なかなか進まない家事負担軽減を実現するためには、家電や家事代行などだけでなく、住まいの抜本的改革も必要かもしれない。
 住宅事業のポラスグループ(埼玉県越谷市)は、東京ガス都市生活研究所(都市研)の家事に関する調査結果や知見を活かし、家事の負担を減らす工夫を随所に凝らした住宅を設計した。さらに購入すると家事代行サービスがついてくるという。分譲が進む「育実(はぐくみ)の丘東大宮サウスブロック」(さいたま市見沼区)へと取材に向かった。

洗濯〜収納まで一直線

公開中のモデルハウスは2棟で、それぞれ「洗濯」と「キッチン」をテーマに設計された。ターゲットは共働き世帯だ。

モデルハウス2棟(左が洗濯、右が料理がテーマ)

「洗濯」がテーマの住宅でのポイントは2階にある。戸建てでは1階に浴室や洗濯機置き場があり、2階のバルコニーに干すために洗濯物を持っての移動が生じることが多い。
 今回設計した住宅では、浴室、洗面所、洗濯機(置き場)、がまとめて配置され、脱いだ服をその場で洗濯。すぐ隣には室内干しができる「スカイクリーンスペース」とバルコニーがある。
 日当たりと風通しが一番良い、いわば家の中でも最も良い場所が洗濯干しスペースになっていることが意外だが、「共働き世帯は平日の昼間は外出していて、休日も家族と1階のリビングで過ごすことが多いことを想定した」(都市研統括研究員の小泉貴子氏)という。都市研の調査では、室内干しをメーンにしている人が3割にのぼる。

スカイクリーンスペース
 スカイクリーンスペースには作業台も設置され、出し入れが面倒なアイロン台を置いたり、洗濯物を畳んだりすることができる。

「畳む」作業そものをやめてしまう工夫もある。スカイクリーンスペースの先はウォークスルークローゼットになっており、乾いた洗濯物をハンガーのままサッとしまえる。家族それぞれのスペースに分かれており、仕分けも簡単だ。

ウォークスルークローゼット(奥に見えるのはスカイクリーンスペース)

都市研の調査では、家事の中でも省力化ニーズが高いのが洗濯まわりという結果が出ている。洗濯は「干す」まででは気分が高揚し、そのあと「取り込む」「畳む」で気分が下がる。その動線を一本化することにこだわった結果、脱衣所〜洗濯機〜室内干し(バルコニー)〜収納の配置となった。
 「家事省力化には無駄な家事を『やめる』ことも重要」と小泉氏は強調する。「やめる」というと「サボっている」というマイナスイメージが付きまとうが、「無駄な動作を自然になくせる設計にすることで『時間を生み出す』というプラスに変えることを目指した」とポラス設計課の髙橋健太郎氏は話す。

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不在時の家事代行に安心を

「キッチン」をテーマにした住宅では、リビングダイニングに入ると中央に広々したキッチンスペースが配置されている。表面は木目調の素材になっており家具のように一体化。家族みんなで料理をしたり、ホームパーティーを開いたりと料理を楽しむ生活を提案する。

キッチンが中心の間取り
 また家事代行サービスの利用を日常化する工夫も施されている。間取りを「パブリックゾーン」「プライベートゾーン」に分け、各所の扉にナンバーロック付きドアノブを採用した。
 「家事代行サービスを頼む際にハードルの1つが『他人を家に入れることへの不安』です。ゾーン分けしロックをかけることで安心感を与え、家族の不在時でもサービスを利用するようになれば、より自由な時間を生むことができます」(小泉氏)。購入者はイオングループの家事代行サービス「カジタク」が6回分(1回2時間)利用できる。

2階のプライベートスペースへ続く扉には鍵がある

家事負担の軽減だけでなく、家事シェアの観点でも購入者に好評な設備が、玄関横につくられた「ホームステーション」だ。家族1人ひとり専用のロッカーに外出時に必要な荷物や上着などを収納することで、「リビングに持ち物が散らかる」という小さいけれど悩ましい問題を解決する。また子どもたちの片付け習慣化にもつながる。

玄関横のホームステーション

生み出した時間も家で

都市研では「調査により共働き世帯では妻側の時間意識がよりシビアになっていることが判明し、手助けできないだろうかと考えていた」と小泉氏は話す。ポラスも以前から子育て世帯をターゲットにした住宅は得意だったが、そこから発展して共働き世帯向けの住宅設計を考えており、都市研とニーズが一致。2018年にプロジェクトが開始し、2019年12月に住宅の販売を開始した。
 また、家事の時短だけでなく、その先の「生み出した時間を家族や自分のために使いたい」というニーズを満たす提案も重要視している。リビング学習を促進するスペースや、ホームパーティーを想定した間取りなどでメッセージ性を出した。

今回発売した全13棟のうち、7棟はすでに売約済みだ(2020年1月現在)。購入の決め手になった要素はさまざまだが、「家事負担軽減や子育てしやすい家について常に考えている会社の姿勢に共感したという声を聞いている」(髙橋氏)。
 近年、家のレイアウトや家具の配置などがある程度決められている設計が好まれる傾向にあると高橋氏は話す。人の動きや生活の流れをデザインすることで家事の負担が減り、暮らしが変化する。さらに都市研の調査では「余暇も家で過ごしたい」という人が増加。一層住宅のあり方が重要になってくるだろう。

【連載】変わりゆく?家事

「洗濯機はもう洗濯するだけじゃない!広がる機能・サービス」#1 ドラム式洗濯乾燥機
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 「なかなか普及しないロボット掃除機「2つのハードル」とは」#3 ロボット掃除機
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