茨城製作所(茨城県日立市)は産業用モーターや発電機を製造する。第二次大戦後の復興を支え、日立製作所の協力会社として歩んできた歴史があり、本社兼工場の外観からは堅実さが漂う。

その社内に異色な部屋がある。水色の文字で「アースミルクプロジェクト」と書かれ、壁には水玉が描かれている。趣のある廊下とは雰囲気が違う室内に展示されているのが、小型水力発電機「Cappa(カッパ)+++」だ。農業用水のような小川の水流で発電できる。茨城大学との共同研究を経て2013年に開発を発表した。

そのカッパはネパールで稼働している。出力は最大でも450ワットなので、電子レンジも動かせない。それでも無電化の村では重宝する。学校の教室の照明や浄水器に使えるからだ。菊池伯夫社長は電力不足が日常的だったインドで生活した経験があり、小さな発電機でも現地のニーズを満たすと分かっていた。

【教育にも貢献】

カッパは大人2人で持ち運べるほど軽く、小川に架けた足場にぶら下げる感覚で設置するので、重機を使うような工事も不要だ。日本の常識からすると簡易すぎるが、逆に重厚な設備だと手間やコストがかかり、現地のエネルギー課題の解決に時間がかかりすぎる。

カッパは設置して終わりではない。発電した電気を利用する小学校の児童に充電式ランタン(携帯照明具)を配った。女児を通学させない親が、ランタンの充電目的で登校させるようになった。エネルギー以外にも教育やジェンダー平等にも貢献している。

モノづくりやビジネスの発想は、社会課題解決を志すスタートアップのようだ。43歳の菊池社長は英国で物理学を学び、祖父が創業した茨城製作所に09年に入社した。東日本大震災後、「技術集団として社会に貢献する責任がある」と、カッパの研究に打ち込んだ。

小型水力発電機「カッパ」と菊池社長

【社会問題解決】

地方の中小企業の殻を破り、新興国の社会課題解決ビジネスに打って出たことで海外メディアも報道するようになった。「中小企業でも学生が安心して入社してくれる」(菊池社長)と効果を語る。

カッパは国際協力機構(JICA)の事業などでネパールに7台を設置した。今後、資金調達の仕組みを整え、普及を加速する。また「社外の緩やかなネットワークも活用する」とし、プロジェクトごとに社外と連携したビジネスの展開も模索する。「社会問題解決型ビジネスは、地域経済の活性化にもつながる」と確信する。