CCCグループが新設「月額制で稼ぐ」家電店舗の勝算

CCCグループが新設「月額制で稼ぐ」家電店舗の勝算

 来店客に家電商品の説明を尽くしても、最後はより安価なネット通販で買ってしまう。自分の価値は一体どこにあるのか―。蔦屋家電エンタープライズ(東京都世田谷区)商品企画部に所属する木崎大佑蔦屋家電+プロデューサーは、家電量販店の販売員だった10年ほど前、強い焦燥感を抱いていた。メーカーから製品を仕入れて販売する量販店のビジネスモデルに限界を感じ、危機感を募らせた。一方、それは接客の価値を最大化する新たなビジネスモデルを模索する出発点でもあった。

 蔦屋家電エンタープライズは4月上旬、東京・二子玉川の家電店「二子玉川・蔦屋家電」の一角に次世代ショールーム型店舗と銘打った「蔦屋家電+(プラス)」を開設した。商品化前を含む最新の製品を展示して来店客のマーケティングデータをメーカに提供し、その対価をもらい受ける。製品は仕入れず、データ取得が可能なスペースを月額制で貸すイメージだ。家電店の「サブスクリプション」といえるこのビジネスモデルは、木崎プロデューサーが販売員時代に抱いた危機感を解消するための答えだ。

『とがった』製品を並べる
 蔦屋家電+では現在、料理を彩る映像を表面に映し出せるお皿や1枚焼きのブレッドオーブンなど約30点の商品が並ぶ。国内電機メーカー大手や海外メーカー、ベンチャーの最新製品などを展示する。発売前やクラウドファンディングを実施中の製品もある。木崎プロデューサーは「面白い技術など『とがった』特徴を持つ製品を揃えた」と説明する。展示した製品の購入希望者に対しては販売の手続きをとるが、それ自体は収益機会ではないため、大きな売り上げを見込みにくいニッチな市場を狙った個性的な製品も並べられる。蔦屋家電では「美術・博物・万博」を品揃えのコンセプトにこれまでも個性的な製品を扱ってきたが、蔦屋家電+ではその特徴をより際立たせられるというわけだ。


 収益源となるマーケティングデータは、接客と人工知能(AI)を活用した画像認識システムで取得する。製品ごとに関心を持った来店者の属性や関心度合いなどのデータを蓄積する。具体的には店内に設置したカメラの画像を即座に性別や年代など属性の推定データに置き換え、滞在時間も取得する。カメラ画像は即座に削除し、個人情報にならない形で蓄積する。接客による会話で得たデータもスタッフが随時更新。出店企業はインターネット上の管理画面でこれらのデータをいつでも確認できる。

本当の勝負はこれから
 こうした店舗作りが動き出したのは2018年春。木崎プロデューサーがカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)に転職し、二子玉川・蔦屋家電の立ち上げに携わってから約3年が経過していた。蔦屋家電エンタープライズの社員同士が企画を持ち寄る定期合宿で、既に構想を固めていたビジネスモデルを提案した。

 この提案には賛同者が多く、実現までは早かった。企画の実現に向けて社内調整に奔走した篠崎友一取締役は「(ネット通販に顧客を奪われている家電小売業界の苦境などを踏まえて)絶対に必要な取り組みだと確信した」と当時を振り返る。メーカーに出店を提案した際も反応は良く、4月の出店枠はオープンの1ヶ月以上前にすべて埋まった。すでに5―6月の出店枠も半分以上が埋まっているという。

 ただ、本当の勝負はこれからだ。出店企業に対し、価値あるデータを提供しなくてはならない。逆にそれを達成すれば、出店企業の需要増加につながる。今はまだ蔦屋家電全体の1%に満たない蔦屋家電+のスペース拡大も見込める。

 木崎プロデューサーは「実際の製品に触れられること、そしてその時の消費者の声を取得することはネットでは決してできない。リアル店舗には大きな価値がある」と信じている。その価値をマーケティングデータの取得という形で顕在化できるかが新型店舗の成否を分ける。
(文=葭本隆太)


連載・店舗進化論を始めます
 ネット通販で何でも買える時代になりました。価格競争では劣勢になりやすいリアル店舗は、今の時代を生き抜くために新たな価値が求められています。本連載では4つの事例について新しい店舗の形と、その進化の道を選んだ背景を探ります。

【01】CCCグループが新設「月額制で稼ぐ」家電店の勝算(2019年4月23日配信)
【02】創業40年超のデザイン会社提案“世界最強坪効率”店舗の実力(2019年4月24日配信)
【03】定額制コーヒー飲み放題、赤字でも続ける店舗の舞台裏(2019年4月25日配信)
【04】健康意識に訴える次世代型メガネ店舗は業界の課題を打ち破るか(2019年4月26日配信)

【ファシリテーターのコメント】
CCCとしては久しぶりの新型店舗の開設だそうです。ロゴもユニフォームも作る力の入れよう。「大きなものを背負っている」と話す木崎プロデューサーがどのような成果を出すか注目されます。
葭本 隆太


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