経済産業省は電気自動車(EV)や燃料電池車(FCV)など電動車の普及を促す動きを進めている。官民連携の取り組みで効果的な活用法を議論する一方、普及には市場流通性向上や性能、安全性などを担保する明確な基準づくりが課題となる。低炭素社会やエネルギーの分散活用などの実現に向けた観点から、具体的にどんな道筋を描いていくのか。現状における取り組みを追った。(高田圭介)

経産省が電動車普及の足がかりとして2019年7月に発足した「電動車活用社会推進協議会」には現在、企業や自治体など143社・団体が参加。自動車メーカーに限らず、電力、物流、小売りなど業種を超えた枠組みづくりへ動いている。

二酸化炭素(CO2)排出削減やエネルギー使用量低減など環境負荷を抑える上で電動車の導入が提唱され、政府も導入補助や税制上の優遇措置を講じているが普及への動きは鈍い。日本自動車工業会によると、18年の国内における次世代自動車販売台数は約167万台と全体の38・3%を占めるが、ハイブリッド車(HV)を除くと約22万台に留まる。

協議会は普及への道筋を体系的に展開するため、二つのワーキンググループ(WG)を軸に協議を重ねている。特に電動車の肝となる車載電池に焦点を当て、クルマ本来の使い方に留まらない形で普及促進を狙う。

電動車利用促進WGはエネルギーインフラとしての電動車の役割から普及促進を図る。19年の台風19号で大規模停電が発生した際、被災地に電動車を派遣して避難所での携帯充電や照明用電源としての利用、老人ホームなどでの給電を実施した。一方で電動車から給電可能なことが認識されていない課題も浮かんだ。運用する際の事例共有やマニュアル作成など、認知度向上で車両価値以外の部分から自治体や企業に導入を促す。

車載用電池リユースWGは、車載電池の「見える化」を通じて性能や安全性の担保に主眼を置く。現状では充放電の繰り返しで劣化する車載電池にどれだけの性能が残っているか理解するための明確なルールは存在しない。走行距離や電池容量などユーザーが目に見える形を構築するため、22年度以降に生産開始する新型車への適用に向けたガイドライン(指針)の策定に動いている。

二つのWGがそれぞれ課題解決への動きを進める一方、さらなる普及には電動車自体の市場流通価値向上が問われる。EVやFCVなどの普及が進まない要因には車両製造コストの多くを占める車載電池の存在が挙げられる。販売価格に転嫁されて割高となる一方で消費者にとっては下取りに出す際に高く売却できないと考え、新車段階から購入をためらう場合もある。

そこで協議会は車載電池が循環的に使われるリユース市場の創出で、潜在的な用途の掘り起こしを目指している。施設のバックアップ電源として産業向けの活用や家庭での余剰電源を活用する蓄電池の普及など、二次利用できる環境づくりを柱に据える。社会全体での総需要量拡大とエネルギーの効率的運用によって課題となっている製造コスト低減につなげていく狙いだ。

18年段階で自動車全体の販売台数に占めるEVやプラグインハイブリッド車(PHV)の割合は約1%に留まる。政府は30年に20―30%へ高める目標を掲げているが、現状の動きからは実現へのハードルは限りなく高い。

かつてガソリン車と比べて割高なため敬遠されていたHVも、性能向上と環境問題への社会的機運の高まりで普及が進んだ。EVやPHV、FCVといった環境負荷低減につながる選択肢が広がるには、官民一体による仕組みを早急に作り上げ、積極的な普及啓発がカギを握りそうだ。