神奈川県が新型コロナウイルス感染症拡大による緊急事態宣言解除を受け、対策として打ち出した業種別の「感染防止対策取組書」の利用が伸び悩んでいる。県内の飲食店の総数約3万4000店に対し、登録した事業所数は20分の1に満たない。「感染防止の取り組みを見て利用者が判断する。その流れを作ることがベスト」(黒岩祐治知事)として導入した制度だけに、より多くの事業者の参加が必要になる。(取材=横浜・八家宏太)

県は5月27日から経済活動を再開。全業種で一斉に営業再開を認めたため「感染防止対策をやっている店とやってない店を区別することが大事」(黒岩知事)との独自路線をとった。県は20業種に分けてチェックリストを作成し、感染拡大防止のためにソーシャルディスタンスの確保や共用物の衛生管理、業界ガイドラインの順守を求めている。

事業者がこのチェックリストで実施している対策や事業所情報を県のホームページで入力・登録すると、感染防止対策取組書が発行される。県によると取組書の登録数は6280件(3日時点)。登録数で最も多いのは飲食店1691件、次いで各業種共通、小規模小売店舗となった。

県は周知活動として事業者への呼びかけや県職員の直接訪問、リーフレット配布などを実施している。登録件数について県の担当者は「全県の15%をひとまずの目標にしているが、まだ十分ではない」という。

取組書を掲示している横浜市中区の飲食店関係者は「貼っているかどうかで客足は変わらないが、お互い嫌な思いをせずに済む」と語る。

横浜市内の飲食店に掲示されている感染拡大防止対策取組書

一方で、同地区の別の飲食店経営者は「まちづくり振興会に所属していたから情報はきたが、内容を知らず何もしていなかった」と話す。「周囲の飲食店で知る人はほとんどいないのでは」という。経済活動再開と感染防止対策を両立することの難しさが垣間見える。

県がもう一つの感染拡大防止策として導入した「LINE コロナお知らせシステム」は、取組書の登録と同時に2次元コード「QRコード」を発行。施設利用者が読み取ると、その施設で新型コロナの感染者が発生した場合、接触の可能性がある登録者に連絡して感染拡大防止につなげる仕組み。つまり、取組書の登録が進むことが前提になっている。県には県民や事業者へのいっそうの周知徹底が求められる。

緊急事態宣言解除後、隣接する東京都では感染者が再び増加し始めた。新型コロナの第2波、第3波に備えるには、経済活動の中でも感染防止のための戦い終わっていないという意識の醸成が欠かせない。