雪かきが“個の時代”に鳴らす警鐘と希望

雪かきが“個の時代”に鳴らす警鐘と希望

豪雪地帯こそポテンシャル秘める
―執筆のきっかけは。

「豪雪地帯の振興策が議論されてきた中で、地場の人が嫌々ではなく自ら動いて地域を活性化しようという取り組みが多くなってきたのではないか。雪氷工学の研究者としてそう感じる場面が増えてきた。事例をまとめて世に問えば、雪で困っている人や地域にとって一筋の光を与えられると考えて、他の研究者にも協力を仰ぎながら、一つの本に仕上げた」

―執筆ではどこに力を入れましたか。

「第II部で事例を豊富に集めたことだ。この本では、全国15の事例を取り上げた。事例はテーマ別に1章につき3本でまとめた。掲載基準は、雪国の暮らしを良いものにするために、地域がまとまった“一つのモデル”になったもの。事例のどれもが、その地域に暮らす人が暮らしを良くしようという思いを胸に、仲間とともに挑戦していくというストーリーがある」

―例えばどんなものでしょう。

「他の地域の若者がボランティアとしてやってきて、ノウハウをうまく共有することで仲良く雪かき作業に取り組むモデルなどもある。事例の多くが、国土交通省が展開する事業で、優秀な取り組みとして認定されたもの。読者に何か解決策を提供できるのではないかという思いも込めて本にまとめた。事例も、ただいい話では終わらせず、それぞれ『キーワード』ごとに章を分けたことで、読者が興味を持ったものから読み進められる構成にした。自身で興味を持ったものから読んで、それで何かヒントを得てもらえればうれしい」

―タイトルに「防災からまちづくり」と盛り込みました。

「雪害も他の自然災害も、復興へつなげていくうちに、地域のつながりを再認識していくもの。自然災害はいつ発生するか分からないし、被害も大きくなる。一方で雪の季節はほぼ毎年やってくる。被害は他の災害に比べれば小さい。ただ雪下ろしで毎年死傷者が出るのも事実。雪の降る地域は、雪の対策で困りごとを持っており、これはある意味で地域づくりなどの面で強みにもなり得ると実感している。また、あるメーカーが雪下ろし作業専用に安全対策を盛り込んだはしごを開発したように、新たな防災産業創出のきっかけにもなるだろう」

―主な読者のターゲットはどのような層を想定していますか。

「雪の問題に困っている人、そして住民、社会福祉協議会、民生委員、自治体など地域として問題解決に取り組もうとしている人にまずは読んでいただきたい。ただ雪はあくまできっかけでしかない。この本を通じて私が言いたいのは、地域の自助、公助、共助における本質を見つめ直す重要性だ。以前は何かが起きると地域で助け合うのが当たり前だったが、個の時代になって久しい。昨今の地震などの災害も、地域の住民がこれまで以上につながっていれば、被害を抑えられるのではないかとも考えるようになってきた。雪・雪害を通じて地域を作り直す雪国の助けあいの文化を、この本から読み取ってほしい」
(聞き手=新潟・山田諒)
◇上村靖司(かみむら・せいじ)氏 長岡技術科学大学教授
90年(平2)長岡技科大院工学研究科修士課程修了。同年同大工助手。01年同大講師、06年同大助教授、07年同大准教授、同年から越後雪かき道場を開催。雪かき技術の継承などに取り組んでいる。13年、国土交通省の「雪処理の担い手確保・育成のための克雪体制支援調査」の懇談会委員に就任。14年現職。新潟県出身、53歳。
『雪かきで地域が育つ 防災からまちづくりへ』(コモンズ 03・6265・9617)


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