三井不動産が2021年秋に千葉県柏市に完成する民間研究施設「三井リンクラボ柏の葉」に、20年にノーベル賞有力候補として名前が挙がった東京大学の藤田誠卓越教授が研究拠点を設けることが分かった。藤田氏は現在63歳。65歳の定年退職後の動向が注目されていた。国立がん研究センター東病院や、東大と千葉大学のキャンパスも近く、ライフサイエンス分野での研究機関の集積が期待できる。三井不動産にとっても、次世代医療技術・ヘルスケアサービス創出に向けた街づくりに弾みが付きそうだ。

三井リンクラボ柏の葉の完成予定は21年11月。企業や大学などの研究室が入居予定で、多くがライフサイエンス分野と見られる。三井不動産と国立がん研究センターなどは、柏の葉エリアで連携・協力する基本協定書を19年に締結。産学連携の促進で医学系研究の拠点形成を進めている。連携の中核となる三井リンクラボ柏の葉の最上階のワンフロアに藤田卓越教授の研究室と、藤田氏と共同研究に取り組む複数の企業が入居する見込み。

藤田卓越教授は18年にノーベル賞の登竜門といわれる「ウルフ化学賞」や20年に「クラリベイト引用栄誉賞」などを受賞し、ノーベル化学賞の有力候補に挙がっている。分子が自発的に形を作る「自己集合」を利用した画期的な分子の合成法を開発し、複雑な構造を持つ分子やたんぱく質などの構造分析、創薬など幅広い分野に応用されている。

東大卓越教授は特例で75歳まで雇用が認められ、65歳の定年退職後も東大で研究活動ができるが、研究費や研究場所などは実質ゼロからのスタート。今回、定年退職後の研究場所は確保できたが、新たな研究室を運営するためのランニングコストはまだ確保できていない。研究活動の存続に向け、東大基金「藤田ナノサイエンス基金」を創設し、寄付を募っている。

藤田卓越教授はリンクラボについて「大学と産業界が一体となった拠点形成により、理想的なオープンイノベーションが期待できる。柏の葉の街が新産業都市として発展する起爆剤の一つになれれば」と話す。