「IOWN」構想加速

新型コロナウイルス感染症の影響でテレワークの活用が進み、それを支える通信網の重要性が再認識された。デジタル変革(DX)の機運も加速しており、情報通信技術(ICT)事業者への期待は高まっている。一方でコロナ禍を機に海外情勢は不透明さを増しつつあり、世界における日本の立ち位置も問われ続ける。NTTの澤田純社長に環境認識や国内ICT産業が進むべき道筋などを聞いた。

―ウィズコロナ時代の経営環境はどうなると考えますか。

「我々ICT事業者としてはリモート(遠隔)業務を提供する必要がある。在宅勤務からエンターテインメントに至るまで、対面をしなくても付加価値を高められるソリューション(問題解決)を出していく。これが一番大きい。当然、ネットワークも安定的に提供しないといけない」

―米国と中国の対立激化が懸念されています。日本の産業界への影響をどう見ますか。

「コロナで米中のデカップリング(切り離し)がより鮮明になってきた。日本も好むと好まざるにかかわらず、そういう大きな流れの中に組み込まれていく。供給網を含めたシフトが起こってくるのではないか。信頼できる国同士でつながる部分があり、そうでないものはグローバリズムで動くという、デュアル(二元的)な世界が来る。ICTや食糧、エネルギー、医療などは、従来のような、中国と自由にやっていく時代ではなくなる」

―国内ICT産業は今回のコロナ禍を機に自らを変革し、世界で存在感を高めることができそうですか。

「経営環境が新製品の開発を加速するとは思うが、できてくるものが非常に良いものでなければダメだろう。今まで、特に消費者向けのソフトウエアや端末は、スケールメリットの勝負だった。(日本は)付加価値の勝負をしていく必要がある。(NTTが研究してきた、光と電子回路を緊密に連携させて半導体チップ内の信号処理を行う技術)『光電融合』はその一つだ」

―現在のNTTの経営戦略はコロナ問題が顕在化する前に策定されましたが、更新の必要性は感じますか。

「(次世代光通信基盤を構築して消費電力削減や通信の大容量化などを目指す)『IOWN(アイオン)』構想は加速しないといけない。コロナで遠隔化が進むと、将来は膨大なネットワークとコンピューターの資源を要求されてくるので、そこに耐えられるようなインフラを用意する必要がある。それに伴って中期経営戦略をどうするかは当然出てくるが、これから議論を積み上げていきたい」(取材はウェブ会議で実施。写真は2018年10月に撮影したものを使用)

【記者の目/長期視点での活動期待】

残念ながら従来、国内ICT産業の商材で世界に通用するものは少ない。法人顧客のDX支援を機に技術革新を加速して海外勢を追いかけたいところだが、短期間での肉薄は難しいだろう。ただ、2030年ごろを見据えたIOWN構想にはウィズコロナ時代におけるICT基盤の課題を解決する意味でも期待がかかる。NTTは今後も長期視点での企業活動を貫いてもらいたい。(斎藤弘和)