『超高齢社会の乗り越え方』著者・安立清史氏に聞く

―執筆の動機は。
 「高齢化や超高齢社会になると医療や介護、年金、社会保障をはじめ、すべてが大変になると言われてきた。このような危機感がオーバーランすると、高齢者は社会の『お荷物』という反感や差別感へ反転していく。意識されない年齢差別(エイジズム)がまん延することになる」

「日本は『世界に類をみない急激な高齢化』と言われ続けた。その結果、意識されない年齢差別がはびこり、大きな社会的害毒となる。それは社会に必要な社会的連帯や医療、介護、社会保障など共同の仕組みを壊していく。人間を年齢だけで見るのはやめようと言いたい。それが動機の一つだ」

―タイトルに「乗り越え方」とある通り、希望を持てる内容です。
 「『乗り越え』は前向きの努力だ。新型コロナウイルスの感染拡大もそうだが、日本に未曽有の危機は何度もあった。それに対して日本は前向きの乗り越えを図ってきたと思う。対策を小出しにしたり、見て見ぬふりをしたりしても問題は解決しない。超高齢社会だから年金や医療、福祉、介護を削減しようという後ろ向きの姿勢ではだめだ。現実を受け止めつつ、トップランナーとして、それを乗り越えていく道を求めるべきだろう」

―本の中で「非営利」に注目しているのはなぜですか。
 「非営利は、営利には不可能なものを生み出せる。それは社会にとって必要不可欠で大切な社会の絆、連帯、助け合い、共同性などで社会を生み出す源と言える。災害への対応や福祉にも通じる。社会が危機にひんしている時に営利の発想で問題が解決できるだろうか。現在こそ非営利の仕組みの重要さは明らかだ。しかし日本の非営利の制度的な仕組みは大変脆弱(ぜいじゃく)。そのことも新型コロナで見えてきた」

―技術の役割についても触れています。
 「人間社会が本当に必要としている技術は、未開拓な領域にたくさんある。超高齢社会こそ社会に必要な技術を開発していく無尽蔵の宝庫だ。人間と社会を支援する技術こそもっと必要になる。それは日本の産業や技術にとって、大きな躍進をもたらすはずだ。超高齢社会という見方は、そういう可能性からも眼をそらしてしまう」

―どのような人に特に読んでほしいですか。
 「超高齢社会という見方に染まりやすい人に読んでほしい。社会の行く末に関心の高い人や意識の高い人が、かえって超高齢社会とか人口減少、少子高齢化などといった見方にやすやすと染まってしまうのは困ったことだ。人口問題や人口データに知識のある人が現在のデータから将来を予想して悲観的になり、後ろ向きの改革を提唱する傾向が強い。それこそ未来をさらに暗くしていく。若い人には超高齢社会という見方そのものを吹き飛ばすような活力を身につけてほしい。そのために年齢だけでなく人種や性別というようなフィルターを通さず、社会や人間そのものを見る能力を身につけてもらいたい。本書の問題提起が、そのための一助となればと願う」(聞き手=西部・関広樹)

◇安立清史(あだち・きよし)氏 九州大学大学院教授
87年(昭62)東大院社会学研究科博士課程単位取得退学。日本社会事業大社会事業研究所助手、社会福祉学部専任講師、助教授を経て96年九大文学部助教授、10年九大大学院人間環境学研究院教授。専門は社会学、福祉社会学、ボランティア・NPO論。著書に「福祉NPOの社会学」ほか。群馬県出身、63歳。