【梅宮辰夫 最期の「銀幕」破天荒譚】#7

 2019年12月12日にこの世を去った梅宮辰夫さん(享年81)。梅宮さんにとって遺作の著書となったのが現在発売中の「不良役者 〜梅宮辰夫が語る伝説の銀幕俳優破天荒譚〜」(双葉社)だ。自らの映画人生とともに伝説の役者たちとの交流がつづられた珠玉のエピソードの数々を一部再構成してお届けします。

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 芸能界で、誰が一番ケンカが強いか。そんな話題が世間の男どもは好きらしいね。渡瀬恒彦は、その有力候補なんだってな。あいつのことは「不良番長」にも出てもらっていたから、昔からよく知っている。

 確かに高校で柔道、早稲田大学で空手(2段)をやっていたから、腕っぷしは相当強かったと思う。ただ、芸能界最強かどうかは分からない。

 だって、俺はその場に居合わせたことがないからさ。

 俺が見たのは1対1のケンカじゃなくて、言ってみれば集団戦(笑い)。

 やっぱり「不良番長」の撮影期間中だった。

 その日は俺と渡瀬、さらに安岡力也、鈴木ヤスシ、大原麗子というメンツで、六本木の焼き鳥屋で飲んだんだよ。

 店を出て、いい気持ちで道を歩いていると、向こうから、サラリーマン風の男たちが5〜6人、千鳥足でやってくる。酔った勢いもあるんだろう。妙に威勢がいい。

 双方とも道幅いっぱいに広がって歩いているから、このまま行けば、ぶつかるのは間違いない。これはちょっと危ないかなと思った俺は、

「おい、気をつけろよ。ぶつかるんじゃないぞ」

 と、軽く注意した。でも、渡瀬と力也はまるで聞いちゃいない(笑い)。そして、案の定、肩と肩が触れ合って、一触即発の雰囲気になっちゃった。俺は男が酔っぱらってケンカするくらいのことはしょうがないと思っている。ただし、こっちは全員芸能人。できれば警察沙汰は避けたい。一応「おい、やめとけよ」とは言ったんだ。

 でも、渡瀬も力也も、睨み合った途端に手が出ちゃった。ここからはもうバリバリの取っ組み合いだよ。

 大原麗子なんか、酒も手伝ってか、一番興奮して、はしゃいでる(笑い)。

「力也、やっちゃえ! やっちゃえ!」

 止めるどころか、逆にけしかけてんだから。

 おかしかったのは鈴木ヤスシ。当時、彼はNHKの仕事を始めたばかりだから気が気じゃない。

「おい、やめろ、やめてくれ。俺は今、NHKに出てるんだから」と、青い顔して、遠巻きにケンカを止めようとしてたよ。

 結局、たいした騒ぎにはならなかった。向こうも渡瀬と力也の実力が分かったんじゃないかな。両陣営ともケガはなかったはずだよ。だから、最後は俺が、

「悪かったな」

 それでジ・エンド。ヤスシの心配も取り越し苦労に終わった(笑い)。今なら、誰かが携帯電話で動画を撮って、それが日本中に流れたかもな。その意味じゃ、ノンビリした、いい時代だった。

 驚いたのは渡瀬と麗子だよ。2人が結婚したのはこの2年後だったかな。

 俺はそれまで全く気がつかなかった。恒のヤツ、ケンカだけじゃなく、女に手を出すのも早かったぜ(笑い)。

 (つづく)