5Gでリアルタイムに伝送して撮影・番組制作「ソニーしかできない」

5Gでリアルタイムに伝送して撮影・番組制作「ソニーしかできない」

 11月4日、北海道南部の新冠(にいかっぷ)町。トレーニングコースを軽快に走る競走馬の様子をドローン(飛行ロボット)の8Kカメラがとらえていた。8K映像は第5世代通信(5G)網を介して即時伝送され、地上のモニターに表示された。

 シャープがKDDIや東京大学などと12日まで実施した5G実証試験の一コマだ。8Kライブ映像から競走馬の訓練風景や厩舎(きゅうしゃ)内の様子を確認し、調教・育成を支援する試みだ。馬の歩き方や毛並み、筋肉の付き方、骨格などを間近に感じられる8Kならではの高精細映像が臨場感を生み出した。

「ソニーだけ」
 電機業界で独り勝ち状態のソニーは5Gでも独自路線を行く。2018年からグループ全体の5Gタスクフォースを率いる石塚茂樹専務は「5Gはいろいろなオポチュニティー(機会)はあるものの、これといったアプリケーションがいまだに見つかっていない」と鋭く分析する。

 その黎明(れいめい)期に打ち出すのが撮影から制作、視聴・体験までを網羅した5Gソリューションだ。実際に19年から通信事業者や放送事業者などとPoC(概念実証)を開始。スポーツのライブ映像を5Gでリアルタイムに伝送して遠隔地で番組制作を行う。「これはたぶんソニーにしかできない」(石塚専務)と勝ち組の自信がみなぎる。

各社の模索
 ソニーやシャープと違ってBツーB(企業間)ビジネスに軸足を移した電機大手はローカル5Gに新たな商機を見いだす。工場やビルなど特定の地域と自営用途に限り、携帯電話事業者(キャリア)以外の事業者にも5Gの周波数が開放される。パナソニックや三菱電機、富士通、東芝、NECなどが制度利用に興味を示す“ホットスポット”だ。

 各社は高速、低遅延、多数同時接続という次世代通信の特徴を生かし、顧客の工場・ビルごとに最適化したIoT(モノのインターネット)システムを構築する事業モデルを思い描いているようだ。工場内に5G基地局を配置して製造設備などの現場データを即座に吸い上げて解析し、自動で最適制御を図るスマート工場がその理想形だ。

 ただ、参入の壁は意外と高そうだ。工場向けシステム構築を手がける電機大手の担当者は「ローカル5Gはすごくやりたいけど、キャリア側の既得権益でつぶされないかと心配だ。『そんなことはやらなくていい』『基地局の値段は高いよ』とよく言われる」と声を潜める。5Gという技術革新で広がる巨大市場を前に、主導権争いはもう始まっている。(編集委員・鈴木岳志)


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