古野電気は2013年に気象観測レーダーシステム事業に参入した。売上高の約8割を占める船舶用電子機器で培った技術を応用。従来の気象レーダーに比べ3分の1以下に小型化し、世界最小・最軽量級となるドップラ気象レーダーを開発した。国内外の大学や自治体を中心に約60件の運用実績がある。世界初の魚群探知機を実用化した古野電気。「見えないものを見る」技術は海から空へと広がっている。

低層で検知

ゲリラ豪雨や大型化する台風の影響により、全国各地で浸水被害が近年増大している。気象庁のアメダスデータによると、時間雨量50ミリメートル以上の降雨の発生回数は統計開始の1976年から2019年にかけて、平均で10年ごとに29回増加している。

気象レーダーは広域の天気を観測し、台風の到来予測などを行うために全国の山頂などに配置される。ただ、局所的かつ短時間に発生する集中降雨予測は、地球の丸みや直進性を持つ電波の特性により、大型の気象レーダーからの観測データだけでは困難とされてきた。

古野電気のレーダーは、高度500メートルから同2000メートル程度の高さも観測できる。低層で急速に発達する積乱雲を早期に検知し、ゲリラ豪雨の到来を察知する。

柏卓夫システムソリューションビジネスユニット長は「当社のレーダーの納入先の約6割が海外。大学などでの都市防災の研究目的のほか、メキシコやインドネシアでは火山灰の観測も担っている」とした上で「開発時には火山向けでの使用は想定していなかった」と新たな使われ方の広がりを見せつつあると強調する。

15年、古野電気、メタウォーター、神戸大学など8者で構成する共同研究チームが提案した事業案が、国土交通省の下水道革新的技術実証事業(B―DASH)に採択された。

住民に情報周知

古野電気の気象レーダーを用いて積乱雲の雨雲を検知し、ゲリラ豪雨などの到来時にリアルタイムで降雨・浸水の可能性を予測。ICT(情報通信技術)により下水道施設管理者や住民へ情報を周知する。さらに局所的な集中豪雨発生時に雨水貯留施設の効率的かつ最大限の活用につなげる。国土技術政策総合研究所の委託を受け、福井市・富山市で実証した。

雨水貯留施設は降雨が激しくなる前に、排水ポンプを稼働させ、貯留管にたまった雨水を放流。また、リアルタイムな情報提供により、住民による自助や共助を促した。その結果、福井市では浸水被害の面積を24%削減できたという。

全国各地で記録的な豪雨が多発する中、柏氏は「当社のレーダーは、小型のため既存の建物屋上などにも設置できる。都市域における雨水貯留施設は、正確な雨量データの提供が求められる。当社のレーダーを生かせる場所のひとつ」とし「建設コンサルタント会社など、他社との協業を図りながら、気象災害の被害軽減の一助を果たす」と意気込む。(神戸・福原潤)