24時間無人営業の古本屋「BOOK ROAD」、お客さんが後を絶たない理由

24時間無人営業の古本屋「BOOK ROAD」、お客さんが後を絶たない理由

 東京都武蔵野市・三鷹駅から徒歩15分の商店街の一角にある、無人古本屋「BOOK ROAD」。ガラスの扉を開くと広がるたった2坪の空間には、本と木箱と決済用のガチャガチャが置かれている。まるでおもちゃ箱のようなこの場所には、看板もなければ店員の姿も見当たらない。2013年春に開店して以来6年、昔ながらの商店街で24時間営業の無人店舗は存在感があり、いまも遠方からも訪れるお客さんが後を絶たないという。この店舗はどのようにしてできたのか、店主の中西 功(なかにし・こう)さんに話を聞いた。


無人の古本屋という実験
ー無人の本屋って珍しいですね。
 とにかく本が好きで、所蔵本が1000冊ほど溜まり、本棚がたわんできたところで、妻からなんとかするようにと言われたことがきっかけです。捨てることには抵抗があったため、もともと胸に秘めていた本屋をやりたいという欲が高まりました。とはいえ、当時は企業に勤めていたため、二束の草鞋を履きながら本屋を成立させる方法を考えたところ、人を雇うか人を雇わないかという二つの選択肢が生まれ、地元にあった野菜の無人販売所をヒントに無人の古本屋という形に辿り着きました。

ーやると決めたとき、周りの反応はどうでしたか。
 「無人で店が成立するのか」「盗まれるだけだろう」など、妻や両親、友人たちからたくさんの反対があったものの、無人で店が成立したら面白いだろうなという興味が勝り、行動に移していきました。世の中にないものは、みんなが見えていない世界なので、批判的な意見が出るのは仕方がないです。 “とにかくやる”ということを前提に、起きるリスクについての聞き取りを行い、それに適した潰し込みを徹底しました。他の古本屋の店主に、経営上のストレスは何かを聞いたところ、「お客さんがなにも買わずに出て行ったとき」という話があり、ストレスフリーという意味でも、無人の良さを確信しました。

ー起きるリスクは、どう考慮しましたか。
 「盗まれるのではないか」と懸念されましたが、防犯性については、透明性が担保され人の目が行き届く場所にできるよう意識しました。歩いている人から見える範囲で、店内に影のできない作りにしたかったため、2坪の狭さでガラス扉にしたことは効果的でした。

ーコスト面で意識したことはありますか。
 内装は簡単に手に入る安価なもので作り、施工は自分で行いました。また、空調機はつけていないので、光熱費は月間450円に収めています。収支については、若干の波はあるものの、比較的安定しています。

ーはじめてみて、反響はどうでしたか。
 開店3日後にはブログやTwitterなどのSNSで拡散されていました。無人販売は面白がってくれるだろうとは思っていましたが、開店直後に売れていたため、反応の早さに驚きました。SNSは情報が回るのが速いため、店内に置いてある木箱の中に寄贈本が入っている様子などをSNSにアップしていき、お店の使い方を発信していきました。

店作りの工夫

ー手作り感あふれる店内ですね。
 案内板(上記写真)は、知人に依頼して作ってもらったものです。ガチャガチャのキャラクターや手書き文字の温かさで、無人販売の怪しさが緩和されたように思います。
 店内は簡単に手に入るもので作りたかったので、自分で壁にペンキを塗り、本棚を立て、本を並べ、ガチャガチャを設置しました。近所の人の意見を取り入れて本の陳列を変えてみたり、周りの人たちが改善点を提案してくれるほど。本のジャンル分けなどもせず、ある程度自由な作りにすることで管理するストレスを減らし、陳列が乱れたりイレギュラーなことが起きても「まあいいや」と許せるくらいの範囲で余裕を持たせています。

ーお店を始めるにあたり、特にどんな所にこだわりましたか。
 決済方法を工夫し、ガチャガチャを取り入れたことですね。回すと出てくるカプセルの中に袋を入れ、本を購入する際、盗んだのではなくちゃんと買ったということを、お客さんがしっかり証明できる要素として取り入れたのはよかったと思っています。
 また、店内には木箱を置きました。座って本を読んだり、自由に使ってもらえればと置いてみたところ、本をくれる人や手紙をくれる人、お土産のスダチを置いてくれる人まで現れ、今ではお客さんの気持ちを感じることができるコミュニケーションツールです。


ー本の寄贈や手紙などを通し、人の温かさを肌で感じることができるのですね。
 ある日頂いた手紙に、「世知辛い世の中、このお店が人の善意のもとに成り立っていることが、僕の心の棘を抜いてくれました。」と書いてあり、心に残っています。人の善意が形になる場所は意外と少ないですが、この場所は善意で形づくられたものになっている気がしています。


ールールに余裕がある分、みんなでお店を作るような楽しみ方がありますね。
 「ガチャガチャを使うために自販機で両替をしたけど、飲み物は要らないので、よければ飲んで下さい。」と飲み物を置いていってくれた人もいます。また、コスト面から空調機をつけていないのですが、夏場の店内の暑さを心配したお客さんがうちわを置いていってくれたこともあります。赤ちゃんが周りの人たちに助けられながら育つように、周りの人たちが気にしてくれて成り立っている店だなと、日々有難く感じています。
 また、お客さんが本棚を自由に使っているときもあり、同ジャンルの本がまとめて並べられ、ポップが書かれていたことも。年末や引越しシーズンには寄贈本が増えたり、無人の販売という作品として注目されて、美大生が訪れていたときには美術系のジャンルが増えたりと、地域性や人の流れを感じることができるのは、とても面白いです。

ー6年間ものあいだ店舗を運営し、感じることはなんですか。
 わずか2坪の本屋にもかかわらず、たくさんの人との繋がりができました。その経験を通し、取り組みをする対象の大小はあまり大きな問題ではないと思うようになりました。どんなに小さくとも、場さえあれば実現でき、取り組みを始めれば各人それぞれのコミュニティを形成していくものだと感じました。
 実際に、2坪のお店でもファンの方に支えられながら楽しく運営しています。同じように、お店とお客さんという2項対立ではない運営もあることを多くの人に知ってもらい、小商いをする人が増えるような活動をしていきたいと思っています。

新たな試み
ー今後、挑戦していきたいことは。
 東京都・吉祥寺に「×4ビル(バツヨンビル)」というブックマンションを2019年7月下旬にオープンします。ビルは4フロアで、地下1階:古本屋/1階:コーヒースタンド/2階:喫茶店/3階:イベントスペースとなる予定です。
 地下1階の古本屋は、本棚の間貸しをし、色々な人たちが経営する本屋を作ります。なにより「日本中に本屋を増やしたい」という思いがあり、一人が店を運営するのではなく、複数人で取り組むことができれば、賃料や日々の運営の負担も少なく店番も補い合うことができ、気軽に本屋を作ることができる。これをフォーマット化し、全国に広めていきたいと考えています。

ー新しいことをするときに、重要なことはなんでしょうか。
 「新規性」と「継続性」を心掛けています。なにか一つに特化し、誰もやっていないレベルで実行し続けることが大切。あとは好きなことを表現し続けていれば、ふっと話は降ってくる。そのまま、その道の専門家になってしまえばいいんです。好きならずっと熱量を保つことができるので、常に新しさをもって人に伝えることができると思っています。

■吉祥寺×4ビル(バツヨンビル)
クラウドファンディングで支援者を募集
「吉祥寺に「本屋をシェアする文化」の発信基地を作りたい。」
↓詳細は下記URLより
https://readyfor.jp/projects/x4

無人古本屋「BOOK ROAD」
東京都武蔵野市西久保2丁目14-6
mail:bookroad.mujin@gmail.com
Facebook:https://www.facebook.com/bookroad.mujin/
Twitter:https://twitter.com/bookroad_mujin

【+αの時代】
デジタルに溢れる世の中、変化の多い時代を前向きに生きるためには、心が躍るような新しいオアシスが必要。これまでの在り方とは一味違う、新しい価値(+α)のある場所を探ります。

【ファシリテーターのコメント】
無人の古本屋「BOOK ROAD」という場所が人を繋ぎ、また新しいものへのエネルギーとして連鎖していくことが、とても素敵です。街ですれ違う人の名前は分からないけれど、ひょんなことから存在を知り、繋がって、関係性ができていくという、人と人の出会いに似ているような、自然な流れのある場所だと感じました。
梶田 麻実


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