北里大学感染制御研究センターの花木秀明センター長は2日までに日刊工業新聞のインタビューに応じ、抗寄生虫薬「イベルメクチン」について、新型コロナウイルス感染症の治療薬として1年以内の承認申請を目指す考えを明らかにした。主に軽症者を対象に、今夏にも医師主導の臨床試験を開始する。イベルメクチンを使った新型コロナ感染症の臨床試験は世界で18例が行われており、日本で開始されればアジアで初めてになる。

医薬品が厚生労働省から承認を得る場合、申請後の審査などで1年ほどかかる。新型コロナ感染症治療薬については現在優先的に審査を受けられるため、申請後6カ月以内に承認を得られる可能性がある。

これまで米ユタ大学が、新型コロナ感染症患者にイベルメクチンを投与する研究を実施した。研究結果によると、患者全体の死亡率は8・5%から1・4%に低下した。うち人工呼吸器が必要な重症患者の場合の死亡率は、21・3%から7・3%に改善した。

イベルメクチンは寄生虫感染症の治療薬だが、エイズウイルス(HIV)やデングウイルスへの効果が報告されている。ウイルスの遺伝子であるリボ核酸(RNA)の複製や、たんぱく質生成を阻害する作用が、ウイルス感染症への効果につながっている可能性があるという。

イベルメクチンは全世界で広く使われており、大きな副作用は確認されていない。軽症者で効果を確認できれば入院患者の増加を防ぐことができ、再流行が起きても医療機関の逼迫(ひっぱく)は起きにくくなる。

一方、コロナウイルスは高温・多湿では感染力が弱まるという特徴から、夏季は患者が減少する可能性がある。花木センター長は「感染集団(クラスター)は継続して発生するだろう。クラスターをターゲットに、全国で臨床試験を実施したい」と述べた。

イベルメクチンは、寄生虫によって起きる「オンコセルカ症」の治療に使われる。オンコセルカ症は目のかゆみや発疹などが生じ、失明に至ることもある感染症で、イベルメクチンは現在でも年間約3億人に投与されている。イベルメクチンのもととなる化合物アベルメクチンの発見により、同大大村智特別栄誉教授は2015年、ノーベル賞を受賞した。

新型コロナ感染症の治療薬を巡っては、米ギリアド・サイエンシズの抗ウイルス薬「レムデシビル」が国内で初めて承認を得た。他に、富士フイルムの抗インフルエンザ薬「アビガン」や中外製薬の関節リウマチ治療薬「アクテムラ」が臨床試験を実施しており、早期の治療法の確立が待たれる。