新型コロナウイルスの感染拡大による外出自粛で消費動向が変化する中、ビール各社は「家飲み」需要の掘り起こしを図る。オンラインでの飲み会を主催し、家でのお酒の楽しみ方を提案するほか、宅配サービスを充実。緊急事態宣言による外出自粛要請で飲食店の多くが休業となり、外食や飲み会が減る中、さまざまなアプローチでお酒との接点を創り出すのが狙いだ。

アサヒビールはオンライン上でイベントに参加できる「いいかも!オンライン飲み ASAHI SUPER DRY VIRTUAL BAR」を4月25日からスタートした。初回はお笑いコンビの三四郎さんや、アイドルグループ、乃木坂46の秋元真夏さんが、約700人の参加者とオンラインでの飲み会を楽しんだ。

アサヒは外出自粛で在宅時間が増えるなどの環境変化に伴い、需要が高まるとみて、オンライン飲み会を企画。花田真志宣伝部担当副部長は「人との接触が減り、人と話したい、友達の顔が見たいという気持ちが芽生えると考えた」と企画の背景を明かす。

同社は5月末までに全4回開催する計画で、新たなお酒の楽しみ方を提案するため、家でもおいしくビールを飲むための注ぎ方講座や、若年層に人気のロックバンドのオンラインライブなどを開催する。

飲食店が展開するテークアウトの利用を促進する仕組みも取り入れ、厳しい事業環境に置かれる飲食店の支援にもつなげる。今後は「オンライン飲み会はビール需要の多様なシーンの中の一つ。情勢を見極めながら新たな提案をしていきたい」(同)としている。

キリンビールは会員制宅配サービス「キリンdrinks」を展開。4月は会員数が2月の2・5倍に増えるなど、外出自粛で買い物が制約される中、会員数を伸ばしている。これはクラフトビールのブルックリンブルワリーの商品を定期的に宅配するサービスで、2月からスタートした。

ブルックリンブルワリーでは、現在休業中のフラッグシップ店舗「B」(東京都中央区)のコンテンツをオンライン配信する「Broad Cast」を設立。店舗で披露する予定だったDJの音楽配信やインタビューを動画投稿サービス「ユーチューブ」などで順次公開する計画だ。

Bは文化とビールの融合により、新たなビール文化の創出を目指した店舗と位置付ける。休業中もオンラインで発信を続け、オンライン飲み会への参加につなげる流れを作りたい考えだ。

ブルックリンブルワリーはビールと文化の融合による新たなビール文化の醸成を目指す

サッポロビールはグルメアプリを運営するキッチハイクと共同で、新商品のビール「それが人生」の発表会を兼ねたオンライン飲み会を4月16日に開催した。発表会をライブ配信し、イベントの参加者同士で乾杯できるオンライン飲み会をセットにした企画だ。

サッポロとキッチンハイクは共同サービス「ホッピンガレージ」を18年から展開しており、一般消費者から募ったアイデアを基にオリジナルの共同商品を作り、小ロットで販売してきた。すでに3商品を発売し、それが人生は第4弾の商品だ。

当初は会場に参加者を集める通常のイベントを予定していたが、外出自粛を受け、オンラインイベントに切り替えた。それでも約100人が商品を事前購入して参加する盛況ぶりだった。サッポロビール新規事業開拓室の土代裕也マネージャーは「参加者から次は会って話したいという声もあり、オンライン、オフラインを組み合わせて、より良いタッチポイントを作っていきたい」と話す。

サッポロは4月25日にもビール「ソラチ1984」を飲みながら、オンラインでワークショップなどを展開する女性限定のオンラインイベント「ビール女子会」を開催し、オンラインイベントに力を入れている。

サッポロはオフライン、オンラインを組み合わせ、消費者とのタッチポイントを増やす

新型コロナウイルス感染拡大の収束が見通せないことから、外出自粛は長期化が予想される。商品開発には企画から準備に時間を要すため、各社とも緊急事態宣言下の状況を踏まえた商品施策はあまりないのが現状だ。だが今後は家庭で飲酒の機会が増えることを念頭に、家庭向けが中心の缶商品も強化を図る必要がありそうだ。

飲食店の多くが休業し、閑散とする東京・新橋
(取材・高屋優理)