小売店舗の売り上げを大きく左右する発注業務は、経験値と時間、手間を要する。一部のスーパーマーケットでは人工知能(AI)を使った発注システムの運用が進む。毎週新商品が発売され、入れ替えも多いコンビニエンスストアでは、特におにぎりや総菜などのAI発注は難しいとされてきた。現状ではAIを使ったセミオート(半自動)発注を運用するローソンが先行する。今後、業界全体でAI発注が進めば、人手不足の解消や廃棄削減などに大きく貢献する。(編集委員・丸山美和)

AI利用

ローソンの発注の仕組みは二つある。カップ麺や日用品など腐らず日持ちする商品が対象の「計画発注」と、2015年から導入した「セミオート発注」だ。約1万4000店に導入されており、発注にかかる時間を従来比で44分短縮した。このセミオート発注にAIに相当する機械学習が使われている。

セミオート発注は1店舗にある約3500品目のうち、おにぎりやサラダ、デザートなど消費期限の短い1200品目に適用。多く発注して売れ残れば廃棄となり、発注量が少なければ販売機会ロスになりかねずバランスが難しい。このため「機械学習の精度を上げようとしている」(秦野芳宏理事執行役員)。

セミオート発注では天候や気温、昨年の販売状況のほかに、共通ポイントカード「ポンタカード」の会員データによる同立地の他店舗販売状況、本部の販売施策など約100の因子を分析して発注推奨数を出す。

発注推奨数は「販売予測数」から「在庫予測数」を引いて、店に置いておきたい数の「安全在庫数」を足した合計数となっている。

販売予測数の算出でAIが活躍する。直近3日間の平均販売数に、曜日、天候、自社POS(販売時点情報管理)、自店ポンタ、本部施策を解析して、1日4回算出する。1回ごとに約3万5000回ほど計算する。

最後は人が介在

出てきた発注推奨数で注文してしまえば完全自動となるが、店舗近隣の状態などは考慮されていない。このため、各店舗の発注担当が、イベントや学校の休日、競合店の出店や閉店などの商圏内で起こる変化を加味して、最終発注数を決める。最後に人が介在するため半自動発注なのだ。

さらに店にどんな商品を用意するのかは、個店ごとに異なるため、品ぞろえ数であるSKU数(商品の最小管理単位)も必要になる。SKU数は各店の蓄積データから算出されるが、まだAIには組み込まれていない。SKUの要素は、各店ごとの約1週間の販売実績と機会ロスから算出した「上位商品」、ポンタデータを基に来店頻度が高い人がよく買っている「ヘビー商品」、自店の客層と相性の良い「相性商品」の三つで構成されている。現在、セミオートの発注締め時間は、10時、14時、22時の3回で、各時間で発注可能な商品は異なる。

一方、日持ちする商品に適用する計画発注は、個店ごとの「平均販売数」と、店が置いておくべき「基準在庫数」を足したものから「発注時点の在庫数」を引いて発注推奨数を出す。発注締め時間は12時のみで、水曜と土曜以外に行う。

セミオート発注と計画発注を合わせて、1日1人当たり2時間の作業時間削減となった。

1100店で実験

ローソンの計画発注と似ているのがセブン―イレブン・ジャパンのAI発注だ。同社は1月末から菓子やカップ麺、日用品など約2500品目を対象にしたAI発注の実験を約1100店で始めた。商品の販売実績を基に、天気予報や実際の天候などから発注数を提案する。稼働中の不足分が自動計算されて発注数が出てくる「設定発注」システムを使ってきた発注担当者であれば、AI発注に移行しやすいという。

AI発注を入れた店舗では、発注時間が35分短い45分に短縮された。空いた時間は接客や売り場作りに充てている。21年2月末までには、全国の店舗に導入する計画だ。

発注時間の短縮に加えて、ローソンではセミオート発注と値引き販売などで、1店当たりの廃棄高を前年比で1割削減した。

ローソンのセミオート発注やセブンのAI発注は、業務負担軽減による人手不足の解消、廃棄量削減、販売機会損失減少に伴う売り上げ増と導入効果は大きい。精度向上でさらに効果も上がることから、コンビニ加盟店からも多くの期待が寄せられている。