社会ニーズと科学技術の進展予測に基づく政府の超スマート社会「ソサエティー5・0」は、新型コロナウイルス感染症によって多くの項目で実現が早まりそうだ。新型コロナを災いで終わらせず、社会変化を大きく前倒しさせる機会と捉えるべきだ。

政府の2020年版科学技術白書は、科学技術・学術政策研究所(NISTEP)の「科学技術予測調査」を柱に据えた。同調査は科学技術基本計画策定に合わせて5年ごとに実施。約700の科学技術課題の実現時期を、専門家約5300人にアンケートしている。

今回の調査結果は19年秋に公表したが、白書の完成間際に新型コロナの流行となった。そのため700項目のうち、2割以上がコロナとの共存を踏まえた「新しい生活様式」関連にあたるとして、予測を修正すべく追加調査を行うことにした。

具体的には「感染症判定の超軽量センサー」や、「感染や血液成分をモニタリングするウエアラブルデバイス」などだ。それぞれの実現時期を開発は29―30年、実用化は31年としていた。これらは新型コロナの医療と直結しており、実現時期は前倒しになるだろう。

「認知症治療や介護を遠隔で行う超分散ホスピタルシステム」「遠隔地のロボットを自在に操る身体共有技術」や、「誰でもいつでもどこでも学べるデジタル環境」「収穫作物をドローンで集荷場所へ自動運搬するシステム」など、ソサエティー5・0時代のこれらの要素は、新型コロナ対応が後押しとなり、早期実用化が図られるはずだ。

政府の研究開発投資を考える上で科学技術の未来予測は欠かせない。21年度スタートの第6期科技基本計画の議論が進む中、NISTEPにはスピードと踏み込みの強さを考えながら修正してほしい。

新型コロナは貧富による感染リスクや学力格差など、不平等を強くあぶりだした。感染を避ける行動科学や心理学などと共に、次期基本計画から対象となる、人文・社会科学系単独の研究の社会貢献にも期待したい。