設計開発ソフトウエア業界で自動車開発向けシミュレーション技術が高度化している。先進運転支援システム(ADAS)により自動車構造が複雑化していることを背景に、上流工程での高度解析によって手戻りを減少させるニーズが高まっているためだ。今後は自動運転車の開発で多様な事象を複合的に解析する必要性がさらに高まる。効率的なシミュレーション環境の構築により自動車開発をさらに加速できるか。業界各社の戦略が試される。

 光学解析の画像シミュレーションは精度が向上し、開発のリードタイムを短縮するツールとして自動車分野での活用が進んでいる。

 OPTIS Japan(東京都千代田区)のソフトは、照度や輝度を調整してヘッドランプなどの見栄えを画像検証できる。車1台分のランプは試作で数千万円かかることもあるが、他社のCADソフトとの統合環境で事前に画像検証することにより手戻りやコストを削減できる。

 また、車に取り付けて行っていた車載カメラのテストでは歩行者検知の事前検証にも活用できる。ただ「光が跳ね返る回数など細かな条件設定が必要」(芳村貴正社長)なため、さらなる用途拡大にはユーザーのサポートなどで課題もある。

 このほか、モデルベース開発(MBD)の効率的なシミュレーション環境を巡って各社の競争が加速している。車載センサーや電子制御ユニット(ECU)が増加し、構造や熱、電磁場などを上流工程で複合的に解析する必要性が高まっているためだ。

 アルテアエンジニアリング(東京都豊島区)はコンピューター利用解析(CAE)プラットフォームにMBD関連ソフトを統合していく。2017年に入り、ECUに制御コードを書き込むソフトなどを統合した。さらに統合を拡大し「ワンストップソリューション化を図る」(マーケティング部)方針だ。

 また、サイバネットシステムはベンダーとの提携で幅広くソフトを提供し、コンサルティングにも力を入れる。要求仕様の設定からシステムレベル(1D)CAE、3次元(3D)CAEまでをカバーし「課題解決型の提案ができる」(FC営業本部)ことを強調する。

 今後は車体軽量化を踏まえた振動や音響などの解析のほか、自動運転車開発の本格化に対応するシミュレーション環境の構築も求められてくる。また、国際的にはシミュレーションモデルをソフトウエア間で接続する標準規格について検討が進められている。

 さらに自動車開発を巡る環境は急速に変化していく。その中で、ソフトウエアの統合環境構築や他のベンダーとの業務提携といった手法を活用して、いかに効率的なシミュレーション環境を構築していくか。ソフトウエア業界各社の競争は加速していきそうだ。
(文=田中明夫)

【ファシリテーターのコメント】
大きな成長が期待できる自動運転向け市場。ここでも設計開発ソフトウエア企業が多様な分野への対応で培ってきたシミュレーションのノウハウが活躍しそう。競争に勝ち抜くための合従連衡にも注目したい
長塚 崇寛