チョコレートの原料であるカカオの産地に“消滅の危機”が忍び寄っている。原産地として有名なガーナでもカカオ農家1人当たりの1日の収入は0・4―0・45ドルに過ぎず、国連の持続可能な開発目標(SDGs)の貧困の定義である「1・25ドル未満」を大幅に下回る。カカオ栽培をやめる農家が増えると、チョコレート産業に“甘くない”未来が訪れる。貧困を断ち切ろうと日本の関連企業が動きだした。

チョコレート産業の持続可能性をテーマとしたシンポジウムが5日、都内で開かれ、食品メーカーや商社が取り組みを発表した。明治はマダガスカル産カカオの取引を始めようと2019年、現地のカカオでチョコを試作したが、味が安定しなかった。現地を訪ねた同社商品開発研究所の宮部昌子さんは「農家や収穫した季節によってカカオの品質が違った。品質改善を支援する」と方針を語った。

兼松と立花商店(大阪市中央区)は、ギニアでカカオの品質向上に欠かせない発酵を指導する。立花商店の生田渉取締役は「農家が発酵の仕方を知らず、価格が低くなっている」と指摘した。実際、現地では農家が思い思いに発酵しており、カカオの品質が悪くなっていた。

品質を理由に買いたたかれていると農家は収入が増えず、貧困から抜け出せない。カカオ栽培を諦めて他の仕事に就く農家が続出すると、日本の食品メーカーはカカオを調達できなくなる。江崎グリコグループ調達部の古谷欣也氏は「継続的に魅力あるカカオ産業にしないと、チョコレート産業がなくなる」と危機感を募らせる。

カカオ農園では児童労働も横行しており、子どもは教育の機会を奪われている。森永製菓はチョコレート1個が売れると1円をカカオ生産国の児童支援活動に寄付するキャンペーンを展開している。08年からの累計で2億円以上を寄付した。デロイトトーマツコンサルティングの羽生田慶介執行役員は、児童労働がない地域を第三者が認定する制度をガーナで始めると紹介した。さらに認定地域産カカオに関税をかけない貿易ルールを提案した。関税分の調達費が下がると食品メーカーも歓迎するはずで、「児童労働をしない農家がもうかる世界をつくりたい」(羽生田執行役員)と訴えた。

プラットフォーム設立

イベントで国際協力機構(JICA)は1月に設立した「開発途上国におけるサステイナブル・カカオ・プラットフォーム」を紹介した。ロッテや日本チョコレート・ココア協会などが参画し、ビジネスの力を活用したカカオ農家の課題解決を目指す。JICA産業開発・公共政策部の小林洋輔参事役は「コレクティブインパクトを作りたい」と聴講者に参加を呼びかけた。コレクティブインパクトとは、企業・NGOなどの立場を超えた連携によって社会に大きな貢献をする枠組みだ。

現状は企業が個別にJICAの支援やNGOの協力で課題解決に挑む。ただ、世界のカカオ生産量のうち日本の輸入量は1%に過ぎず、影響力は小さい。チョコレート産業の“おいしい”未来のため連携が欠かせない。