米中両政府が貿易交渉の第1段階の合意文書に署名したことについて、中国外務省は「両国や世界にとって有益だ」と評価しました。ただ、中国がアメリカからの輸入を2000億ドル以上増やすことについて、かなり難しいという見方もあり、摩擦が解消に向かうか見通せない状況です。

トランプ大統領と中国の劉鶴副首相は15日、ホワイトハウスで貿易交渉の第1段階の合意文書に署名しました。

合意文書には中国がアメリカ産の農産品などの輸入を、今後2年間で2000億ドル以上増やすことや、知的財産権の保護に取り組むことなどが盛り込まれています。
【】これについて中国外務省の耿爽報道官は16日の記者会見で「合意は両国や世界にとって有益だ。両国は平等で互いに尊重することを基礎に適切に問題を解決できる」と述べ、合意を歓迎する考えを示しました。

そのうえで「当面の急務は厳格に合意の約束を順守して双方の重大な懸念に配慮し、第1段階の合意を実行するよう努力することで、これが両国の貿易関係の発展に重要な意義を持つ」と述べ、合意を着実に実行していく考えを示しました。

輸入の拡大をめぐって、中国の国営メディアは「既定路線だ」として、今回の合意がなくても経済成長にともなって輸入は増えると伝えています。

ただ、合意した2000億ドルの規模を達成するには、2017年の実績の1.5倍以上に増やす必要があり、現実的ではなく、かなり難しいという見方もあります。

輸入の拡大が進まなければ、トランプ大統領が大統領選挙を前に再び強硬な姿勢に転じる可能性もあり、両国の摩擦が解消に向かうか見通せない状況です。
【「霧が晴れてはいない」】米中両政府が貿易交渉の第1段階の合意文書に署名したことについて、第一生命経済研究所の永濱利廣首席エコノミストは「世界経済の4割を占めるアメリカと中国の間で貿易が滞っていたが、今回の合意は世界経済を一定程度、押し上げる効果があり、日本からの輸出にもプラスに働く可能性がある。また、金融市場で円安が進んでいることから、多くの日本企業の業績の改善につながり、二重の意味で日本経済にとってはプラスとなる可能性がある」と述べました。

一方で永濱氏は「今後は、中国側が合意内容を本当に実施、履行するかが最大の注目点だ。中国が約束どおりアメリカからの輸入を増やさなかったりすれば、アメリカはいったん引き下げた関税を再び引き上げるかも知れず、当面は経過を注視していく必要がある」と指摘しました。

そのうえで「今回の合意は、米中の摩擦のうちごく一部しか合意できておらず、仮にトランプ大統領が再選されれば摩擦が激しくなる可能性もある。それを踏まえれば、日本経済を取り巻く環境は霧が若干薄まったというくらいで、霧が晴れている状況ではない」と述べました。
【日商三村会頭「さらなる悪化防げた」】米中が貿易交渉の第1段階の合意文書に署名したことについて、日本商工会議所の三村会頭は16日の記者会見で「このまま米中の関税戦争が続いた場合、世界経済に対するリスクが非常に高くなるおそれもあったが、今回の合意でこうした状況が底を打ち、大きなリスク要因がなくなった。問題が解決したわけではないが、さらなる悪化を防ぐことができたという意味では非常に大きいことだ」と述べ、今回の米中の合意を評価しました。
【西村経済再生相「自由な貿易秩序を」】西村経済再生担当大臣は長野県上田市で記者団に対し「かなりの期間、さまざまな形で関税の引き上げが行われ、日本も非常に大きな影響を受けてきた。協議の進展を前向きに評価し、歓迎したい」と述べました。

そのうえで「引き続き高い関税も残っているので、第2段階に向けた協議の進捗状況にも目配りが必要だ。自由で公正なルールに基づく貿易の秩序を維持、発展させていきたい」と述べました。
【全国銀行協会高島会長「大きなテーマ残る」】米中両政府が貿易交渉の第1段階の合意文書に署名したことについて、全国銀行協会の高島誠会長は16日の記者会見で「第1段階の合意ということだが、中国の補助金政策など大きなテーマが残っていて、第2段階の交渉はハードルが高く見通しはたっていない。アメリカの製造業では高い関税によってコストが増えるなどのマイナス効果で雇用が減少しているという分析もあり、実体経済の影響などを引き続き注視していきたい」と述べました。