#2 ケーキ屋さんがデジタル広告を始めるなら【Instagram広告編】

#2 ケーキ屋さんがデジタル広告を始めるなら【Instagram広告編】

 今回から5000円デジタル広告の具体的な運営ノウハウを紹介していきます。今回はあなたが港区にケーキ屋さんをオープンしたら、という想定で書きますが、もちろん居酒屋さんでもちょっとやり方を変えれば通用しますし、いろんなお店で応用できると思います。

 ケーキ屋さんといってもいろいろあるでしょうが、ここでは主に30代の女性を中心によく売れるケーキを作っている店、と仮定します。その場合、使用するメディアはインスタグラム(Instagram)がいいでしょうね。SNSはFacebook、Instagram、Twitter、LINE、TikTokなどなどさまざまなものがありますが、活用している年齢層や性別が微妙に異なります。Instagramのユーザーは20代〜40代が中心、6割が女性です。元々は9割が女性のメディアで、ただ登録しているのではなく頻繁に使用しているのも女性の方が多いでしょうから、今回の想定ではInstagramが最も広告効果が高いと思われます。

見込み客へのアプローチの考え方
 広告に携わる僕たちは見込み客にアプローチするためのメディアを3つに分けて考えます。Owned、Paid、Earnedと呼ぶのですが、Ownedとは「自前」ってことです。Paidがお金を払ういわゆる「広告」。Earnedはメディアの方からニュースにしてくれる「記事」。これらの中で自分でコントロールしにくいのがEarnedです。もしあなたがすごく美味しいケーキを開発したとして、TV局が即取材に来てくれるでしょうか?記事にする側も、いちいちその程度のことを採り上げていてはキリがないですよね。でも、あなたのケーキ目当てで毎日100人の行列ができるようになったら来てくれるかもしれません。でもでも、10人程度ではどうでしょう。このように、「記事」というものはメディア側がニュース価値有り無しを判断しますので、コントロールしにくいわけです。なので、まずはOwnedとPaidから考えていくことになるわけです。

 今、メディアを3つに分けて考えると言いましたが、これはあくまで考え方です。どのメディアがどれ、ということではなく、Instagramでも3通りの使い方ができます。もしユーザーがあなたのケーキが素晴らしいと拡散してくれたらそれはEarnedになったということです。ちょっと違う言い方をすれば、InstagramをOwnedとPaidとして使っていくことで、Earnedを増やしていこうという流れができればしめたものです。

積極的に「露出」しましょう
 InstagramなどのSNSを活用したアピールの仕方については、いろんな書籍やWEBサイトで紹介されていると思いますが、それらはほとんどOwnedです。そのやり方を簡単にお伝えしますと、まず自分のお店のアカウントを作ります。そして、そこから「こんな新作ケーキできました」という投稿をしていきます。その投稿に「#ケーキ」「#港区高輪台」といったハッシュタグを添えるわけです(ちなみにハッシュタグの数は30個以内ですが、あまりたくさん付けすぎると悪質とみなされアカウント凍結されたりするのでご注意を)。そうするとInstagram内でケーキを検索した人にその投稿が見えるかもしれない、そしてその投稿を気に入った人が買いに来てくれるかもしれないし、お店アカウントのフォロワーになってくれるかもしれない、というものです。最近はSNS内での検索数がGoogleの検索数に匹敵するほど伸びていますので、Paidのデジタル広告をやるにせよやらないにせよ、最低限このぐらいはやっておくべきと言えましょう。

 ただしOwnedは、いわば「待ち構える」やり方です。たまたま検索する人にしかヒットしません。誕生日だとか何らかお祝い会があって今ケーキがほしくてお店を探した、などという人が投稿をたまたま読んでくれるのを待つしかないやり方です。もしあなたが、「新しいケーキ屋さんのオープンをご近所の女性に今すぐ知らせたい」と思うときに有効なやり方ではないのです。あるいは、ケーキそのものではなくてケーキ教室を開くことを知らせたい、ということならどうでしょう。それだとお客さんの都合をいくら待っていても投稿が読まれることはなさそうですよね。こういったことを伝えたいのであれば「待ち構える」ではなく、図々しくも見込み客層のSNSに「露出させる」必要があります。すなわちPaid。OwnedとPaidの組合せがいいのです。そして、この連載シリーズでは、他であまり語られない、そしてあまり個店レベルではやっていないPaidのやり方を説明しようということです。

では、おすすめのやり方をご紹介
 Instagramで広告を出すにはまずアカウントを「ビジネスアカウント」にする必要があります。これはすぐできます。そして「ビジネスマネージャー」から広告のさまざまな設定をしていきます。Instagramはもともと独立したSNSでしたが、今はFacebookグループの傘下にあり、データ連係をしています。これは広告発信側からすると両方のデータを活用できますからメリットの大きい話です。そういう背景もあり、Instagramで広告を出すには、Facebook画面の設定からFacebookページとInstagramのアカウントをリンクさせ、メニューから「Instagram」を選び、ユーザー名とパスワードを打ち込みます。これで準備完了です。ちなみにInstagramアカウントがなくてもFacebookアカウントとFacebookページがあればInstagramに広告を配信することはできます。ただその場合、フォロワーが付かなくなってしまいます。

 支払い方法はいろいろありますが、まずはクレジットカードがいいでしょう。ただ、カードの与信枠を超えるとアカウント凍結になって復活させるのはいろいろヤヤコシイので注意を。

より低予算で多くの人に露出したいのなら「リーチ」を選択
 Instagram(Facebookも)広告は、「キャンペーン」「広告セット」「広告」の3つの階層で成り立っています。

 最初に「キャンペーン」の設定ですが、ケーキ屋さんの場合は「リーチ」を選ぶといいんじゃないでしょうか。より低予算で多くの人に広告を届け、お店のアカウントを見に来てもらえる設定ということです。もし「フォロワーの数を増やしたい」ということであれば「エンゲージメント」にしましょう。

 ここでちょっといわゆるTVや新聞などとデジタル広告との違いについて説明します。TVや新聞、雑誌、交通などのいわゆるマス広告は「予約型」と言われ、最初に広告を露出したい枠を買い付けます。しかし、WEBなどのデジタル広告はリアルタイムで入札が行われるのです。たとえば港区に住む30代女性に広告を見せたい会社はいくつもありますが、こういう人にはここまでお金を出してもいいかな…こういう人にはここまでしか出せないかな…ということを考えながら広告枠の奪い合いをしているわけです。もしその上限が高すぎると、少数の人に1日で見せ切って終わり、ということになりかねず、上限が低すぎると、いつまで経っても誰にも見せないまま、ということになりかねません。どううまくバランスを取るか、なんですが、広告を出したい人の目的によって「私どもでそのへんうまくやらせていただきますよ」、というのがこの設定なのです。広告を出すのに慣れてきて、ちょっと違った出し方をしたいと思うようになったら、他の設定がどういう意味を持つのか調べてみてください。

広告を出す地域と見せたい人を設定
 次に「広告セット」。ここけっこう大事です。ここの決め方で具体的にどれだけの予算でどれだけの人に広告を見せられるかが決まるからです。

 ケーキ屋さんの場合は、
 ・お店からの半径1km以内に「住んでいる人」で
 (1kmが最小サイズですが場所によって異なることがあります)
 ・女性で
 ・30代
に配信するという設定でいいのではないでしょうか。

 もしも「結婚記念日に奥さんを喜ばせませんか?」といった男性向けの広告を出したいのなら男性に設定すればいいし、もっと若い人向けのお店なら20代向けに設定しましょう。

 ちなみに、Instagram上では「住んでいる人」と表示されますが、これは必ずしも正しくない気がします。プロフィールの住所に加え、頻繁にその地域にいる人という位置データからFacebookが「住んでいる」と判断した人、ということですが、そこで働いている人も多く含まれているはずではと。いずれにせよ両方ともケーキ屋さんのターゲットになり得るのでOKですね。

 ここで一つ注意ですが、米国で広告を性別で出し分けるのは差別に当たる、といったクレームを受け、Facebookはターゲットの分け方を見直すと言明しました。なので、今後性別などによって出し分けることができなくなる流れになっています。デジタル広告はルールが変わりがちなので、「じゃあこうしよう」「じゃあこうしよう」とこちらの戦い方を常に変えていく必要があると思っていてください。

いくらでだいたい何人に見られる?
 そして「オーディエンスサイズ」を決めましょう。広告を受け取る人の数ですね。これはInstagramがこのぐらいの人数だと効率よく広告が届くんじゃないですか? といった幅を教えてくれます。

 仮に3000人としてみます。これが効率よく広告が届く最低レベルだと思います(地域によって異なります)。シミュレーションしたところ、「リーチ」「トラフィック」ですと1人あたりのリーチ単価(広告費)は約1.5円。都心であれば5000円で3000人以上に広告を見せることができるはずです。もしフォロワーが獲得できれば、アカウントからの投稿を見てもらえるようになります。「いいね!してくれた人を除く」という設定をすることで、その人たちには次から広告を配信しなくなります。デバイスは「モバイルのみ」でいいでしょう。プラットフォームはInstagramの「Stories」がコスパいいです。

  次に予算と掲載期間を決めます。予算は「通算予算」と「1日の予算」のどちらかを選びます。「通算予算」は1ヶ月最低15000円から、「1日の予算」は1日最低500円からです。通算予算でも広告配信されなかった分は請求されませんので、「入札設定」で1日あたりのボリュームに制限をかけることで1ヶ月5000円の配信にすることが可能です。また、1日500円で配信期間を10日間となるよう設定すれば5000円で1ヶ月のうち10日間だけ配信するということになります。

広告表現のポイントは「ターゲットが望む姿を見せてあげる」
 最後に、露出する広告表現です。カルーセル、動画、スライドショーなどいろんな種類がありますが、「1件の画像」から始めるのがいいでしょう。表現はもうあなたのセンスに委ねるしかありません。が、文章はやはり「近所」のお店からの広告とわかることが広告の受け取り手にとって珍しく、訴求力を持つように思います。「あ、うちの近所にこんな店が」「あ、あの店がこんなセールを」といったことがわかるものがいいでしょう。

 Instagramなので写真のクオリティは大事です。ただ、だからといって撮影機材にこだわることはありません。最近はスマホでもじゅうぶん美しい写真が撮れます。Instagram、Facebookは画像や文章のサイズに制約があります。その制約内で表現を作らないと配信の許可が得られません。言うまでもないことですが、公序良俗に反するような表現も配信してくれません。明るく楽しく見る人の生活を豊かにしてくれそうな広告を配信してください。

 さて、昨日公開した#1で「自分流のデジタル広告テク」という言い方をしました(#1のリンクは下記にあります)。それは、「ターゲットが望む姿を見せてあげる」ということ。つまりケーキ屋さんといっても、安いケーキ屋さんを求める人もいれば、質の高いケーキ屋さんを求める人もいれば、楽しいケーキ屋さんを求める人もいれば、いろいろですよね。そして、あなたのケーキ屋さんは、「うちは安さで勝負です!」と一言では表現できないはず。多面性があるはずです。

 InstagramやFacebookはどういうものに興味があるか、でターゲティングができます。単に30代女性、とするのではなくて、それに加え、質の高いものを求めそうな人には質の高そうに見える表現を見せてあげ、楽しさを求めそうな人には楽しそうなお店に見える表現を見せてあげるのがよいということです。全くの嘘では結果的に失望させてしまうので、お店の中のそういう面を探して見せてあげるということ。いわば、白いお皿があるとして、タバコを吸う人には灰皿のように見せ、刺身が好きな人には刺身皿のように見せてあげれば買ってもらえる理屈です。

 このやり方、非常に大きな成果が出ます。今月はこういう人にこういう表現を見せよう、今月はこういう人にこういう表現を見せよう、とお店の見せ方と見せる相手を切り替えていくことで、新しいお客さんをさらにうまく捉えていけると思います。明日は、このあたりの考え方についていったん掘り下げてみようと思います。

連載一覧
#1 デジタル広告、あなたもやらなきゃもったいない
5月20日(月)、朝6時公開
#2 ケーキ屋さんがデジタル広告を始めるなら【Instagram広告編】
5月21日(火)、朝6時公開
#3 昨対150%を達成する、小霜流デジタル広告のやり方
5月22日(水)、朝6時公開
#4 士業がデジタル広告で仕事を見つけるには【リスティング/アドネットワーク編】
5月23日(木)、朝6時公開
#5 町工場がデジタル広告で元請けを探すなら【Facebook広告応用編】
5月24日(金)、朝6時公開


プロフィール
こしも・かずや クリエイティブディレクター、コピーライター。86年、東京大学法学部卒業、同年コピーライターとして博報堂入社。98年退社。現在、ノープロブレム合同会社、株式会社小霜オフィス}]代表。「プレイステーション」や「一番搾り」、「ドラゴンクエストX」、「VAIO」など多くの広告に携わる。マス・Web広告統合の先駆を務める。広告賞受賞多数。著書に[https://www.amazon.co.jp/gp/product/4883354059/ref=as_li_tl?ie=UTF8&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4883354059&linkCode=as2&tag=koshimo-22&linkId=8133a8c33fbc1b6182af87637928cd0d{「急いでデジタルクリエイティブの本当の話をします。」}][https://www.amazon.co.jp/%E3%81%93%E3%81%93%E3%82%89%E3%81%A7%E5%BA%83%E5%91%8A%E3%82%B3%E3%83%94%E3%83%BC%E3%81%AE%E6%9C%AC%E5%BD%93%E3%81%AE%E8%A9%B1%E3%82%92%E3%81%97%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82-%E5%B0%8F%E9%9C%9C%E5%92%8C%E4%B9%9F/dp/4883353168{「ここらで広告コピーの本当の話をします。」などがある。

担当編集・平川透、グラフィック制作・影山明日香

【ファシリテーターのコメント】
明日は、具体的なケースから一旦離れて、広告を出す上で重要な考え方をご紹介します。どうすれば広告を見た人に「自分のことだ!」と思ってもらえるか?
平川 透


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