【今週グサッときた名言珍言】

「俺たちも12年、芸風迷い続けてるから気にしなくていいよ。まだ迷ってるし、今後も迷っていくし」(松陰寺太勇/NHK・Eテレ「バリバラ〜障害者情報バラエティー〜」3月5日放送)

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 全てを優しく肯定する「ノリツッコまない」漫才でブレークした、松陰寺太勇(36)とシュウペイのコンビ「ぺこぱ」。将来のことを決断できないという悩みへの松陰寺の答えが今週の言葉だ。

 ぺこぱは2008年、松陰寺がバイトで知り合った“ギャル男”だったシュウペイを誘う形で結成された。だが、冒頭の言葉どおり、芸風を模索し続けた。スーツを着て時事問題を斬る正統派な漫才をやったかと思えば、足を高く上げるツッコミ漫才、ボーイズラブ漫才、ヒップホップ漫才などネタのスタイルはもちろん、その間、ボケ役とツッコミ役も何度も入れ替えた。

 そんな迷走の中、2人が「師匠」と慕う先輩のTAIGAに「おまえら本当にヒップホップ好きか? だから言葉に体重が乗ってねえんだよ」などと諭された(ニッポン放送「オードリーのオールナイトニッポン」20年2月22日)。

 松陰寺は模索を続け、ド派手な着物を着てローラーシューズを履くキャラに定着。そのキャラのまま、シュウペイのボケにツッコんでいたが、冷静に考えれば、おかしいのは自分だと思った。

「お客さんの中にある『こう来るだろう』っていうのをさらに裏切りたいと思って、『いやおかしいだろ……って言ってる俺はなんなんだ!』みたいに言ってみた」(とうこう・あい「QJWeb」20年2月5日)

 すると、今まで感じたことのないウケ方をしたのだ。つまり、その言葉こそ「体重の乗った」言葉だったのだ。

 このスタイルで昨年、年明けの「ぐるナイ!おもしろ荘」(日本テレビ)で優勝。いよいよブレークかと思われたが、テレビで引っ張りだこになったのは「パンケーキ食べたい」の夢屋まさるだった。この番組の収録の合間に、松陰寺は岡村隆史に「着物、変やで」と言われた。同じ頃、TAIGAに「スーツにした方がいい」とのアドバイスも受け、いよいよ現在の形が完成した。

 松陰寺は「結局、あの漫才も漫才をフリにした漫才なんで。全然優しさ先行じゃない」(テレビ朝日「太田伯山〜悩みに答えない毒舌相談室〜」20年3月11日)と明かし、過剰に「優しい」キャラを求められる現状への悩みを吐露。「ベールを脱ぐのが早すぎないか」と言われると、「ベールが重すぎるんです」と答えた。一方で「良かったのは、今やってる『松陰寺太勇』と『本物の私』がちょっと重なってる部分があった」(同前)とも言う。

「僕らは『一番遠回りな近道』を歩んできた」(とうこう・あい「QJWeb」20年2月6日)と言うように、ぺこぱは迷いながら「本物の自分」に少しずつ近づいてきたのだ。

(てれびのスキマ 戸部田誠/ライタ―)