前回の記事「鍋焼うどんのキンレイが出した冷凍ラーメン。245円で自宅がラーメン屋に」で、キンレイの冷凍ラーメンの実力を紹介した。同時に、鍋焼うどんなども食べてみたい、高いクオリティを出せる理由を知りたいとも感じた。すると、チャンスはすぐにやってきた。東京で試食会も兼ねた新商品発表会を開催するというのだ。商品の開発舞台裏についても語られるという。なぜ、キンレイの冷凍食品はうまいのか。その秘密をレポートする。

◆【出汁】軟水で2時間コトコト。麺は1時間練り上げた自家製麺

 試食で運ばれてきたのは8月24日に発売された「寄せ鍋」。冒頭の1枚だ。

 ラーメンの調理のときと同じく、試食品が運ばれてくる前から会場内には和風出汁の香りが漂っていた。そして、試食の寄せ鍋が目の前に。改めて立ち上がる湯気に鼻を近づけると、和風出汁の香りはさらに増し、食欲が高まる。

 早速、レンゲで出汁をすくって飲んでみると、めちゃめちゃうまい! ゆずの香りもかなり効いている。ふだん調理をしている人であれば分かると思うが、自宅にある化学調味料で作った出汁ではなく、専門店の本物の出汁の風味を感じた。

 説明によると、出汁の材料は、かつお節、あご節、昆布など(スライド参照)。あご節を加えたことで、コクが出るという。実際、出汁の深みを感じていたので、納得。材料は大きな釜に投入され、昆布のうまみをより引き出す軟水でじっくりと雑味が出ないよう、一定温度で約2時間加熱。アクは人の手でていねいに取り除いているそうだ。

 ゲストの2人も出汁を称賛。冷凍生活アドバイザーの西川剛史氏は、「鍋でしっかりと出汁をとっているからおいしい」と言い、冷凍食品ジャーナリストの山本純子氏も「出汁がおいし過ぎて、私は追い飯をしてしまう(笑)」とコメントした。

◆【具材】野菜の量は1日の推奨摂取量の約3分の1

 具材は写真のとおり8種類。白菜がややクタクタな感がしたが、つくね、鶏肉、海老、がんもはどれも味がしっかりとしていて濃厚、ビールや日本酒のあてになるとも感じた。海老が殻付きなのも嬉しい。しめじは口の中に入れると、上品な香りが広がった。なお野菜の量は調理前の生の状態で、国が推奨する1日の摂取量350グラム以上の約3分の1に相当している。

◆【麺】麺がのびないのはなぜ?

 うどんもラーメンと同じくコシがあり、おいしかった。材料は国産小麦100%で、商品にあわせ小麦の配合や条件を調整し、約1時間かけて自社で練り上げ、製麺。底に出汁、その上にうどん、さらにその上に具材を配置したキンレイならではの二段凍結三層構造のため、調理(解凍)時に麺がのびない。

◆調理・加工技術の進歩で専門店の味に

 キンレイに限らず、冷凍食品の質向上には、理由があると西川氏は言う。それは、プロの料理人が専門店で行う調理技法を、キンレイのような食品メーカーの努力により、工場で再現できるようになったからだ。

 たとえば「五目あんかけラーメン」。具材を油にさっと通す中華の「油通し」という下ごしらえの技法を工場でも再現している。その結果、野菜のシャキシャキ感を実現。西川氏は続ける。

「キンレイがすごいと思うのは、鉄鍋調理も再現していることです。鉄鍋を使えば香ばしさは出ますが、焦げるリスクもあるため、使用を控えるメーカーが少なくありません」

 筆者も含め多くの読者は、冷凍技術が進んだから冷凍食品はおいしくなった。そう思っていなかっただろうか。だが実際は、大量の食品を加工・調理する技術の進歩こそが、冷凍食品のレベルアップを実現していたのである。ただ、言うは易く行うは難し。言い方を変えれば、技術があるかないかで、味の良し悪しが決まることになる。

 また冷凍食品は―18度以下の低温で保存するため、菌が繁殖しない。そのため保存料を使う必要がない。加えて化学調味料などの添加物を極力抑えていることも、おいしさの理由と言えよう。端的に言えば、家で化学調味料から作る出汁よりも、キンレイの冷凍出汁の方が味はもちろん、体にも優しいのである。

 実際、試食の寄せ鍋の出汁はすべて飲み干したが、その後、喉が乾くようなことはなかった。山本氏の「社会人の娘は、幼いころから冷凍食品を食べて育ちましたが超健康です!」とのコメントにも、説得力が宿る。

◆マーケティングはしない?

 冷凍食品全体の質がアップしている中で、キンレイならではの魅力や強みはどこなのか。ゲストの2人に問うと、次のような答えが返ってきた。

「キンレイはおもしろい会社です」

 何がおもしろいのか。新商品を開発する際、市場調査や価格帯を選んでから商品を開発するのが一般的だろう。いわゆるマーケティングだ。ところがキンレイでは、しない、とは発言していなかったが、消費者がおいしいと思う、本物の味を届けることができるかどうか。そちらへの注力度が強いというのだ。

 実際、キンレイでは通販限定だが「おとり寄せコレクション」というラインナップがある。同商品群は、先の材料よりもさらに厳選した素材を使うことで、より上質な味を実現。ちなみに同コレクションの「鍋焼うどん」の価格は800円。一般商品の倍以上だ。

◆原価5000円以上の鍋も

 それだけではない。「味の探求プロジェクト」なる社内プロジェクトでは、従業員が全国各地をまわり、厳選素材を吟味。すごいのは、集められた食材を使い、実際に商品を作ってしまうことである。ただこの商品が市場に出回ることはない。得意先などへの贈答用で、山本氏は一度食べたことがあるそうだが、「すごくおいしかった!」と絶賛。ちなみにその商品は「THE鍋焼うどん」と呼ばれているそうで、原価はなんと5000円以上。うまいに、決まっている。

 原価5000円の商品は置いておくとしても、ゲストいわく、コロナ禍の影響で冷凍食品の人気が高まり、中でも高価格帯の商品が注目。各社がこぞって高価格帯商品の開発に注力しているそうだ。もしかしたら、キンレイのプレミアムシリーズのさらなる高級ラインナップが、発売される日が来るかもしれない。

「THE鍋焼うどん」を食べてみたいと思ったのと同時に、改めて次回は、実際にキンレイの工場を訪れ、今回紹介したこだわりの素材や調理を、この目で見てみたいと思った。