若手が超高速船、技術つながる

川崎重工業は25年ぶりに超高速旅客船「川崎ジェットフォイル」を建造した。かつてジェットフォイルを手がけたベテラン社員の経験と、30―40代の若手社員の力を融合するとともに、技能伝承の貴重な機会となった。建造の終盤には新型コロナウイルスの感染対策も迫られた。船舶海洋カンパニー神戸造船工場工作部の関口喜仁部長に、建造の舞台裏や人材育成のあり方を聞いた。(孝志勇輔)

―四半世紀ぶりにジェットフォイル「セブンアイランド結(ゆい)」を建造しました。

「新造には途絶えかけていたサプライチェーンの再構築や図面の解析などが必要だった。作業者がジェットフォイルの建造にかかわる特殊な技能を身につけてもらうことも課題だった。今回のプロジェクトが成功したのは、1990年代に建造を担当した技術者が定年を迎えるぎりぎりのタイミングで在籍していたのが大きい。当時の作業手順書もほぼ完全な形で残っていた」

―若手社員がジェットフォイルを手がけるのは初めてです。

「建造前から必要な技能を身につけるために訓練してきた。特殊材料の加工・溶接、水中翼や姿勢制御に関連する装置を据え付ける際の調整などを学んでもらった。一般的な商船でこうした技能を獲得する機会は少ない。(若手社員が)仕事に魅力を感じてこそ、伝承や人材育成につながる。今後も自らの技能に誇りを持ってほしい」

―商船との違いは何ですか。

「設計思想が船舶と異なる。ジェットフォイルのデザインは航空機に近く、水中翼を使い船体を海面から浮上させるため重量の管理も非常に厳しい。技術開発や航空宇宙などの部門と連携しながら訓練を進めてきた」

―サプライチェーンを再び整えることも必要でした。

「新規開拓したメーカーに部品を発注した。ただ、その部品が(ジェットフォイルに)どのように使われるのかが分かりにくい。そこで(理解してもらうため)メーカーに建造現場を見てもらった」

―新型コロナの感染防止も課題でした。

「クラスターによる感染が起きてしまうと建造作業が止まってしまう。そのため、4―5月にかけて重要な作業はチームを二つに分けて対応した」

関口喜仁氏

【ポイント/ノウハウ伝承は重要】

川重は米ボーイングの航空機技術を生かし開発したジェットフォイルを製造・販売する権利を87年に同社から引き継ぎ、95年までに15隻を建造した。その後、建造が途絶えたものの、グループ会社が点検や修理などを手がけてきた。現在では川重が唯一のジェットフォイルメーカーだけに重責は大きい。バラ積み運搬船などのように、いつも一定して受注する船舶ではないだけに、ジェットフォイル建造の技能やノウハウの伝承は重要だ。