黒子に徹してパナソニックの「五輪ビジネス」2000億円に

黒子に徹してパナソニックの「五輪ビジネス」2000億円に

 パナソニックは11日、2020年東京五輪・パラリンピック関連の累計販売額が、当初目標比33・3%増の2000億円超になる見通しだと発表した。国内外40社以上のパートナー企業と協業、ソリューションなどで先行販売・事業化の実績を積み重ねている。井戸正弘執行役員が、同日のセミナーで販売目標の上方修正を明らかにした。「関連需要が当初より増えた。ホテルやオフィス、商業施設で当初のもくろみから大きく伸びた」とした。商品構成として「セキュリティーシステムやサイネージなど新しい商材を提案してきた成果だ」と語った。

 内訳は競技場などの直接需要が340億円超、ホテルなどの関連需要が1360億円超に加えて、東京五輪・パラリンピックなどを契機に創出する新規ビジネスで240億円超と試算する。ソリューションなどの新規ビジネスはさらに伸びる可能性がある。
日刊工業新聞2019年7月12日

ラグビーW杯も
 9月に開幕するラグビーワールドカップ(W杯)日本大会。パナソニックは、18年9月に施設をリニューアルした東大阪市花園ラグビー場に、710型の大型発光ダイオード(LED)モニターや4Kカメラなど映像システムを納入した。

 スタンドの一画に設置された縦幅約8メートル、横幅約16メートルの大型モニターは、高輝度のフルカラーLEDを採用。昼夜や天候を問わず、ピッチの上にいるレフェリー(審判)もこのモニターで判断ができるくらい鮮明な映像を映し出せる。トライシーンや判定の検証時、リプレイ映像を映すことで観客と選手、レフェリーが映像を共有して試合が盛り上がる。

 また、業務用4K映像カメラ2台のほか、スタンドの天井付近に設置した4Kネットワークカメラ4台を納入。カメラ制御機器により、遠隔でネットワークカメラの向きなどを集中制御できる。

 パナソニックは20年以上にわたり五輪・パラリンピック会場に、こうした映像機器システムを納めてきた実績を生かした。

 同ラグビー場は、年間で試合のある40―50日以外、PV会場などとして運営している。こうしたイベントでは、大型モニターによって臨場感のある映像が提供できる。ラグビーW杯を通じて同ラグビー場の知名度向上につなげつつ、結婚式などのイベント会場として多様な用途を模索するという。

日刊工業新聞2019年3月19日

2年前の皮算用
 2020年に開催する東京五輪・パラリンピック。「今の受注レベルで1000億円は間違いなく取れる」。パナソニックの執行役員兼東京オリンピック・パラリンピック推進本部長を務める井戸正弘は、放送機器や家電などの受注に自信を見せる。これらに加え、インフラ整備やホテル、商業施設といった周辺の受注を500億円上積みする算段だ。

 しかし同社が真に狙うのは、20年を契機に広がるBツーB(企業向け)システムの市場。井戸も「五輪のおかげで、この技術が世に出たと言われるような種まきをしたい」と力を込める。ターゲットは観光、スポーツ、スマートシティー(次世代環境都市)だ。

 観光は訪日外国人がカギを握る。17年の訪日旅行者は、最高を更新した16年の約2400万人超えが確実視され、政府は20年に4000万人へ増やす計画だ。同社は多言語翻訳、避難誘導用デジタルサイネージ(電子看板)、電動車いすなど、旅行者をもてなすシステムやサービスを多数実用化している。

 一方、政府が成長を後押しするスポーツ産業向けは、16年のブラジル・リオ五輪から始めた式典運営のほか、スタジアム内店舗支援、競技分析なども提案中。五輪でシステムとサービスを組み合わせたソリューション事業の実績を積み上げ、新設や改修が計画されるスタジアム、国際会議施設などの受注を狙う。

 スマートシティーは、自社工場跡地を活用した街を情報通信技術でつなぐ。住宅、福祉、物流といった事業者と街づくりを進めるプラットフォーム型事業だ。この事業モデルは、観光やスポーツ向けシステムにも不可欠。18年に始める外国人旅行者向け手荷物配送サービスは、JTBやヤマト運輸にクラウドサービスを提供する裏方の役割を担う。

 BツーBのソリューション事業で成功するには“黒子”に徹することも必要だ。20年の東京五輪はこうした力を身に付ける最高の舞台。18年の創業100周年よりも重要な転機になり得る。
(敬称略)
日刊工業新聞2017年12月13日

「五輪後」に技術は根付くか
 競技会場の建設が急ピッチで進む中、世界的なイベントに向けて日本の最先端技術を披露しようと、水素インフラやロボットなど官民挙げた取り組みが進む。技術のアピールだけでなく、2020年以降を見据えた普及のための経験値を蓄積していく狙いもある。

水素インフラ 世界を魅了する機会
 東京五輪が開催される20年をめどに、福島県浪江町で世界最大規模の水素製造を始めるプロジェクトが進む。東芝や東北電力、岩谷産業、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が太陽光パネルで作った電気で水素製造装置を稼働させ、燃料電池車(FCV)1万台分の燃料に相当する年900トンの水素を製造する。

 “福島産水素”は都内に運び、五輪会期中にFCVで使う。世耕弘成経済産業相は6月、福島県の内堀雅雄知事と会談し、「五輪は復興をアピールする象徴的な出来事であり、しっかり取り組む」と伝えた。

 東京都は水素社会を五輪後のレガシー(遺産)にする。東京・晴海の選手村には家庭用燃料電池を配備する。水素を製造、貯蔵する水素ステーションも整備し、地下のパイプラインを通して住宅や商業施設に設置した燃料電池にも水素を届ける。実現を目指す都は2月、東京ガスや東芝、パナソニック、JXTGエネルギーなどと基本協定を締結した。

 トヨタ自動車も五輪を契機とした水素社会の到来を予測し、東京都を中心に燃料電池バス100台以上の供給を見込む。

 ドイツで再生可能エネルギーから水素を作る実証が30カ所で始まるなど、海外でも水素エネルギー普及の実証事業が活発になった。20年は日本が水素社会の先頭を走る姿を世界に見せる絶好の機会だ。

5G 超高速通信で臨場感
 五輪の観戦では携帯電話各社の新サービスに期待が集まる。

 各社は20年秋の商用化を予定する第5世代通信(5G)を用いた新たなスポーツ視聴イベントを相次いで開いている。5Gは現状の約100倍の超高速通信が可能で、通信の遅れも1ミリ秒以下。5Gを介し、ほぼ遅延のない音声や高精細映像を伝送することで、まるで試合会場にいるかのような視聴ができる。

 NTTドコモは14日、都内の特設会場で行ったフットサルの試合を5Gで渋谷ヒカリエ(東京都渋谷区)のパブリックビューイング会場に即時に伝送するイベントを開いた。超高精細映像の4Kカメラ4台で撮影した大容量映像を5Gでヒカリエに伝送。この映像を合成し、幅20メートルのワイドスクリーンに映し出した。

 KDDIはプロ野球の公式戦で自由視点映像の即時配信に成功した。20年までに試合の重要な場面などの映像を観客がモバイル端末により、視点を自由に変えながら楽しめるようにするサービスの提供を目指す。ソフトバンクもVR(仮想現実)を活用したプロ野球のライブストリーミング配信の実証実験を行っている。


ロボット 警備など人手不足補う
 日本が得意とするロボットでは、清掃や警備、受け付け業務などの導入実証が進む。外国人観光客の人気を呼びそうだ。

 清掃ロボでは、三菱地所は東京の丸の内エリア、三井不動産は東京ミッドタウン日比谷やダイバーシティ東京プラザで導入。メーカーはソフトバンクロボティクスやサイバーダイン、パナソニックなど多数参加する。清掃場所の特性や立地などに応じて複数のロボを使って検証し、先端イメージを発信すると同時に、人手不足が懸念されるビル清掃業務での先行事例としてノウハウを蓄積する。

 警備ロボは綜合警備保障(ALSOK)が開発した「リボーグX」が、東京駅前の新丸ビル地下1階で稼働中。警備業務も人手不足が深刻で、ロボに寄せる期待は大きい。警備業務は他に飛行ロボット(ドローン)の撮影映像を活用する方法もあり、センシンロボティクス(東京都渋谷区)やミツイワ(同)などが、商品開発を急ぐ。

 一方、受け付けロボは“変なホテル”の店名を持つHISホテルホールディングス(東京都新宿区)が、東京・浅草橋や赤坂に開業したホテルで人型の受け付けロボを採用している。多言語対応も可能で、外国人観光客をおもてなしする。

顔認証 サービスと安全両立
 顔認証技術はおもてなしの向上と、安心・安全を両立させる先進技術として期待が高い。空港や競技場などの公共施設や大規模な店舗、イベントなど幅広い利用を見込む。顔認証は日の当たり方や顔の向きなどの影響を受けやすく、生体認証の中でも「実用化が難しい」とされてきた。だが人工知能(AI)活用により、技術革新が進み、今や動いている被写体の顔を「99・2%の照合精度で即時に認証できる」(NEC)という。

 例えば競技会場に入場の際にカメラの前で立ち止まることなく、歩きながらの認証も可能。街角にカメラが設置されていれば迷子をすぐに見つけ出すこともできる。目尻や瞳などの特徴点から視線を特定して、不審な行動の人物を把握したり、複数人の視線を同時検知して特定の人物を即時に検知したりできる。

同時通訳 空港や駅での活躍期待
 五輪期間中の外国人観光客へのおもてなしには翻訳機が活躍しそうだ。

 例えばパナソニックのメガホン型翻訳機「メガホンヤク」は、成田空港や東京メトロのほか、展示場や警備会社に導入されている。英語や中国語、韓国語への翻訳が可能。「電車が遅れています」といった、公共場所でよく使う標準の定型文が事前登録されている。

 クラウドコンピューティング上で翻訳するシステムとは違い、独自の翻訳技術を用い、端末内で高精度に音声翻訳処理できる。登録外の文は翻訳はできないものの、災害時などインターネットに接続できない時にも使えるのはメリット。

 メガホンヤクでは、無線LAN経由で、翻訳ソフトウエアが更新される。16年末の発売時点での標準定型文約300文が、更新で今は約400文に増えた。

日刊工業新聞2018年7月23日
※内容は当時のもの


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