製作所は19日、安全性の高いブロックチェーン(分散型台帳)技術を活用し、不動産賃貸物件の内覧から入居までの各手続きで利便性を向上させる、共同実証を4月に始めると発表した。各サービスを提供する企業ごとに必要な本人確認の簡略化を狙う。

 積水ハウスグループの不動産賃貸の入居予定者の本人確認情報とKDDIの本人確認情報とを、本人の同意を得てブロックチェーンで連携する。同情報を相互補完させ、内覧の申し込みや契約手続き、固定通信、電気、ガスなど住宅に関わる契約手続きのワンストッサービスを検証する。検証の成果をもとに金融機関や自治体などの参加企業を募り、実用化を目指していく。
日刊工業新聞2019年3月20日

将来はホテルのように!? 出典:ニュースイッチオリジナル2018年6月18日配信記事
 2020年にはホテルのオンライン予約のように、スマートフォンアプリで賃貸住宅の契約を結べるようになるかもしれない−。そのカギを握るのは、仮想通貨に用いられるブロックチェーン(BC)技術だ。

 積水ハウスは匿名化された顧客の情報や賃貸物件の情報をBC上に蓄積し、オンラインで賃貸物件の申し込みから契約までを完結できるシステムの構築に乗り出した。賃貸契約を簡素化するこのシステムは、賃貸住宅の流通や賃貸事業者のあり方そのものを変える可能性がある。

ITを活用した新たな収益源
 「ITを活用した新規事業を生み出せないか」−。積水ハウスIT業務部の上田和巳部長がそんな思いを抱えて、ビットフライヤー(東京都港区)と情報交換を繰り返していたのは16年秋のこと。積水ハウスにとって「中核は住宅事業」という位置付けは今後も変わらない。ただ、人口減少などを見据えれば、住宅市場は大きな成長が見込みにくいのも事実だ。そこで同社は、20年以降も成長し続けるための新たな収益源を求めていた。

 ビットフライヤーは仮想通貨の取引所を運営するベンチャー企業だ。積水ハウスにとって、当初は多様なITベンチャーと意見交換する場にいた1社だった。その中で「ビットフライヤーにBC技術の内容などを聞き、賃貸契約に利用できる可能性を感じた」(上田部長)という。

 賃貸住宅は契約手続きが煩雑だ。例えば、入居の審査には申込書のほか、身分証明書や収入証明書などが求められるケースもあり、審査に時間を要する。BCを活用したシステムはこうした部分を簡素化でき、顧客の利益につながると上田部長は考えた。

 BCを活用した情報管理システムでは第三者が改ざんできないBCの特性を生かし、BC上に匿名化された顧客情報や物件情報を蓄積する。顧客情報としては過去の賃料の支払い履歴などが残り、個人の信用情報として利用できる。賃貸物件の管理会社などが入居希望者の依頼を受けて、その情報を審査に使うことで迅速なオンライン契約が可能になる。

 上田部長は「2020年には、店頭にいかず手元のアプリで申し込みから契約までできる体制を構築したい。ホテルの予約のようにオンラインで契約できる仕組みを目指す。契約が簡素化されれば物件の短期貸しなどにも柔軟に対応でき、賃貸市場の流動性が高まる」と力を込める。

 また、物件の内見希望者向けにはVR(仮想現実)を活用してオンラインで確認できるシステムのほか、スマホで鍵の開け閉めができるスマートロックを使い、希望者が自由に実物を内見できる仕組みも整備する考えだ。こうした仕組みとBCを活用した情報システムを組み合わせて申し込みから内見、契約までの流れを円滑にする。

賃貸事業者の仕事はどうあるべきか
 積水ハウスは傘下で賃貸事業を手がける積和不動産(東京都渋谷区)においてシステムの運用を始める考えだが、他の不動産業者にもシステムへの参加を促す。コンソーシアムを構築する計画で、18年度中にも参加の働きかけを始める。ただ、このシステムには反発も予想される。オンラインで物件の検索から契約までが完結すると、賃貸事業者による物件の案内や提案といった仕事がなくなるからだ。

 このため、積水ハウスがシステムへの参加を他の不動産業者に促すには、導入の利点や必要性を明確に示す必要がありそうだ。積和不動産としては契約業務が効率化される分、入居後の管理サービスなどで賃貸事業の価値を高めていくようだ。

 こうした中、ある仲介大手の中堅幹部は「各種の『手続き』がオンラインで完結するのは良いが、『契約判断』においては仲介会社が介在して説明を尽くし、借り主などに納得してもらう仕事は大事だ」と力を込める。特に「重要事項説明(重説)」の重要性を指摘する。重説は宅建業法に基づき宅建取引士が契約前に借り主などに物件の情報や契約内容を書面にして説明する行為。重説によって契約内容をしっかり理解、納得してもらうことで、契約後のトラブルなどを防ぐ重要な仕組みだ。

 ただ、仮に借り主が物件を調べたり、内見したりする際に仲介会社の介在を望まず、仲介会社の仕事が「重説」だけになった場合、契約成立時に今までと同じ額の仲介手数料を借り主から徴収できるだろうか。野村総合研究所の谷山智彦上級研究員は「(オンラインで申し込みから契約までの一連の流れが実現すると)仲介会社の存在が必要なのかという議論になり得る。人が介在する意味を示さなくてはいけない」と指摘する。

 国土交通省は17年10月、賃貸住宅の契約における重説について、これまでの対面の原則を改め、テレビ会議システムなどによるオンラインでの実施を可能にした。17年度末までに8000件以上が実施されている。国交省は「現時点で消費者トラブルは報告されていない。さらに多くの事業者がオンライン重説を実施できるように支援していく」と力を込める。重説も情報通信技術(ICT)による効率化の流れの中にあるというわけだ。

 ICTによって多様な業務が効率化する中で、賃貸事業者の役割は何か。物件や入居者の管理業務に特化すべきか、ウェブサイトなどには載っていない地域や市況の情報を提供するなど、付加価値の高い接客を目指すべきか。その戦略が問われることになりそうだ。

【ファシリテーターのコメント】
以前取材させていただいた「賃貸物件×ブロックチェーン」の動きが本格化し始めました。テクノロジーの活用により、賃貸事業者のありようがどう変わるか気になります。
葭本 隆太


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